第2話 帝国侵攻 ~後編~
2/5
『帝国軍侵攻』。
その知らせは国境警備の兵によってもたらされた。
『伝書』の魔法で飛んできた報告書によれば、帝国軍二万の軍勢が王国との国境——ミヌミエーラ男爵領の北端——を越えようとしているという。
また、これは先行部隊にすぎず本隊はさらに後方にいて、数も倍はあるだろうとの予測がされていた。
「来たか」
「来ましたね」
報告を受けたミヌミエーラ男爵とフランソワは、緊張したとしても動転はしなかった。
予想されていた事態。
手は可能な限り打っている。
「『伝書』は宰相閣下のところへも飛ばしてある。耐えていれば国軍が駆けつけてくる。なんとしても、持ちこたえるぞ。同時に、被害を最小限に抑えることが肝要だ。砦の一つや二つならくれてやる。だが、兵を、ましてや領民を奪わせはせぬ!」
そこだけは譲れない、譲らない。
「侵攻ルートを予測しろ! ルート上の村や町から住民を避難させるのだ!」
建物や土地なら、あとで取り戻せる。
人命は一度失われたら、二度と取り戻せない。
真理である。
ミヌミエーラ男爵、モンモラシー男爵、そしてカロスターク。
三者による事前会議で、そこは徹底して確認してあった。
全員同じ見解だと。
だから、防衛戦の基本戦略は逃げの一手。
各地の防衛拠点を使い、可能な限り足止めを図る。
この間に民間人は安全と思われる地域へと疎開させる。
戦闘は極力避け、ひたすら国軍を待つ。
戦闘は兵が揃ってから一息に行う。
カロスタークの決定を、ミヌミエーラ男爵は全面的に支持していた。
ミヌミエーラ男爵領北部住民の大移動が開始された。
「援軍となる王国軍3万。用意はできている」
帝国軍侵攻の報を受けて宰相府へと駆け付けたカロスタークに、宰相は力強く頷いて見せた。
わかっていたことなので、用意はしてあったのだ。
王国の国軍総兵力20万を3万ずつに分け、6部隊を編成。
これを常時、一部隊は即応態勢をとれるように運用している。
現在はレッドルア伯爵領東端の町に駐留中だ。
「行くのかね?」
「すぐに合流、同行します」
支配地域、いわば自分の庭への侵略だ。
人任せにはできない。
カロスタークに現地へ行かない選択肢はなかった。
「よかろう。半月後には第二陣も出す。それ以降は戦況に応じてとなる。守ってくれよ」
「それは・・・私に言われましても——司令となる方は優秀なのですよね?」
「もちろんだ。士官学校を次席卒業。女の身でありながら個人の武勇も優れていて、男女混合の武闘大会での優勝経験もある」
座学も、武芸も折り紙付きということか。
「実家は侯爵家だから家柄も申し分ない」
自信があるからか、宰相はよけいなことを付け足した。
この言い方だと、カロスタークは『庶民の出ながらそこそこ優秀。ただ家柄に難がある』となる。
いちいち指摘はしないけれども。
「それは優秀ですね。安心いたしました」
人材に不足はないらしい。
「合流後、現地に赴き後方支援の指揮をとります」
周辺の領地から、食料などを集めて前線へ送り出し、後送されてくる負傷兵の受け入れ、治療を行うのだ。
一言で言えば、兵站を担うとなる。
「うむ。頼むぞ」
「はっ!」
読了・評価。ありがとうございます。




