第1話 帝国侵攻 ~前編~
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「戦場に立つ資格は、誰にある?」
王国に迫る帝国軍の侵攻。
対抗するは、名門出身の女将軍と、商人上がりの若き伯爵。
傲慢な司令官、腐敗した軍、見下される貴族。
すれ違う思惑の中、戦場はやがて地獄と化す。
そして、敗北の果てに待つのは、死か、屈辱か。
これは、誇りを失った将と、誇りを守る者の物語。
『商人の男と貴族の女』シリーズ、戦場の真実を描く第七章。
◇
伯爵となって八か月。
カロスタークは18歳となった。
道整備は王国北東部を通り、南東部へと入っている。
各地に宿場町を併設して、税収も確実に増えていた。
亜人たちがカロスタークの許へ集まる動きは続いており、何なら加速してすらいる。
これに伴って、各現場の工事も加速していた。
数は力である。
これはレッドルア伯爵領に関しても同じことが言えた。
人数が増えればできることも増える。
農地と住宅地も、拡大の一途をたどっていた。
人口も増え、税収も右肩上がりである。
まさに順風満帆だ。
この間にフランソワも側室入りしている。
今や、カロスタークは自宅に第三夫人と側室二人を囲って生活する身だった。
アンヌとも再構築が成っている。
幸いにも妊娠の兆候がなかったことが大きい。
修道院で俗世の垢をすっかり洗い清めてきていたことでもある。
最初の夜は多少思うところもないではなかったが、乗り越えた。
相変わらず各現場を飛び回っていて、家は留守になりがちだ。
ただし、カロスタークが家にいない間は、妻や側室も家ではなく各現場にいるようになっていた。
アンヌはカロスタークの秘書的な役割で同行し、セザールとフランソワは代理監督として現場の視察を行うのだ。
「おう。フランソワ。元気そうだな」
ミヌミエーラ男爵領の開拓事業視察に来たフランソワに、気さくに声をかけた者がいる。
上半身裸で、汗と土埃にまみれた作業員だ。
いや、作業員にしか見えなかった。
フランソワの兄、ミヌミエーラ男爵その人である。
「あ、兄上は一段と・・・その貴族らしくなくなりましたね」
何とか言葉を選ぼうとしたフランソワだが、目の前の現実が邪魔をした。
貴族家当主には見えないのだから、仕方がない。
「うむ。俺もそう思う」
あははははは! と笑っているが、それでいいのかとフランソワは問い質したくなった。
不毛なので実行はしないが。
当主を継いだ頃の厳格な貴族然としていた姿は何だったのかと考えてはしまう。
今のほうが自然体のようだし、好感は持てるのだけども。
「俺は三男だったからな。領主となるための教育はなく、軍人として育てられた。執務机に座って領地経営に頭を悩ませるよりも、身体を動かす方が性に合っているのさ」
またしても、あははははは! と笑っている兄を、フランソワは複雑な思いで見つめた。
本人は気楽で楽しそう、領民は安定した領地で豊かになりつつある。
カロスタークとも軋轢なく良好な関係を築けている。
悪いことなど何一つありはしない。
だけど、それでいいのか?
複雑になりもする。
「あー、うん。世の中平和が一番だね」
こんな砕けた物言いをしても叱られないし、みんな幸せなのだからきっとこれでいいのだ。
フランソワは現実をそのまま受け入れることにした。
だというのに。
世は不条理に満ちている。
平和は突如、終わることになる。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




