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商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【アンヌ】編~枯れた花から種を得る~

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第10話 燃えたモノは灰となる ~中編~

4/6

 


「あら? まだ何かあるの?」

 シエルアージュ侯爵別邸に帰る気にはなれず、カロスタークはモンモラシー男爵邸へと入った。

 兄である男爵と何か話し合っていたセザールが、慌てて迎えてくれる。

 半分、自分の家のようなものだ。

 使用人たちもわかっているので通してくれた。


「ちょっと問題が発生してな。自宅に戻る気がなくなった。今夜は泊めてもらえるか?」

「それは、もちろんかまわないけど・・・」

 ちょっと赤くなったセザールがいじらしい。

 そっと視線を逸らすモンモラシー男爵の優しさに頭が下がる。


 側室認定はしているが、これまで肉体関係はなかった。

 第一夫人優先だからだ。


 その第一夫人が裏切っていたのなら、優先権は剥奪されてしかるべきだろう。

 文句は言わせないし、アンヌには言う資格がもはやない。

 順番で言えば、セザールが一番の古株でもあるから、序列的にも正しい。

 泊ることに制約はない。


 これは、王国貴族院法で百八十年前から定まっている。

 法制度に則ったものだ。


 西の帝国でも似通った方が適用されている。

 もしも法制度そのものに異論を唱えるモノがあるとしたら、大陸東端で新興した『公国』だろうか。

 かの国を興した『民主主義論者』とやらには眉を顰められるものかもしれない。


 しかし、現状では王国の貴族院法は大陸のほぼすべての国と地域によって『一般的な法律』であり常識。

 それはアンヌも承知していること。

 法を犯したのは彼女なのだから、言い訳も抗議も許されるものではない。


 ちなみに、これは男か女かという話ではなく、貴族家当主に与えられる特権となっている。

 当主が女性であれば、第一夫や側男を侍らせることが可能。

 性別によるのではなく、社会的な役割による特権なのだ。

 元リヴィエール伯爵がカロスタークに言い寄ったことを非常識とするのは、カロスタークがすでに当主だったからだ。



 この夜。

 セザールの側室入りが確定した。



 一方、アンヌはと言うと。

 予定を変えて、シエルアージュ侯爵別邸へと帰ったという。

 執事の証言によれば、帰ってくるなりカロスタークを探した。

 見つからず、戻っていないと聞いて取り乱したそうだ。

 最後には、部屋に閉じこもったとのことだった。




 アンヌと一緒にいた女の方は、予定通りに行動した。

 そのため、最高潮に盛り上がっている最中、貴族院風紀部の強制査察を受けることになる。


 数十に上る風紀員に男と繋がっているまさにその現場を見られ、発狂。

 精神的に終わりを迎えることとなる。


 乱痴気騒ぎに参加していた者たちは捕縛され、全裸あるいは半裸のまま連行。

 女性の中には舌を嚙んで自害を図った者もいたが、そんなことは慣れ切っている風紀員によって止められた。


 その後は家族に引き取られたり、文字通り身一つで放り出されたりした。

 前者はともかく後者については、裸一貫での再出発となる。

 男女共に。


 行先は——。

 推して知るべしである。


 原因が原因だ。

 本人たちにとってはきっと本望であっただろう。

 相手に不自由することなく、存分に楽しめるのだから。



読了・評価。ありがとうございます。


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