第10話 燃えたモノは灰となる ~中編~
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「あら? まだ何かあるの?」
シエルアージュ侯爵別邸に帰る気にはなれず、カロスタークはモンモラシー男爵邸へと入った。
兄である男爵と何か話し合っていたセザールが、慌てて迎えてくれる。
半分、自分の家のようなものだ。
使用人たちもわかっているので通してくれた。
「ちょっと問題が発生してな。自宅に戻る気がなくなった。今夜は泊めてもらえるか?」
「それは、もちろんかまわないけど・・・」
ちょっと赤くなったセザールがいじらしい。
そっと視線を逸らすモンモラシー男爵の優しさに頭が下がる。
側室認定はしているが、これまで肉体関係はなかった。
第一夫人優先だからだ。
その第一夫人が裏切っていたのなら、優先権は剥奪されてしかるべきだろう。
文句は言わせないし、アンヌには言う資格がもはやない。
順番で言えば、セザールが一番の古株でもあるから、序列的にも正しい。
泊ることに制約はない。
これは、王国貴族院法で百八十年前から定まっている。
法制度に則ったものだ。
西の帝国でも似通った方が適用されている。
もしも法制度そのものに異論を唱えるモノがあるとしたら、大陸東端で新興した『公国』だろうか。
かの国を興した『民主主義論者』とやらには眉を顰められるものかもしれない。
しかし、現状では王国の貴族院法は大陸のほぼすべての国と地域によって『一般的な法律』であり常識。
それはアンヌも承知していること。
法を犯したのは彼女なのだから、言い訳も抗議も許されるものではない。
ちなみに、これは男か女かという話ではなく、貴族家当主に与えられる特権となっている。
当主が女性であれば、第一夫や側男を侍らせることが可能。
性別によるのではなく、社会的な役割による特権なのだ。
元リヴィエール伯爵がカロスタークに言い寄ったことを非常識とするのは、カロスタークがすでに当主だったからだ。
この夜。
セザールの側室入りが確定した。
一方、アンヌはと言うと。
予定を変えて、シエルアージュ侯爵別邸へと帰ったという。
執事の証言によれば、帰ってくるなりカロスタークを探した。
見つからず、戻っていないと聞いて取り乱したそうだ。
最後には、部屋に閉じこもったとのことだった。
アンヌと一緒にいた女の方は、予定通りに行動した。
そのため、最高潮に盛り上がっている最中、貴族院風紀部の強制査察を受けることになる。
数十に上る風紀員に男と繋がっているまさにその現場を見られ、発狂。
精神的に終わりを迎えることとなる。
乱痴気騒ぎに参加していた者たちは捕縛され、全裸あるいは半裸のまま連行。
女性の中には舌を嚙んで自害を図った者もいたが、そんなことは慣れ切っている風紀員によって止められた。
その後は家族に引き取られたり、文字通り身一つで放り出されたりした。
前者はともかく後者については、裸一貫での再出発となる。
男女共に。
行先は——。
推して知るべしである。
原因が原因だ。
本人たちにとってはきっと本望であっただろう。
相手に不自由することなく、存分に楽しめるのだから。
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