第6話 花咲く中に嵐が来る ~前編~
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婚礼が終わり、アンヌと正式に夫婦となった。
居所は変わらず旧シエルアージュ侯爵別邸である。
アンヌも引っ越してきた。
そのかわり、セザールとフランソワは元の場所へ引っ込んだ。
元からそうなることは予定されていたようで、荷物など持ち込んでいなかったから身一つの気軽さで。
新婚夫婦の邪魔をするほど無粋ではないということだ。
こんな感じで多少の変化はあるが、カロスタークの生活に大きな変化はない。
各地の現場を飛び回る状況なのは婚礼前と同じだ。
強いて挙げれば、アンヌの実家領地の治水工事も現場に加わったくらいか。
一つ増えたくらいのこと、カロスタークに言わせれば大勢に影響などないとなる。
ただ、それを知らないアンヌには気を遣わせてしまうのではないかと不安は持っていた。
「落ち着きがなくてすまない」
今日もまた、数日留守になることを詫びる。
「王命に従ってのこと。やむを得ないことですわ。お気遣いなさいませんよう」
「ありがとう」
物わかりの良い嫁に感謝を伝え、カロスタークは家を出た。
王都の東から王国東部へ向けて、道を作って進むのだ。
王国全土の道を整備する。
その工事は、まだ半分にもなっていない。
まだまだ先は長いのだ。
「いってらっしゃいませ」
アンヌの声を背中に聞いて、現場へ向かうカロスターク。
その足は自分で思う以上に軽く、弾んでいた。
やはり、待っていてくれる人がいる、支えてくれる人がいるというのはモチベーションが上がる。
同時に、後ろ髪が引かれるような気持があるが、そこは振り切った。
「アンヌ様は、またいらっしゃらないのですね」
現場へ行くため、まずは居所と同じ王都にあるモンモラシー男爵邸に入ったカロスタークに、怒ったような声が掛けられた。
腕組みをしたセザールが、立ったまま待っていた。
「レッドルア家に嫁いだのですから、一度くらい旦那様の働きぶりを見に来るべきでしょうに」
呆れた様子で首を振る。
「伯爵家の令嬢だからなぁ」
仕方ないだろうと宥めるカロスターク。
「貴族の夫人が、旦那の職場に顔を出す必要もないだろう」
「それでも、です。まぁ、ついてこられても扱いに困るのも事実ではありますけど」
手伝わせることもできず、見学させておくしかない。
「そうなんだよな。一度、来てみないかと誘ったことは何度かあるんだけど。少し考えた後で、『お邪魔になる』と言われてしまうと、それ以上は言えなくてな」
居所で一人、使用人に囲まれて過ごすのは退屈だろう。
そう思って声はかけたのだ。
だが、断られた。
仕事の邪魔をしたくないと思ってのことかと考え、『カロスターク自身が、妻とともに居たいのだ』とも言ってみたが、答えは変わらなかったため、『来たくなったらいつでも言うように』と伝えて、そのままになっている。
「今度、もう一度誘ってみるか」
アンヌには面白くないだろうし、不安にもなるかもしれない。
だが、そこは自分の努力次第だ。
一緒に居られればカロスタークには楽しい。
誘ってみるのは悪くない。
「もしかしたら遠慮しているのかもしれないし」
なにができるわけでもなく、気を遣わせるだけ。
そんな風に考えていたら、「行きたい」とは言えない。
カロスタークがもう一度誘うのを待っている可能性もないとは言えない。
「うん。次は少し強引なくらいに誘ってみよう」
そんなわけで、現場へ行くたびにアンヌを連れ出そうとしたカロスタークだったが、ことごとく謝辞されて終わることになる。
いつしか、カロスタークも誘うことが無くなっていった。
この間に、旧リヴィエール伯爵領の増収がはっきりと確認され、カロスタークは非公式ながら『準伯爵』と目され始めている。
そして・・・。
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