第22話 同病相憐れむ、ささやかな慰めを添えて~後編~
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専門家は二日後に来た。
『早馬』を使ったようだ。
もう少しゆっくりでもよかったのに。
そんなことを考えながら、捕虜収容所に案内する。
全裸の上にドロドロのカトリーヌを『元義姉』に丸投げして洗わせる。
その間に夫の尋問が行われた。
カトリーヌの状態について、専門家の役人は無反応だった。
むしろ、手足がちゃんと揃っていることに感心している風だったから、王国の闇は思いのほか深い気がする。
きっとよくあることなのだ。
夫の尋問は一時間もかからずに終わった。
丸二日間、妻が寝取られ続けるのを見ていたそうで、いい感じに世界を諦めていたのだ。
聞かれたことに何の躊躇もなく機械的に答えるのでスムーズだったらしい。
同じく、『外だけは』キレイになったカトリーヌの尋問も滞りなく進んだと言う。
こちらもいい感じに人生を諦めていたそうだ。
ともかく、中核にいた二人の供述によりレッドルア準男爵暗殺未遂事件は立証された。
あとは『貴族院』の裁可と、国王の命令を待って処刑となる。
もっとも、夫の方は実際に兵を率いて『突入命令』も出していることから断頭台送りが決定済み。
あとは日時の調整だけだ。
カトリーヌの方は貴族家当主ということで、こちらも本来なら斬首になる。
ただし・・・。
王国の法制度の中に『恩赦』がある。
この一つが、彼女の命を救うことになった。
『死刑執行人は処刑される女性に求婚する権利があり、その結婚を了承した女は恩赦により処刑を免除される』というものだ。
「物好きな」
またしてもカロスタークは頭を抱えた。
死刑執行人は軽蔑されるが差別はされず、処刑がないときは暇なので副業が認められていた。
ということで、なんと『セザール騎士団』の中にもいたのだ。
これが一つ目の物好きだ。
他に人もいように、わざわざ死刑執行人を騎士団員に雇うとは——と。
もう一つの物好きが、その彼だ。
彼女を結婚相手に所望し、処刑の時に求婚。
カトリーヌの意思がどうだったかは知らないが、『同意した』と見做されて妻となった。
三メートル近い巨漢に抱かれたカトリーヌは乾き切った笑い声をあげ、祝福の拍手とともに持ち帰られることとなる。
あと、率先して町に攻め込んだ者たちは軒並み絞首刑にされた。
多すぎて、新婚の男も家に帰る暇がなかったとか。
リヴィエール伯爵家は廃爵。
領地は王家直轄となる。
——なったはずだった。
「カロスターク・カロ・レッドルアよ。そちを男爵とする」
始末がある程度終わった頃、王城に召喚されたカロスタークは国王から爵位を賜った。
リヴィエール伯爵領の東半分は王家直轄とするが、ほとんど未開拓の西側は分離。
隣地であるレッドルア準男爵家に割譲。
領地を併合することで、広さと人口が増加することから正式に男爵とする。
そういうことなのだった。
むろん、言外には『男爵になるのだ。働けよ』がある。
王国全土の道整備を急げということ。
馬の前にニンジンをぶら下げ、尻を鞭で叩きまくるのと同じことだ。
「——謹んで拝命します」
汗を垂らしつつ、カロスタークは頭を下げた。
商家の末子は、こうして正式に貴族となったのだった。
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