第17話 彼方と此方を繋ぐもの ~前編~
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「このへんか?」
親方が爬虫類独特の動きで首を傾げた。
伯爵家での会談から数日。
リヴィエール伯爵領とミヌミエーラ男爵領の境界に来ていた。
ミヌミエーラ男爵領から、どう道を伸ばすかを決める。
そのための下見をするためだ。
「そうなるな。西寄りにとのことだったから」
地図を見ながらカロスタークが頷く。
会談の時にも開いていた地図だ。
伯爵夫が記したラインの始まりは間違いなく、この辺りになっている。
ここからほぼ真南にラインは引かれていた。
「何か問題があるのか?」
しきりに首を傾げている親方に、カロスタークも首を傾けて聞いた。
「ここから南、町ある」
「町?」
驚いて地図を見直すカロスターク。
だが、地図にそんな表記はない。
「地図に載ってないぞ?」
不思議がる視線が横に向けられた。
今日は地元ということでフランソワが副官として付いてきている。
セザールは今回、護衛として騎士団を引き連れているので少し離れていた。
「私も町があるとは聞いたことがありません。リヴィエール伯爵領は東側が発展していて西側はほとんど手付かずのまま放置されていると記憶しています」
だからこそ、道の建設を「西寄りに」と条件付けられたのだと思っていたと答えが返ってきた。
なるほどとカロスタークが頷く。
わざわざ西寄りにと注文が出たのはそういうことかと納得したのだ。
発展している地域を直線道路で分断されるのは確かに嫌だろう。
でも、それならなぜ「町がある」と親方が言っているのかってことになる。
「おでたちの、仲間、いる」
「『竜鱗族』か?」
そう言えば、声をかけるとか言っていた。
「他にも、たくさん」
「他に? ——ああ、亜人の町ってことか」
わかったと手を打った。
王国には亜人族が多くいる。
『竜鱗族』もそうだが、『獣人族』とか『耳長族』なども多い。
排斥するような動きはないが、亜人たちにとって人間の町は居心地が悪い。
よって、森の奥や辺鄙な場所に自分たちだけのコロニーを作っていることがある。
そういったもののことだろう。
「どの辺かわかるか?」
だいたいでもいい、位置が分かれば避けようはある。
「ココ」
地図を指さすので、そこに丸印を付けた。
モロに直撃コースになっている。
先に引かれていたラインが見事に丸の中心を貫いているのだ。
わざとか?
偶然にしてはピッタリすぎるようだ。
まぁいい。
わざとかどうかはこの際どうでもいいことだ。
「もう少し東までずらして、そこから南南東へ、斜めに道を伸ばすとしよう」
町を直撃せず、充分な余裕をもって回避できるはずだ。
地図に新しい線を引いてみる。
逆に言えば、亜人の町とリヴィエール伯爵領の発展地域の中間を通る形だ。
メイン道路としては、むしろ都合がいいのではないだろうか?
「わるく、ない」
「その先の領地にも、その角度ならばアクセスしやすいでしょうね」
親方とフランソワからも同意を得られた。
「なら、それで行こう」
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