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商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【カトリーヌ】編~彼方と此方をつなぐもの~

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第1話 叙任式という名の卒業式 ~前編~

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 三つの領地と一つの町を管理するので忙しくしている中、叙任式という名の卒業式が来た。

『王立学院』の卒業生は全員一律で『勲爵士』の称号が与えられるためにこう呼ぶ。


『勲爵士』は正式な爵位ではないが、世間では一応『騎士(ナイト)』と呼ばれる立場になる。

 社会的信用が2割ほど上乗せされる感じになるものだ。


 世間一般ではあまり使いどころはないが、王国政府での仕事は貰いやすくなる。

 あと、地方に行くと『騎士様』扱いもされて便利だ。


 なぜ、こんな制度があるのかと言うと例の『いずれ起きるであろう大戦のための人材確保』のためだ。

 一朝事あるときは『勲爵士』——つまり学院の卒業生全員——は問答無用で徴兵される。


 厄介な側面を持つ称号ではあるが、これなくして貴族社会では生きていけない。

 貴族は「ようやくか」という感じで、商家の者たちは「ここからだ」と野心に目を輝かせる。

 それが『叙任』だった。


 胸にたった一つ、銀の輝きを放つ記章が付くだけのことなのに。

 そこにかかる重さは計り知れないものだ。


 彼等彼女らは、名前を呼ばれるごとに席を立って進み、典礼省の長官から記章の授与を受ける。

 長官の前に立つと、補佐をする職員が一人一人に丁寧に記章を付けてくれるのだ。


 男子生徒には女性が、女生徒には男性が付く。

 どちらも選りすぐられた美形が務める。

 卒業式を見に来た人たちに、注目されるのが役目だ。

 いわゆる客寄せの広告塔というわけだ。



 ちなみに、卒業生の中でも優秀な者は『勲爵士』への叙任後に『騎士爵』を授けられて騎士団を作ることを許される。例えば中間試験の『三対三制』で優勝したチームのメンバーや『一対一制』でぶっちぎりの優勝を果たした海賊なんかが、その代表だ。


『騎士団』というのは『騎士爵』を持つ者が自分の裁量で持つことができる、いわば私有軍だ。

 独立愚連隊的な存在の戦闘集団という意味合いが強い。

 主に少数規模での行動が必要な場面で、国軍や貴族軍を動かすほどではないときに依頼を受けて動く。

 例を挙げれば要人警護、隊商の護衛、人探しや魔獣の討伐といったところだろう。


 冒険者ギルドとの違いは、当然だかその信用度にある。

 なんだかんだで、同窓の人間というのはそれだけで何となく安心してしまえるからだ。


 平民の冒険者ギルド、貴族の騎士団。

 そんな住み分けがされている。


 もちろん、平民が騎士団に頼んだり貴族が冒険者ギルドを利用したりはある。

 厳密なものではなく、思いのほかテリトリーは緩いものだった。



『騎士爵』を受ける者たちの前で、カロスタークはさらに上の『準男爵』の称号を正式に賜った。

 周囲から羨望の視線を受けるカロスタークは生きた心地がしない。

『騎士爵』から上は国王陛下直々に叙せられる。

 大変名誉なことなのだ。


 それなのに、カロスタークは二回国王の前に立たなければならなかった。

 叙勲は飛び石厳禁なのだ。

 どんなに優れた功績を上げたとしても、階位を飛ばすことは許されない。

 形だけだとしても、わけなくてはならないのだ。


 カロスタークの『騎士爵』授与が最初。

 授与されたらすぐにまた最後尾に並び、最後に『準男爵』を授与される。

 面倒だが、必要な儀礼なのだ。


「卒業もして爵位も授けた。よしなに頼むぞ?」

 胸に勲章を付けてくれつつ、そんなことを囁いてくる国王が頼もしいやら恐ろしいやら。

 さすがに責任の重さがズシリと堪えるカロスタークだった。


 貴族家に婿入りするはずが――


「まさか、自分が爵位持ちになるとはね」

 胸に触れた銀の記章が、やけに重く感じられた。



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