第4話 動き出す商人
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勇気をもらったオレは、学院都市の外れにある建物へ向かった。
王都との境界に立つ、経済の中枢――『銀行』。
「これはこれは、カロスターク様。ようこそ」
顔なじみの銀行員が、すぐに個室へと案内する。
大きな契約や借金の相談に使われる部屋。
学生が通される場所ではない。
「金が必要でして。集められるだけ集めたい。いくらになりますか?」
挨拶もそこそこに、用件を切り出す。
銀行員の眉がピクリと動いた。
「……集められるだけ、ですか?」
「ええ。今ある全てを使って構いません。いくら用意できます?」
ごくり、と唾を呑む音が聞こえた。
「何にお使いになるのか、お聞きしても?」
「二年前、僕が言ったことですよ」
学院に来た初日、宿舎より先にここを訪れた。
“僕”という一人称も、あの日と同じ。
全財産を預け、運用を依頼した日だ。
二年間。
助言は受けたが、決定はすべて自分で下した。
その結果が、今ここにある。
「……なるほど」
「くくっ」
目を泳がせる銀行員に、思わず笑いが漏れる。
「舞踏会の件、もう耳に入ってるんですね。さすがの情報網だ」
「恐れ入ります」
頭を下げる彼の肩が、わずかに震えていた。
「もう動いているのですか?」
「な、何のことでしょうか」
額に汗。
視線は扉へ。
足止め役か――わかりやすい。
「……まぁいいでしょう」
オレは深く座り直す。
「終わったら知らせてください。あと、取りっぱぐれた同業者には伝えてください」
――“オレが動いた”と。
「……怖い方だ」
銀行員は額の汗を拭いながら、部屋を出ていった。
そう待たずに、戻ってくるだろう。
どちらにせよ、金は必要だ。
商人の武器は、金。
そして、それを流れに変える頭。
さらに、流れが実を結ぶのを待つ根気。
手はすぐに打つ。
あとは、潮が満ちるのを待つだけだ。
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