第10話 金剛石は石と見えて石にあらず ~中編~
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翌日、ミヌミエーラ子爵は国務大臣の執務室へと呼び出された。
当主の長兄と、それを補佐しているという次男が揃って参内している。
国務大臣側は大臣と政務官、そしてローブの男が待ち構えていた。
それぞれが会議用の小部屋でテーブルを囲む。
中心はもちろん、国務大臣とミヌミエーラ子爵だ。
「急に呼び立ててすまんな」
「突然のことで驚きました。ですが、貴族家の当主たるもの国家のために寸暇を惜しみはしませんぞ」
「それは殊勝なことよな」
「して、これは『補助金』を出していただけるという理解でよろしいか?」
挨拶も早々に『補助金』を出してきた子爵に、国務大臣の顔が引きつるが、それは刹那のこと。
本人以外には気づかれていない。
「それについては現在出せるかどうかの調査を行っておる。今回は近く迫った西の要塞における修繕費用の支払いをしていただきたいのだよ。なに、商人連中がうるさくてな」
「これは、国務大臣ともあろう方が情けない。商人など、騒いだところで何ほどのこともありますまい。放置しておればよいのです」
「そうは申すが、他の事業にも関わる。ここはさっさと払ってやって、次の仕事に取り掛からせたい。子爵に余裕がないはずもなし。ここはきれいさっぱり払ってはくれまいか?」
「それならば、速やかに『助成金』を出していただきたいですな。国庫から直接に商人どもへ支払えば手間もかからず、楽ではありませんかな?」
国務大臣のこめかみがぴくぴくと震え出した。
屁理屈にもなっていない言い分に、苛立ちが募っている。
商人を見下し過ぎているし、国庫から直接支払えなどとは暴言に類する発言だ。
そもそも筋が通らない。
「もとより、この為の資金は国庫より子爵に預けられている。支払いを先延ばしにする理由などあるまい?」
必要額を渡してあるのだから、それで払うだけのこと。
なぜ払えないのかと問いかける。
「先延ばしにするなどとはとんだ言いがかり、私が申しあげているのは『補助金』と相殺していただければ、手間もかからず労も少なく、滞りのない支払いを行えるということなのです」
どうでも『補助金』を出せばそれで払えると言い張る子爵。
「——まるで『補助金』がなければ支払いできぬと聞こえるのですがな?」
「そのようなことはない。ただ——」
「ならば、支払っていただこう。『補助金』はすぐには出ぬ。出るとも言えぬ!」
のらりくらりとはぐらかす子爵に、しびれを切らした国務大臣の声が鋭さを増した。
これは国務大臣と国の仕事を請け負った貴族の会話。
元受けと下請けの会話だ。
にもかかわらず、なぜ対等の立場であるかのように振舞えるのか?
発注時の仕事内容についての話し合いであれば、対等で問題ない。
むしろ、歓迎だ。
しかし支払いの段階での先延ばしでこれはあり得ない。
資金はすでに渡してあるのだから。
それを使っての支払いを行えと言っているだけのことなのだから。
元受けが下受けに支払いを済ませているのに関連業者への支払いが行われておらず、元受けに苦情が来ているような状態。
どうして、こんな態度でいられるのか理解に苦しむ。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




