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商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【フランソワ】編~蜜があれば花はいらず、竹は地を這わず~

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第7話 召喚状 ~前編~

2/5

 


 開通式から数日、カロスタークは王都の中心にいた。

 王城の正門前、である。


「あの、召喚状が届いたのですが――」

 番兵に来訪の理由を告げる声が震えた。


『召喚状』。


 王家または宰相か国務大臣が使う書簡である。

 特定の人物に対し、出頭を強制するためのものだ。

 通常は罪人、あるいは証人を呼びつけるのに使われる。


 カロスタークとしては罪に問われるようなことをした覚えはない。

 それでも王城への『召喚』は恐怖が伴う。

 まだ、裁判所からなら余裕でいられた。

 いきなりの王城は予想外過ぎる。


「案内する。ついて来なさい」

 門兵から引き継ぎ、案内をしてくれたのは赤地に金糸の縁取りのマントを付けた騎士だった。

 王家直属の近衛騎士だ。




 会議室かどこかへいくものと思っていたカロスタークは、案内された先が『謁見の間』だと気が付いて全身から冷や汗が出た。

 平民が入れるような場所ではない。


 謁見の間に入り、必死に思い出した作法をなぞった。

 ガタガタ震えそうな膝を床に押し付け、何とか最上礼を維持する。


「貴殿が、カロスターク殿か?」

 声は、斜め右からかけられた。

 つまり、王直々にではない。

 宰相だ。


「はは。カロスターク・レッドルアにございます」

 宰相でも充分に雲の上の人。

 気が遠くなりそうなのを耐え、言葉を返した。


「そう硬くならすともよい」


 ギクリ。

 全身が震えた。

 今度は真正面から声がかかったのだ。

 つまり、国王陛下も臨席していて、しかも直に言葉をかけてきているということだ。


「直答を許す。偽りなく答えよ」


 宰相を介さず、直に言葉を交わしていいということだ。

 貴族ならともかく、平民相手ではめったにない厚遇ということになる。


「はは。光栄の至り、なんなりと」

 いったい何を聞きたいというのか? 


 パニックになりそうになるが、カロスタークは何とか言葉を返すことができた。

 なにを聞きたくて『召喚』されたかはわからないが、後ろめたいことなど何もない。

 聞かれたことへ実直に答えるのみ。


「道を整備したそうだな、なんのためか」

「モンモラシー男爵領とミヌミエーラ子爵領の流通を活性化させ、税収を増やすことを念頭に置いております」

 道路整備には国の許可が必要だっただろうか?

 そんな法はなかったと思うが、見落としていたのだろうか?

 冷や汗が出るが、そんなはずはないとあくまで平静を保つ。


「ミヌミエーラ子爵領な。子爵の妹と婚約しておったとは聞いた。婚約を解消したのなら意味がないのではないか?」

「は? 婚約解消などしてはおりませんが」

 そんな話は聞いていない。

 カロスタークは驚いた。


「婚約破棄はしておらぬのか?」

「する理由がございますでしょうか?」

 もしや、これが王直々に問い質してくる理由か?


 陛下か王子が密かに狙っていたなんてことはあり得るだろうか?

 もしそうなら、首が飛ぶ覚悟が必要になるぞ?

 相手は絶対権力者、その気になれば商人の小倅の首なんて簡単に飛ばせる。


「お主の手柄を横取りしようとしたそうではないか。痛手を受けたのではないのか?」

「なぜ、そのことを?」

 ああ。それか。

 ホッとしながらも、確認の問いが口から出るのを止めることはできなかった。


「国務大臣が申請手続きに不審を持ってな、確認して見たそうじゃ。いろいろと見つかったらしく、愉しげであったぞ」

 王様も楽しそうだ。

 ミヌミエーラ子爵は事業の横取り以外にもやらかしていたらしい。


「損はしておりません、もとより事業での儲けは考えておりませんでした。事業の成功で活気づく経済により、税収が上がることが第一、それが成るなら名義が誰のものでも問題ございません。また、資金はモンモラシー男爵領の予算から出ております。わたくしの腹は一切痛まないのです」

 横取りされたとわかっても、怒りに我を忘れずに済んだのもそのおかげだ。


「また、名誉につきましても道の整備によって恩恵を得る商人たちとは同業のよしみもあり、意見を出していただくなど協力関係を持っております。ミヌミエーラ子爵が何と言おうと、わたくしに害が出ることはございません」

 敢えて言えば、各地の貴族から煙たがられる可能性があるくらいだ。

 これも、それならそれでその貴族や所領には近づかなければいいだけのこと。

 カロスタークが困ることなどない。


「見事な見識じゃな。余の政商が目を付けるのも頷ける」

「私は政商様に目を付けられているのですか?!」

 さすがに聞き捨てならず、言葉が強くなってしまった。

 慌てて、頭を下げてかしこまる。

 陛下に対してしていい態度ではない。


 それにしても政商が出てくるとは。

 貴族ならまだあしらいようがあるが、政商に目を付けられては駆け出しの商人など風の前の塵だ。


 政商というのは王族や政府官僚などと深いつながりを持ち、国内で優位に商売ができる特権商人のことだ。

 わざわざ国王が『余の政商』と言うからには、相当に強いつながりがあると思われる。

 そんなのに目を付けられたら、国内での商売ができなくなりかねない。



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