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商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【フランソワ】編~蜜があれば花はいらず、竹は地を這わず~

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第2話 顔合わせ、そして計画 ~前編~

2/5

 


『婚約』の手続きには三日かかったが、滞りなく済んだ。

 カロスタークの実家はもとより放任なので、顔合わせもなしで済ませたからだ。

 ミヌミエーラ子爵家としても、興味はないらしい。


 書類上の手続きだけでほぼ完了だ。

 学院が『貴族院』から承認を得た書類を用意。

 これにサインをもらって終了。


 とはいえ、貴族のミヌミエーラ子爵家とカロスターク自身とは、さすがにそうもいかないので顔合わせの会食が行われた。

 といっても両親ではなく、子爵家の当主となっている彼女の年の離れたお兄さんとだ。


 フランソワは15だが、当主はすでに三十代半ばである。

 先代である両親はすでに高齢。

 王都にもいない。


 その代わりに王都にいるのが兄である投手となる。

 領地のとりまとめは先代と弟たちに任せて、王都で王国全体の仕事に従事しているのだ。

 モンモラシー男爵家と違い、王族とも関りが深いのだろう。


「お噂は耳に届いているよ。大変だったようだね」

 挨拶が済み、ある程度食事が進んだところで、そんな風に切り出された。



「お、お兄さま?」

 なにを言い出すのかとフランソワが声を上げるが、片手で黙らされた。

 年齢差があるから当然だが、兄弟とはいえ逆らえないようだ。


 当主が相手だし。

 異母妹だろうし、な。


 あまり仲もよくないのだろう。

 貴族ではよくあることだ。


「お耳汚しでしたね。身から出た錆と戒めにしております」

 もともとの婚約を破棄された件だ。


 あれだけ騒ぎになったのだ。

 取り繕っても無駄。

 カロスタークは素直に話をする。

 別に隠す理由もない。


「謙虚なことだ。——それはそうと——」

 ミヌミエーラ子爵が、唐突に会話の方向性を変えに来た。


 ここからが本題か。

 カロスタークは内心で身構える。


「領地の件なのだがね。うちの領地の道も整備したいと聞いたのだが?」

「はい。モンモラシー男爵領側だけですと、やはり荷車や馬車の運行に支障が出ます。道はすべて同じ規格であるのが便にいい。これは自明のことですので、そうできればと考えております」

 こちらの道が広く快適でも、その先の道がデコボコで狭ければ流通路として機能しない。

 最低限、道幅だけでも同じにしないと意味がないのだ。


「そうだろうね。それはよくわかるし、ぜひ協力もしたいのだが・・・」

「何か問題が?」

「折悪く、王家の事業に資金を回したばかりなのだ。事業が軌道に乗れば、王家から恩賞が出るので金銭的には余裕も出るが、それまでは動かせる資金がない。立て替えてもらうことは可能だろうか?」

「そういうことですか」

 ようするに、道の整備はしてもいい。

 だが、資金は出せない。

 カロスタークの方で調達をしろ、という話だ。


「わかりました。整備資金についてはこちらで用意させていただきます」

 金がないから道の整備はしない、などと言われてはモンモラシー男爵領での整備計画が無駄になる。

 答えは決まっていた。



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