第2話 顔合わせ、そして計画 ~前編~
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『婚約』の手続きには三日かかったが、滞りなく済んだ。
カロスタークの実家はもとより放任なので、顔合わせもなしで済ませたからだ。
ミヌミエーラ子爵家としても、興味はないらしい。
書類上の手続きだけでほぼ完了だ。
学院が『貴族院』から承認を得た書類を用意。
これにサインをもらって終了。
とはいえ、貴族のミヌミエーラ子爵家とカロスターク自身とは、さすがにそうもいかないので顔合わせの会食が行われた。
といっても両親ではなく、子爵家の当主となっている彼女の年の離れたお兄さんとだ。
フランソワは15だが、当主はすでに三十代半ばである。
先代である両親はすでに高齢。
王都にもいない。
その代わりに王都にいるのが兄である投手となる。
領地のとりまとめは先代と弟たちに任せて、王都で王国全体の仕事に従事しているのだ。
モンモラシー男爵家と違い、王族とも関りが深いのだろう。
「お噂は耳に届いているよ。大変だったようだね」
挨拶が済み、ある程度食事が進んだところで、そんな風に切り出された。
「お、お兄さま?」
なにを言い出すのかとフランソワが声を上げるが、片手で黙らされた。
年齢差があるから当然だが、兄弟とはいえ逆らえないようだ。
当主が相手だし。
異母妹だろうし、な。
あまり仲もよくないのだろう。
貴族ではよくあることだ。
「お耳汚しでしたね。身から出た錆と戒めにしております」
もともとの婚約を破棄された件だ。
あれだけ騒ぎになったのだ。
取り繕っても無駄。
カロスタークは素直に話をする。
別に隠す理由もない。
「謙虚なことだ。——それはそうと——」
ミヌミエーラ子爵が、唐突に会話の方向性を変えに来た。
ここからが本題か。
カロスタークは内心で身構える。
「領地の件なのだがね。うちの領地の道も整備したいと聞いたのだが?」
「はい。モンモラシー男爵領側だけですと、やはり荷車や馬車の運行に支障が出ます。道はすべて同じ規格であるのが便にいい。これは自明のことですので、そうできればと考えております」
こちらの道が広く快適でも、その先の道がデコボコで狭ければ流通路として機能しない。
最低限、道幅だけでも同じにしないと意味がないのだ。
「そうだろうね。それはよくわかるし、ぜひ協力もしたいのだが・・・」
「何か問題が?」
「折悪く、王家の事業に資金を回したばかりなのだ。事業が軌道に乗れば、王家から恩賞が出るので金銭的には余裕も出るが、それまでは動かせる資金がない。立て替えてもらうことは可能だろうか?」
「そういうことですか」
ようするに、道の整備はしてもいい。
だが、資金は出せない。
カロスタークの方で調達をしろ、という話だ。
「わかりました。整備資金についてはこちらで用意させていただきます」
金がないから道の整備はしない、などと言われてはモンモラシー男爵領での整備計画が無駄になる。
答えは決まっていた。
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