表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【フランソワ】編~蜜があれば花はいらず、竹は地を這わず~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/69

第1話 告白

1/5

 


 中間試験が終わり、学院生活も残すところ半年。

 この時期になると、ある“風物詩”が校内をざわつかせる。


 それが——『告白』。


 卒業を目前にして、婚約相手が決まっていない貴族子女たちが、焦りから動き出すのだ。

 貴族社会では、血筋の維持と家の繁栄が何よりも重視される。

 そのため、学院は学問の場であると同時に、“お見合い市場”としての役割も担っていた。


 特に女性側の動きは活発だ。

 正妻になれなくてもいい。

 側室でもいい。

 せめて“卒業時の婚約者”という肩書きだけでも欲しい——そんな思いが交錯する。


 もちろん、告白にもルールがある。


 すでに婚約が内定している者は避ける


 爵位が下の者が上の者へ告白するのは避ける


 つまり、「婚約者のいない、自分と同等か下の身分の者」がターゲットになる。


 そして今、最も“狙われている”のが——商家出身の青年、カロスターク・レッドルアだった。


「つ、疲れた……」


 自室に戻るなり、カロスタークはベッドに倒れ込んだ。

 今日もまた、歩く先々で貴族令嬢たちからの“告白”攻勢にさらされていたのだ。


「今日もモテモテだったのですね」


 お茶を淹れながら微笑むのは、従者のトマ。

 その笑顔に、カロスタークは睨みをきかせる。


「人ごとだと思いやがってぇ……」


 王立学院において、商人の子弟は最下層。

 だが、だからこそ“狙いやすい”。

 貴族令嬢たちにとっては、婚約破棄しやすい“滑り止め”として扱われる存在だった。


 しかもカロスタークは、最近とある事情で注目を集めている。

 いろいろあるが『経済的には力がある』ことが明白なのだ。

 そのせいで、告白の数も跳ね上がっていた。


「よさそうな方はいらっしゃらなかったのですか?」


「いなくはないけど……」


 実際、カロスタークの対応は二通り。

『ごめんなさい』と『考えさせて』。

 前者は完全に断る相手、後者は“保留”という名の牽制だ。


「なら、早めに『婚約』してしまえば解放されるのでは?」


「まぁ、そうなんだけどね……」


 そんな中、彼の前に現れたのが——フランソワ・ド・ミヌミエーラ。


 北方の子爵家の五女。

 アッシュブロンドの髪とグレイの瞳を持つ、気品と知性を感じさせる令嬢だった。


「わたくしとの『婚約』が成れば、領地経営はもっと楽になるはずよ。モンモラシー男爵領との間で流通を活性化させるの。貴方もそのつもりがあって、道の整備に力を入れているのだと思うのだけど?」


 その提案は、カロスタークにとっても悪くない話だった。

 告白攻勢から逃れられるうえに、領地経営にもメリットがある。


 モンモラシー男爵領は『とある事情』から、カロスタークの管理下にあるのだ。

 選ぶなら、彼女だろう。




「婚約、お受けします」


 フランソワは、告白の場所にまだいた。

 他の男に声をかけるでもなく、周囲の様子を観察していたようだ。


 カロスタークの言葉に、彼女は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに微笑んだ。


「まぁ! お早い決断、うれしいですわ」


 その夜、二人は王都の有名レストランでディナーを楽しむ。


 フランソワの香りと笑顔に包まれながら、カロスタークは思った。


 ——これで、少しは静かになるだろうか。


 だがこの“契約”が、 やがて彼の運命を大きく揺るがすことになるとは、このときまだ、誰も知らなかった。


評価いただけると続編を書く意欲に直結します


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ