第20話:領地経営(中編)~男爵領の再建~
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公共事業。
平たく言えば道や川、物流路の整備である。
いかに良い作物を作れても、売れなければ意味がない。
そして、売るためには速やかな運送が第一条件。
道失くして経済なし、だ。
「作物の収量を増やすのが先ではないですか? 道が整備されても売る物がなくてはどうにもならないと愚考しますが?」
「そのためにも道の整備は重要なのさ。道は物を運ぶだけじゃない。人の移動もスムーズにしてくれる。隣の領地は特産が果物でね。収穫時期は夏に集中している。モンモラシー男爵領が小麦の植え付けの春先と、収穫時期の秋が忙しいだろ? 忙しい時期が互いに違うから、人の動きをスムーズにすることで人手の増加が見込めるんだ」
春と秋は隣の領地から人を雇い、夏はモンモラシー男爵領から出稼ぎを出す。
双方の領地で雇用し合うことで、庶民の懐に金が入る。
金があれば、購買意欲が上がり経済が活性化。
税収が増えるから、その金で農地の拡大を推し進める。
広くなった分、人手が欲しくなる。
付近の領地からどんどん人を雇う、人流が増え、市場は活気づき、経済はさらに活性化していく。
好循環が生み出されていく土壌を作るための、道整備だ。
「なるほと、道はわかりました。けど、この、広場というのは?」
リストを見ていた男爵が指さしたのは、整備する道の途中途中に作る『広場』の部分だ。
「休憩所兼自由市場だな」
「休憩所? 自由市場?」
わからないという顔をする男爵に、カロスタークは丁寧に説明していった。
まずは広場。
荷物の運搬には大きな荷馬車が使われる。
手懐けた大型魔獣に車輪を付けた箱を引かせ、その箱に物資を載せるというものだ。
当然だが、かなり巨大なものになる。
しかも重いので、町から町への移動には日数がかかるものだ。
この移動時に、荷馬車を安全に止めるスペースがあれば便利だというのは、商人——いわゆる行商や隊商のこと——たちの下で荷運びをする者たちの間ではよく聞く話だった。
それを作ろうというのである。
今は各自で道の横にスペースを見つけてそこで休む形だが、きちんと整備した空間があればみんなそこを利用するはずだ。
商人が集まれば自然と情報交換が行われる。
道と道が交差するような場所であれば、西に行こうと思っていた商人が抱えている商品が南で不足しているという情報を得て行先を変えるようなことが起こる可能性があった。
地域ごとの不足物資が自然な形で供給され、値段の高騰なども防ぐことができる。
自由市場というのもそれだ。
契約があって、どうしても西に行かなければならないとなったとき、その商人は南に行く商人に荷を売ることができるようにする。
もちろん、契約で荷物の量などが定まっている可能性はあるが、商人たるもの。必要数『しか』積んでいないなんてことはない。
余剰分を流してもらえるだけでも、物資が不足している地域にはありがたい。
「な、なるほど。考えたこともなかったことです」
「領主って立場だと、なかなか見えないだろうね。オレは生まれた時から商人だからな」
子供の頃には、隊商のおじさんについて行って町から町へと旅したこともあるカロスターク。
その経験から得た発想なのだ。
「早速、始めます」
「よろしく」
各種書類をまとめ、男爵が去っていく。
『早馬』を使って領地に戻るのだ。
魔法による転移装置で、各地の教会に設置されている。
移動費用は高いが、時間を買えるなら安いものだ。
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