第19話:領地経営(前編)~男爵領の再建~
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学院での授業が終わると、モンモラシー男爵家に通うのがカロスタークの日課になっていた。
『負債返済』のため、領地経営を見直さなくてはならなかったからだ。
そうはいっても、実のところやることはそれほど多くない。
学院卒業後には商会を立ち上げて男爵領を経済的に潤す心づもりだったからだ。
当然に、モンモラシー男爵領の内情も調査済み。
『お義兄さん』となる予定の当主にする『提案』内容は、常にまとめて用意してもいた。
それを一年前倒しで使うだけのことである。
モンモラシー男爵領の管理責任者の立場で。
男爵家当主を部下として使いながら。
「とりあえずすべきは、不正の撲滅ですね」
「不正、ですか?」
カロスタークの言葉に、モンモラシー男爵は眉を顰めた。
男爵家の役人が、そんなことをするはずがない。
そう思ったようだ。
だが、カロスタークには確信があった。
数千枚に及ぶ書類や帳簿を確認して、明らかにおかしな金の流れがあることを掴んでいたのだ。
これまで、カロスタークは一学生で商人でしかない若造。
セザールの『婚約者』という立場でしかなかった。
貴族家の当主に意見するなんてことは許されないことだったのだ。
だから指摘しなかったのだが、今ならできる。
「ここにリストをまとめておきました。騎士団を使って順に強制査察に入ってください。もし、確証が出ずに居直られたり逆に苦情を言ってくる者がいた場合、教えていただければ私が改めて対処方法を考えます」
「わ、わかりました。私が直接指揮を執ります」
「それがいいでしょうね。騎士だけで査察に行っても従うとは限らないが、当主が行けば従わざるを得ないですから」
封建制における貴族と役人の身分の違いとは、そういうものだ。
「役人たちの処罰ですが、素直に罪を認めた者には不正で得た利益の返還を義務付けて復職。抵抗した者たちは全財産没収の上で、罪に応じた期間の投獄とします」
全員クビにしてしまっては行政が滞る。
一罰百戒は必要だが、委縮され過ぎるのもよくない。
このぐらいが妥当だろう。
「それと、どちらの場合であっても、家族には罪を問わないこと。生活に困窮するようなら、可能な限り仕事を斡旋してあげてくださいね。思い余って自害とか犯罪に走るとかされると治安が悪くなりますから」
人間、一度下に転がり始めると一気に堕ちる。
最初のひと転がりを防ぐことが重要なのだ。
「返還・没収で入ってくる資金は、こっちのリストにある公共事業に使ってください。リストは優先度の高いもの順になっていますので、上から片付けてもらえれば大丈夫です」
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




