第18話 タノシイ学院生活3 ~後編~
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「なるほど」
納得。
カロスタークは頷いた。
わかってしまえば、どうというものでもない話だ。
どうという話でもないんだけど——。
なんなんだろう?
カロスタークは内心で頭を抱えていた。
表面上はポーカーフェイスを維持しているが、正直かなり困惑している。
「いいか? おれは鉄壁のリシャール。彼女たちを守る強靭な男なのさ」
胸元をはだけ、腕の筋肉を隆起させて見せつけてくる金髪男に絡まれているのだ。
脈絡もなくそんなことを言ってくるので、なにを言いたいのかもよくわからない。
カロスタークは、疑問に思いながら口を挟むこともできずにいた。
男——リシャールだったか——は聞きもしないのに自分上げの他人下げを垂れ流して悦に入っているようだ。
まぁ確かに?
筋肉はすごい。
カロスタークの三人分は優に保持しているだろう。
だが、だから何なのか。
「——そんなわけだから、クルールちゃんとセザール様を俺に譲って消えろ」
「ああ」
それか!
ようやく、リシャールが何を言いたいかが分かって、思わず声が出た。
すると——。
「おお。わかってくれたか。お前、見所あるぜ」
破顔一笑。
たぶんわざとだと思うが、力のこもった腕で肩を叩いてきた。
無駄に暑苦しい男だ。
「いや、別に承諾はしていませんよ?」
結構痛かったので身体を捻って躱しながら否定した。
そもそも、クルールは友達だ。
友達を譲るとか意味が分からない。
セザールにしても『側女』という立場ではあるが奴隷になんてしていない。
家庭の事情でオレに借りはあるが、それだけ。
学院内にいる間はオレ以外と関わるのが難しいだろうから居場所を提供しているが、卒業すればあとの進路は自由意思で決めて問題ない。本人にもその旨、ちゃんと伝えてあった。
『譲る』対象ではないのだ。
「あ゛? テメ―、立場分かってんのかよ!」
安い芝居の悪役みたいなセリフを吐かれた。
「いいか? お前なんて、ちょっと金があって悪知恵が働くってだけの商人だ。俺がその気になりゃ、いつでも潰せるんだよ! 社会的にも、物理的にもな!」
右手の親指を立て、首を切るジェスチャーをして見せられた。
「脅しのつもりか?」
くだらないケンカに乗るつもりはないが、これ以上絡むのなら対応を考えるぞ?
カロスタークの目に危険な光が瞬き始めていた。
セザールという『婚約者』がなくなった今、カロスタークに怖いものはない。
ずっと、『男爵令嬢に相応しい自分』を演じていたが、その枷は取り払われたのだ。
「やめといた方がいーよぉ―」
さすがに不快になり、身構えかけたオレを止める者がいた。
荒事とは無縁そうな柔らかな手でカロスタークの肩を抑え、そっと押すのはクルールだ。
「鉄壁のリシャールって二つ名は自称じゃなくて、実力だから。本当に潰されちゃうよ?」
クスクス笑いながら、相手の男を持ち上げる。
「さすがクルールちゃんはわかってくれてるぜ」
自分との間に割り込んだクルールを抱きしめ、どや顔をするリシャール。
カロスタークをバカにした目で見ていた。
「ほらほら、セザールが待ってるよ。訓練場いこ!」
ふわりと身をひるがえしてリシャールの腕から抜け出たクレールが、そのまま腕を引いて去っていく。
「ああ、そうだな。セザール様には俺みたいな強い男の方が似合うんだ。あんなガキみたいなへなちょこよりさ」
その間も、リシャールは不快な笑みをカロスタークに向け続けていた。
「あいつ、まさか——」
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