第9話 毒と薬は別物に見えて、本質は同種たらん ⑥
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その日、世界から忘れ去られたような村に、三匹の悪魔——天使?——が降り立った。
「な、な、な、」
たまたま村の広場にいた若者が、腰を抜かして座り込んだ。
「あれ? 蛇足族いなくない?」
周囲をぐるりと見回して、腕組みをした女の翼人族が呟いた。
彼女の左右後方には、屈強そうな男の翼人族が仁王立ちしていて、威圧感がハンパない。
「だ、だ、蛇足族? それなら、あっちだ!」
腰を抜かした若者が必死になって、指を振った。
震えまくっていて「あっち」がどこかよくわからないが、方角と蛇足族がいることはわかったから充分だった。
バサッ、黒い翼を羽ばたいて飛び上がる。
騒ぎを聞きつけたのだろう、向かう先に蛇足族が集まり始めていた。
その後ろにまん丸なテントがいくつも並んでいる。
これが蛇足族たちの住居であるらしい。
手間が省けたと女の翼人族が頬を緩めた。
「ここにミザーリって蛇足族の女がいるって聞いた。どの人?」
集まった蛇足族を見下ろして問いを投げた。
「な!」
「先生に翼人族ごときがなに用だ!?」
蛇足族たちが色めき立つ。
ミザーリというのは彼らにとって、先生と呼ぶほどの相手であるらしい。
「手紙を届けに来てあげたんだよ」
指先で挟んだ封筒を振って見せる。
「手紙だと?!」
「ふざけるな!」
「先生が翼人族ごときの手紙など読むものか!」
次々に打ち上がる罵声に、女の翼人族は面倒くさそうな顔になった。
「ミーラン様、ここは我々が黙らせましょうか?」
二人の護衛が全身に力を入れて進言する。
一瞬、ミーランが考える素振りを見せた。
だが、その必要はなかった。
「まちな」
蛇足族の作る壁の向こうから、しゃがれた声が待ったをかけたのだ。
「下がっていてください」
「危険です!」
一人の蛇足族が押しとどめようとする仲間たちの間を、毅然とした態度で歩み出てくる。
「黙りな。わたしを名指しでやってきたんだ。仮にもわたしの客だよ。危険かどうかは自分で判断する」
自分よりでかい蛇足族たちを下がらせて、ミザーリはミーランと相対した。
「うちの若い者が失礼したね」
「下の者を躾るのは、上に立つ者の責任。その人たちが悪いんじゃない。あなたの教育がなってないだけ」
ミーランがフルフルと首を振る。
「クク」
お前が悪いと言われたミザーリが、目を細めて短く笑った。
「違いないね。耳に痛いよ」
小さく、何度も頷く。
「で? 手紙だったかい?」
「そうだよ。返事が欲しいって言われてるから、読み終えたら呼んで」
「ああ、わかったよ」
封筒を受け取ってミザーリは、適当な椅子に腰を掛けた。
上着から眼鏡を取り出し、読み始める。
「ライアン? ああ、あのハナタレか」
送り主の名を確認して呟いた。
最後に会ったのは四年前だったか。
他の若者たちと一緒に傭兵になるなどと、バカなことを言うので叱ったことを思い出す。蛇足族といえば傭兵、戦闘民族。そんな人間たちの決め付けになぜ乗っかってしまうのか。寂しくもあり、哀しくもあったものだ。
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