第4話 毒と薬は別物に見えて、本質は同種たらん ①
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『ミーラン』は哀しげに俯いてしまっている。
根深いものがあるのかもしれない。
「言ってみなよ。口に出して言うだけならタダだぞ。悪いことにもならない」
務めて明るく発言を促すカロスターク。
それでも、沈黙はしばし続き・・・。
「仲間が病気。元気ない」
ポツリと呟きが落ちた。
「病気かぁ」
それはちょっと、とカロスタークは顔を曇らせた。
カロスタークは貴族であり領主、そして商人。
医者ではない。
「人間のせいだ! 人間が水場を奪ったから!」
「水場か。今の住処には水場がないのか?」
そういう話なら、領地持ちの貴族にもできることがあるかもしれない。
「水場はある」
「あるのか、なら——」
「でも違う! 前の水場と違う!」
両腕と翼をバタバタさせて、力説された。
なにかが違うらしい。
「いまの水場の方がよい水場なのだがな」
横で聞いていたエルフの長が、そんなことを言い出した。
「と言うと?」
前は何が悪かったと言うのだ?
今の方がいいはずだと言うからには、エルフから見ると前の水場に問題があったということだ。
「『翼人族』たちの元の住処は南方の海岸線でな。水場となっていたのは汽水域だったのだ」
「海水が混ざっていたと?」
汽水域とは、淡水と海水が混じり合う場所を指す。
一般的には川が海に流れ込む河口付近や、湾などで見られるものだ。
「そういうことじゃ。薄くはなっていただろうが塩水に近い水。体に良いはずがあるまいて」
「確かに」
カロスタークも同意した。
医者でなくとも、常日頃から塩水を飲むことが健康にいいはずがないことはわかる。
だけど・・・?
「真水の水場がある今の住処に来てから、病気の仲間が増えたんだね?」
「そうだよ!」
「そうか・・・」
カロスタークは考え込んだ。
ただ単に、環境の変化によるストレスとも思えるが・・・。
ミーランを見る。
身長と同じくらいの大きな翼が目を引いた。
可能性、あるのではないか?
「ちなみに、仲間の病気ってどんな 症状は?」
「症状? えーっと。まずは大量の汗。すごくたくさん汗が出てた。何もしてなくても。だからかな? 皮膚がカサカサになって、眩暈もおきるみたい。そして最悪なのが筋肉のけいれんだね。いてもたってもおれぬほどの激痛だって言ってる」
仲間の様子を思い出しながら、苦い口調で『ミーラン』が丁寧に教えてくれた。
「ミーラン」
最後まで聞いたところで、カロスタークは居住まいを正して口調も改めた。
「ん?」
雰囲気の変わったカロスタークに、ミーランが怪訝な顔になる。
「ん?」
雰囲気の変わったカロスタークに、ミーランが怪訝な顔になる。
けれどその目は、どこか期待を含んでいた。
「少し時間をくれないか? 翼人族を元気にする。そんな手立てを講じる猶予が欲しい」
「そんなことができるものかっ!」
エルフの長がすかさず怒声を張り上げた。
けれど、ミーランはその声に反応せず、じっとカロスタークを見つめていた。
「できる、そう思っている顔だね。わたしの話を聞いたうえでってことは、根拠のある話なんだよね?」
「もちろんだ」
自信をもってカロスタークは答えた。
その瞬間、ミーランの胸の奥で、何かが小さく跳ねた。
『翼人族』は伝統的に女性のほうが発言力が強い。
ミーランの周りでは、こんな自信を見せる男が今までいなかった。
彼女がカロスタークを特別視し始めるには、十分なきっかけだった。
「わかった。でも、そんなには待てないかも」
そう言いながら、ミーランはそっと視線を逸らした。
けれどその頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
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