第1巻 第29讃歌 インドラ讃歌
1. おおソーマを飲む者よ、
常に真実なる者よ、
私たちが完全に絶望的であっても、
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
2. おお力の主よ、
顎の強い者よ、
偉大な業績はあなたのもの、
力強い者よ
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
3. 互いに見つめ合う二人を、
二度と目覚めぬよう
眠らせてください
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
4. 英雄よ、
敵対する霊たちを眠らせ、
すべての穏やかな天才を
目覚めさせてください
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
5. おおインドラよ、
このロバを滅ぼしてください、
不協和音であなたに
鳴き声を上げる者を
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
6. 嵐を遠くの森に、
渦巻くコースで
落としてください!
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
7. それぞれの中傷者を殺し、
密かに私たちを害する者を
滅ぼしてください
おおインドラよ、
美しい馬と牛の希望を
私たちに与えてください、
数千に及ぶものを、
おお最も富める者よ。
簡単な解説(全体の流れとポイント)
この第29讃歌は、インドラを「ソーマの飲み手」「力の主」として呼びかけ、繰り返し「美しい馬と牛の希望を、数千に及ぶものを与えてください」というリフレインが特徴です。
絶望的な状況(敵の呪い、中傷、害意)から守り、富(馬・牛=当時の最大の財産)の希望を与えるよう強く祈る、かなり現実的で切実な内容です。リグ・ヴェーダのインドラ讃歌の中でも、日常の苦難と富への渇望がストレートに表れた一曲です。
• 1-2節:インドラの真実性と力強さを讃え、絶望の中でも「馬と牛の希望」を求める。リフレインが毎節の締めくくり。
• 3-4節:敵対する者(互いに睨み合う二人、敵対霊)を眠らせ、穏やかな存在を目覚めさせるよう。敵の排除と味方の強化。
• 5節:不協和音で鳴く「ロバ」(おそらく中傷者や邪悪な声)を滅ぼすよう。詩的な比喩で敵を侮蔑。
• 6節:嵐を遠くの森に落とすイメージ。災厄を遠ざける祈り。
• 7節:締めくくりは中傷者と密かな害意を持つ者を滅ぼし、再び「馬と牛の希望」を求める。
全体として、敵意・中傷・害悪からの保護と、富(特に馬・牛)の大量授与をインドラに懇願する、部族社会の現実的な願いが色濃く出た讃歌です。リフレインの繰り返しが祈りの切実さを強調し、ヴェーダの呪詛的・護符的な側面を感じさせます。




