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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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102/107

第1巻 第102讃歌 インドラ讃歌

1 強大なる汝のために、

私はこの強大なる賛歌を携えてきた。

私の賛辞によって、

汝の望みは満たされたからだ。

インドラのなかにあって、

然り、その剛勇をもって勝利する

彼のなかにあって、

神々は祝宴の夜に、

そして神酒ソーマが流れるときに、

大いに歓喜したのだ。

2 七つの大河(インダス川の支流)が、

彼の栄光を遥か遠くまで運ぶ。

天空も、大気も、大地も、

彼の麗しき姿を映し出す。

太陽と月は、

互いに交代しながらその軌道を走る、

それは、インドラよ、

我らが汝を目撃し、

信仰(確信)を持つことができるため。

3 施与者マガヴァンよ、我らに

戦利品をもたらすあの戦車を授けたまえ、

激しい戦闘の衝撃のなかで、

我らが歓喜する、あの勝利の戦車を。

インドラよ、戦いのなかで、

我らの心が深く讃える汝よ、

我らに庇護を与えたまえ、

汝を深く愛する我らの上に、

おお、施与者よ。

4 あらゆる闘争において、

我らが陣営を鼓舞したまえ。

汝を盟友アライとして、

我らが仇敵の軍勢を

征服することができますように。

インドラよ、我らに

歓喜と至福を授けたまえ。

おお、施与者よ、

我らが敵の活力を

打ち砕いておくれ。

5 ここにいる男たちは、

様々なやり方で汝を呼び求め、

宝の保持者たる汝の加護を

勝ち取るために、賛歌をうたう。

我らに戦利品をもたらすために、

あの戦車へとお登りください。

インドラよ、汝の意志(決意)こそが、

勝利を勝ち取るのだから。

6 彼の両腕は牛を勝ち取り、

その権能は、あらゆる行いにおいて

限界を知らぬ。

百の援助を伴い、

戦闘の轟音を目覚めさせる最高の者、

それがインドラだ。

その強大なる剛勇において、

彼に並ぶ者は誰もいない。

それ故に、民は戦利品を熱望し、

彼を呼び求めるのだ。

7 施与者マガヴァンよ、汝の栄光は、

百の軍勢をも凌駕する。

然り、民のなかにあって、

百よりも、千よりも大きく勝る。

あの巨大な器(お供えのボウル)が、

汝を限りなく奮い立たせた。

城塞の破壊者よ、

それによって汝が、

諸々のヴリトラ(悪魔たち)を

ほふりますように!

8 汝の大いなる威力には、

三つの対比(対応するもの)がある。

三つの大地、人間の主よ、

そして、三つの光の領域(天界)だ。

この全世界のはるか上方へと、

インドラよ、汝は強大に育った。

汝は、その本質において、

太古の昔から

敵なしの存在なのだ。

9 諸神のなかで、我らは何よりもまず

汝を呼び求める。

汝は、戦闘における

強大なる征服者となった。

インドラが、我らがうたう者の心に

魂(気概)を満たしてくれますように。

そして、我らの戦車を激しく、

突撃の先頭に立たせてくれますように。

10 汝は勝利を収め、

勝ち取った戦利品を

決して独り占めにはしなかった、

小さな戦いにおいても、

大いなる決戦においても。

我らは汝を、強大なる者を奮い立たせる、

我らを救いたまえ。

施与者よ、我らが敵に挑むとき、

我らにインスピレーション(闘志)を

与えたまえ。

11 願わくは、インドラがとこしえに

我らの保護者でありますように。

我らが危険にさらされることなく、

あの戦利品を勝ち取ることができますように。

我らのこの祈りを、

ヴァルナ、ミトラ、アディティ、

シンドゥ(インダス川)、

大地と天空が、

叶えてくれますように。



解説

この第102曲は、全11節のなかに、インドラの「宇宙の運行者」としての絶対的なスケールと、部族を率いる「戦車の司令官」としてのリアルな戦闘美学を凝縮した名曲です。

* 1–4節:祭壇での神酒ソーマの歓喜から、宇宙の運行へとプロットがドライブします。2節の「太陽と月が交互に空を走るのは、人間がインドラの栄光を目撃して信じるためである」という一文は、自然現象のすべてを主神のデモンストレーションとして解釈する、非常にダイナミックな宗教的・文学的レトリックです。3節以降は、戦利品を運ぶ「勝利の戦車( conquering car )」のビジュアルが前面に押し出され、戦士たちの士気を最高潮に高めます。

* 5–8節:インドラの無敵性と遍在性がうたわれます。8節の「三つの大地、三つの光の領域( three earths, three realms of light )」という表現は、当時のインド・イラン共通の宇宙観(三界説)を反映したものです。インドラはその世界のすべてを超越して巨大化し( waxen great )、太古の昔から宇宙に敵なしの存在( without a foe )として君臨しています。

* 9–11節:実戦におけるリアルな戦術と心理が描かれます。10節の「小さな戦いでも、大きな決戦でも、勝ち取った戦利品を独り占めにしなかった( not kept the booty back )」という描写は、部族の理想的な指導者(王・英雄)の行動規範をインドラに投影したものであり、物語に強い説得力を与えています。最後はいつもの諸神の連名による祝福で美しく着地します。

2節の「太陽と月が交代で走るのは、人間にインドラの力を信じさせるため」というプロットや、10節の「小さな小競り合いでも大戦でも、戦利品をみんなに分け与える」というリーダーシップの描写がいいですね。神話の壮大さと、一族を率いる親分のリアリティが完璧に調和しています。


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