迷宮ナビ
迷宮の奥、苔むした石畳の上に、小さなクリスタルが静かに光っていた。
「2つ目、発見!」
ピピンが嬉しそうに声を上げ、そっと手を伸ばした――その瞬間だった。
びしっ、と鋭い魔力が空間を走る。
ガコン、と壁がせり出し、天井が音を立てて落ちてきた。あっという間に、前後の道が封鎖された。
「うわっ、なんだこれ!?」
「罠か!? まじかー!」
一瞬の混乱がチームを襲う。光源が揺れ、閉じられた空間に不安が満ちていく。
「みんな、ストップ!」
ヴィオラの冷静な声が響き、その場を落ち着かせる。
そのときだった。
「ムー?コレ、ワナ!ワナ、トラップ!」
ロップスが壁のそばにぴょこんと跳び、片耳をぴんと立てた。
「ムームー!スイッチ、アルハズ!」
ぴょい、と前脚で壁の小さな穴を指す。確かに、薄い魔力の気配が漏れ出ていた。
「アッタ!コレ!魔力、イレテ!」
「よし、やってみよう!」
ウチャが小さな指を穴に差し込み、集中して魔力を流し込む。
しゅるん――。
空間に満ちていた重圧がすっと軽くなり、壁が自動的に元の位置へと戻っていった。
「おおお……」
ピピンが思わず感嘆の声を漏らす。
「ロップス、お前……やるじゃん!」
「エヘヘー!ムームー!」
ロップスは得意げにしっぽを回しながら跳ねる。
ピピンはニカッと笑って、親指を立てた。
「うちの頼れるナビって呼ばせてもらうぜ」
「ナビ?」
「案内してくれる人って意味だよ。この人についていけば大丈夫!」
「ロップス、ナビ!」
その後も、チームは順調に進んでいた。
しかし、広い通路の先で、別の受験チームとすれ違ったとき――空気が変わった。
「な、なんでお前らこんなとこに!? 危ないぞ、逃げろ、早く……!」
相手の一人が取り乱した様子で叫ぶ。
ヴィオラが前に出て、落ち着いた声で問いかけようとするが――
「ウシロ。魔物、キテル。トマッタラダメ」
ロップスがすっと声を挟んだ。
一瞬、空気が凍りつく。
「えっ……」
その声に反応するように、遠くから低く唸るような音が響いた。
「行こう! 全員、走って!」
ヴィオラが即座に判断し、両チームを先導する。ロップスはピピンの背中にぴょんと乗りながら、耳を立てて後方の気配を探っていた。
危機はギリギリで回避された。モンスターの気配が遠のき、ふたたび静けさが戻る。
「ロップス、すごいな……」
「チームワーク!ムー!」
そして、二つ目、三つ目のクリスタルも無事回収。残るはあと一つとなった。
道を進むごとに、魔力の空気が徐々に濃く、そしてざらついていくのがわかる。
「……ナンカ、感ジル」
ロップスがきょろきょろと周囲を見渡しながら、ぽつりとつぶやいた。
その言葉に、ピピンもウチャも思わず息をのんだ。
ギルド登録試験。
最後のクリスタルを前に、迷宮は牙を剥き始めていた――。




