奇襲決行
南国の陽光が燦々と降り注ぐ。空はどこまでも青く、どこまでも高い。海猫が気ままに羽ばたく雲ひとつない空の下、アレイオスの街が鮮やかな色彩で輝いていた。
眼下に広がるのは、赤や黄色、エメラルドグリーンの屋根が散りばめられたモザイクのような街並み。白壁の家々には色とりどりの花が咲き、甘い香りが風に乗って漂ってくる。はるか遠くには、緑濃いブラジ島の山々。その斜面を幾筋もの滝が走り、陽光を浴びて銀の糸のように輝いていた。
そして、海。どこまでも広がるターコイズブルーの海が、まるで世界の果てを守っているかのように静かに広がっていた。
そんな美しさに満ちた街の片隅、僕たちは丘の上にいた。
まさか、こんな明るい時間に潜入するなんて――
そんな思いがよぎったけれど、これが最善の作戦だと分かっていた。だから、僕は風の流れを確かめ、深く息を吸い込む。
丘の上には、ヴィオラ、ウチャ、そして僕。
ヴィオラが前を見据えたまま言う。
「とうとうここまで来たわね」
彼女の声はいつもどおり静かで、自信に満ちていた。隣のウチャは、目を輝かせて頷く。
「うん……ワクワクする!」
僕もまた、小さく呟いた。
「……俺たちにしかできない方法で、ジェッピを倒す」
そして、ポルシェッタを構える。空気を吸い込み、圧縮する。目に見えない風が、目に見える力へと変わっていく。
「準備はいいね?」
「もちろん!」ヴィオラが頷く。
「いつでもいけるよ!」ウチャも続いた。
いける。絶対に、届く。
僕は拳を握りしめ、叫んだ。
「発射!!」
空気が爆ぜる音と共に、僕たちは空を翔けた。
風が、身体を持ち上げる。青空が近づいて、やがて下へと流れていく。海猫を追い越し、僕たちは一直線に宮殿の上空を目指した。
アレイオスの街が、まるでおもちゃのように小さくなっていく。けれど、感傷に浸る暇はなかった。
宮殿の屋根が目前に迫る――!
「……ピファール!」
ウチャが唱えた。
ふわり、と重力が失われる感覚。風の流れが変わり、僕たちは音もなく屋根に着地した。
成功だ。
僕たちは互いに頷き、静かに宮殿の中へと忍び込んだ。
* * *
宮殿内部は、まるで時が止まったかのように静まり返っていた。
金と大理石に彩られた荘厳な回廊。赤い絨毯は足音を吸い込み、僕たちの存在を覆い隠してくれる。
空気が冷たい。緊張が、肌にまとわりつくようだった。
通路を進むごとに、心音が強くなっていく。まるで、宮殿そのものが僕たちの存在に耳を澄ませているようだった。
やがて――玉座の間の扉の前に辿り着いた。
静かに、扉の隙間から中を覗く。
そこに――いた。
ジェッピ。
他に誰もいない。玉座に腰かけ、静かに佇む彼女の姿。だが、気配はあまりに薄い。まるで幽霊のように、影の中に溶け込んでいた。
でも、僕たちには分かった。あれは、油断の隙だ。ここしかない。
ヴィオラが一歩、前へ出た。
その目が、鋭く細められる。闘志が赤い炎となって、彼女の身体を包み込んでいく。
無言のまま――彼女の姿が、消えた。
その刹那。
――バゴオン!!
無音の広間に、炸裂音が、空気を切り裂いた。
ヴィオラの拳が、ジェッピの背中を撃ち抜いたのだ。
ジェッピの体が仰け反り、玉座が軋む。
血が散った。
驚愕、痛み、そして理解不能の表情を浮かべるジェッピ。
奇襲成功?!
しかし、ヴィオラはすでに次の攻撃に備えていた。




