光の水の瓶の研究
――研究所にて
ドワラゴンの研究所にこもり、僕たちは光の水を長期間維持する方法を探り続けた。
最初の数日は、保存方法の改良に取り組んだ。密閉容器の材質を変えたり、光の水に追加の魔法をかけたり、いくつもの方法を試したが、どれも時間が経つと光は失われてしまう。
「また消えちまった……」
スミスが溜息をつきながら、すっかり輝きを失った水を見つめる。
「やっぱり、魔法の影響が消えてしまうのかな……」
ウチャが肩を落とした。
「もしくは、光の水そのものが、周囲の魔力に干渉されて拡散してしまうのかもしれん」
ドワラゴンが腕を組みながら考え込む。
何度も失敗を繰り返した僕たちは、別の可能性を模索し始めた。
「だったら、魔力を安定させる物質を加えたらどうだ?」
カブールが提案し、僕たちは試してみることにした。魔法の触媒となる薬草、魔力を吸収するとされる砂鉄、封印の力を持つと言われる銀粉――あらゆる材料を試したが、どれも効果はなかった。
「くそっ、どれもダメか……」
僕はポシェッタで成功した容器を複製してみることを考えた。ポシェッタの複製なら、光の水の状態をそのままコピーできるかもしれない。
だが、いざ複製してみると、見た目は同じでも、複製された水はすぐに光を失ってしまった。
「……ダメだ。ポシェッタの複製じゃ、光の水の性質までは再現できないみたいだ」
魔力や特殊な性質を持つものは、ポシェッタでは複製できない。
「つまり、ただの水はコピーできても、その『光を宿す性質』までは移せないってことか」
ドワラゴンがヒゲを撫でながら呟いた。
「だったら……」
僕は試しに、研究所の中にあった魔力を帯びた金属の皿に光の水を注いでみた。しかし、しばらくするとやはり光は消えてしまった。
次に、いくつかの鉱石を試してみた。魔法陣を描いた石板、魔力を蓄えると言われるクリスタル、熱を通しにくい黒曜石……。だが、どれも決定的な解決策にはならなかった。
「もう試せるものがないんじゃ……?」
ウチャが諦めかけたそのときだった。
ドワラゴンが新しい鉱石を探そうとして、研究所の奥の棚に手を伸ばした。
しかし――よそ見をしていたウチャがドワラゴンにぶつかった。
「うお!」
その拍子に、棚の上にあった小さな容器が落ち、欠けた鉱石の破片が床に転がった。
そして、作りたての光の水を床にぶちまけてしまった。
「おい、ウチャ気をつけろ」
「あっ、ごめん!」
ウチャが慌てて鉱石の破片を拾い上げようとする。
「やめろ。危ないから下がってろ。危険な鉱石の破片もある」
「ごめんなさい」
ウチャがしゅんとする。
「これは……?」
床にこぼれた光の水は、どんどん光を失っているのに、一箇所、光続けている。
それは欠けた青い鉱石の周りだった。
ドワラゴンが拾い上げた鉱石をじっと見つめる。
それは、淡く輝く小さな欠片だった。
「……待て。気がつかなかった。魔力を封じ込めるんじゃなくて、循環させる鉱石なら、一つだけ、あったな」
彼はそれを小さな器に入れ、光の水を注いでみた。
すると――
「……消えない?」
ウチャが目を丸くする。
確かに、今までと違い、光の水は輝きを失うことなく、そのままの状態を保っていた。
「これは……やっぱり。ルミナ鉱石か!」
ドワラゴンが驚きの声を上げる。
「ルミナ鉱石?」
「魔力を循環させる性質を持つ希少な鉱石だ。循環するだけじゃなくて、わずかに増幅させる性質もあるから、循環によって失う分を補うことができる。
これなら、光の水を維持できるかもしれん!」
「やった! これで光の水が消えずに済む!」
僕たちは喜びを分かち合ったが、ドワラゴンは渋い顔をしていた。
「だが問題がある。このルミナ鉱石は、もうほとんど残っていない」
僕はポシェッタに手をかけ、複製できないか試したが……
「……ダメだ。鉱石は複製できない」
ポシェッタの能力は水や単純な物体の複製には向いているが、魔力を持つ鉱石や金属のようなものは再現できないのだった。
「細かく砕いて粉にして、作れたとしても小瓶が50個ってところだな」
結構作れるんだな。でも……
「これでは街の人々を救うには量が足りない」
「そうだな。研究所のメンバーを守るので精一杯の量だ」
「ないよりいいよ。僕たちは、スキルの主、ジェッピを倒す。そうすれば隷属のスキルは解放される」




