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王立遺物鑑定官《レリック・アプレイザー》の事件簿  作者: ぽねこ
勇者パーティ殺人事件

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第4話 第一発見者

第4話 第一発見者


「……最初に気づいたのは、戦士です」


一歩。

床板がわずかに鳴った。


俺は振り返らないまま口を開く。


「その時」


視線だけを戦士に向ける。


「静かだった?」


「……はぁ?」


露骨に眉をひそめる。


「なんだそれ」


「叫び声とか、物音とか」


淡々と続ける。


「何か、聞こえた?」


戦士は一瞬、言葉を探すように口を開け、

すぐに不機嫌そうに閉じた。


「……何もねえよ」

「倒れてたのを見つけただけだ」


「本当に?」


「嘘つく理由があるか?」


ぴり、と空気が張る。


魔法使いが低く言った。


「確かに……妙ね」


戦士が舌打ちする。


「は?」


「魔力よ」


彼女は部屋の周囲を見渡しながら言った。


「勇者は、常に膨大な魔力を循環させているのよ。死ねば、それが暴れるはず。

戦場なら、周りを巻き込む程よ……ここはまるで何も無かったみたいだわ」



俺は、勇者の遺体に目を向けた。


「そうだね、噛み合わない」


「偶然だろ」


戦士が吐き捨てる。


「そう思いたい」


俺は一歩、遺体に近づいた。


「だから、確かめてみる」


「──ちょっと待ってください」


僧侶が、はっきりと声を上げる。


「部屋全体に、魔力を流す気ですか!?」


「正気?」


魔法使いも即座に言った。


「そんな事をしたら……一体、何が起きるか……」


「分かってる」


短く答える。


「だから、俺が呼ばれたんじゃないかな」


返事はなかった。


俺は手をかざす。


微量の魔力を、部屋全体へと行き渡らせる。


──遺物の声。


音ではない。

言葉でもない。


残滓。

痕跡。


勇者が、確かに“ここで終わった”という証。


だが──


「……暴れていない」


叫びも、抵抗も、断末魔も。


まるで、

火が燃え尽きる前に

芯だけが、静かに抜き取られたような。


俺は視線を落とし、装備を一つずつ確認する。


剣。

鎧。

護符。

薬包。


一つ、戻る。


もう一度、順に。


指が装備の縁をなぞる。

確かめるように。


そして──

止まる。


「……おい」


戦士が顔をしかめる。


「何探してる」


俺は視線を落としたまま答えた。


「本来、ここにあるはずのものが」


一拍。


「……足りない」


戦士は口を開きかけて……止まった。

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