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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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73.大盛り上がり



 (せっかく王宮まで戻って来たんだし、魔境にも行っちゃおう!)


 学園は王都郊外なので、往復がちょっと面倒くさい。だからせっかく来たならついでに仕事を全部終わらせてしまいたいのだ。


「レンツァー師、どちらへ?」


 (ぎくっ!)


 見つからないようにそっと行くつもりが、アズーラ中尉に見つかってしまった。

 最近キアラ関連で振り回されまくっている副官は、段々上司の動きを読めるようになってきたのだ。


「……ぃぇっ、ぁのっ、調査に、行ってきますっ!」


「こんな夜中にですか? 今日は夜会に出て疲れていらっしゃいますから、せめて明日の朝にしてはいかがでしょうか」


 アズーラ中尉の言うことは最もだけれど、それだと玉座にいる時間が短くなる。

 魔族たちのためにも、早く行ってあげたい。


「……ぇっと……夜の、調査です……」


「はあ、分かりましたよ。許可も出ていることですから、これ以上は言いませんが!

 最近のレンツァー師は、無理をし過ぎです。

 魔族に捕まったことも、忘れたわけではありませんよね!?」


「……はぁぃ」


 おばあちゃん以上にお小言の多い副官に適当な返事をしてから、キアラは魔境へ向かった。



 〈魔王さま〜!!〉


 魔境の上空をアシェの翅でぱたぱた飛んでいると、うさぎ耳の少年の姿をした魔族が迎えに来てくれた。


 〈……久しぶり。この前は、ごめんね〉


 〈いえいえ、とんでもございません!

 早速お城に向かいますね!〉


 〈うん、よろしく〜〉


 彼は空を飛ぶのがとても速いので、送り迎えをしてくれるととてもラクなのだ。


 〈ねぇ、ザン! 魔王さまだよ〉

 〈ダン、そうだね。魔王さま、おかえりなさい〉


 〈お待ちしておりました、魔王様。

 ぜひ玉座へどうぞ〉


 もはやお馴染みになったメンバーが迎えてくれて、キアラは少し安心出来る。


 〈ねぇ、魔王さま? 勇者を、支配下に置いてるって、ほんと?〉

 〈ダン! それ、ザンも気になってたの!〉


 〈わたくしも、聞きましたわよ? 魔王さまがいらっしゃるのに、勇者は魔族を攻撃したとか〉


 いつもは黙っている雪女まで、身を乗り出して聞いてくる。


 〈……ぅん、そう、だね〉


 〈やっぱりそうですよね! しかも、ボクあの後も見てたんですけど、勇者が魔王さまのことを心配しているようでしたよね。

 ボク、感動しました!〉


 〈勇者を支配下に置く魔王様、素敵ですわ〜〉


 何となく誤解されているというか、誇張されすぎているような気もするけれど、概ねそれでいいや、とキアラは修正を諦めた。


 魔族が勇者を殺そうとしなければ、とりあえずはそれでいい。


 〈……ニンゲンにも色々あるから、私が魔王だって、言ってないの。

 だから、これからも、この前みたいなことがあると思うけど、協力してくれない?〉


 〈はい、もちろんです! ボク、頑張りますよ!〉


 うさぎ少年はやる気満々だ。


 〈お城に来るまでには絶対に止めるし、攻撃はするけど怪我はさせないから、戦うフリだけして欲しいの。よろしくね〉


 〈ダン、私たちも、出来るよね〉

 〈うん、ザン。頑張ろうね〉


 でも、キアラの言葉で納得する者だけではない。


 〈しかし、魔王様。

 過去にはニンゲン共と手を組もうとした魔王も居ました。

 ですが、ニンゲンは酷く残忍な生き物です。

 約束など簡単に破り、結局魔王様は殺されました。

 信用してはなりませんぞ〉


 〈確かに、そうかもね〉


 ニンゲンが簡単に約束を破る事とか、友だちだと思っていても憎しみの目を向けられることとか。

 キアラは嫌という程知っている。


 だからこそ。


 〈手を組むのは、難しいかも。

 でも、今の状態を、長く続けることは、出来るかな、って。

 魔族の領域を、すぐにめちゃくちゃ広げる必要は、ないでしょ?

 だから、このまま居たいな、って〉


 〈なるほど。しかし、油断なさいませんよう、お願い申し上げますぞ〉


 〈……ぅん。ありがと〉


 人間の意思決定は難しい。

 でも、魔族のみんながキアラの意見に賛成してくれたことが嬉しかった。



 それからしばらくして。


 〈魔王様、このゲーム、面白いですね!〉


 魔王城の玉座の間が、今までにないほどの盛り上がりを見せていた。


 〈そうでしょ? やった、私の勝ち〜!〉


 カードをパッと散らして、キアラが勝ち誇る。


 〈ねぇ、ザン! 負けた! なんで!?〉


 ダンはもうこれ以上ないほど悔しそうに床を叩いているのに、それを見たザンが指さして笑う。


 〈あはは、ダンは、弱いなぁ〉


 〈ねぇ、ザン! もう一回やりたい!〉


 〈もう1回やりましょう! ボク、次は勝ちますよ!〉


 うさぎ少年もやる気満々で、またカードを集めて配りなおす。


 なぜこんなに盛り上がっているのかというと、キアラがクラスメイトから教えて貰ったトランプを持ち込んだのだ。

 キアラも最近まで知らなかったのだけれど、エルデがやっているのを見ていたら仲間に入れてくれて、ルールを教えて貰ったので。


 魔王城の魔族たちは長く生きているというけれど、玉座の間で何をする訳でもなくウロウロしていたから、一緒に遊べるんじゃないかと思って持ってきたら、大当たり。

 ワイワイとみんなで盛り上がっていた。


 今はザン、ダンとうさぎ少年で遊んでいて、それぞれ勝ったり負けたりと大忙しだ。


 一緒に遊んでいるとみんなの笑顔がいつもより眩しくて、持ってきて良かったな、と思うキアラだった。


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