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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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91 サイドリーズディシア

 「リーズディシア様・・・・・・」


 夜の帳が落ちかけている戦場で、対岸の相手陣地に灯がともり始めている光景を眺めていた私の名を呼んだのは、フェンデルトンの陣にアドレア伯爵家の一軍を預けるよう掛け合ってくれた、エルフィンだった。

 寄り子とはいえ、フェンデルトン家に完全に指揮権を渡すよう根回しをさせるなど、いかに仲の良い家とはいえ、彼女には、無理をさせたものだ。

 まぁ、彼女の成長の為だ。

 私の腹心として。

 そんな役割でも、担ってもらわねばならない。


 「夜風はお身体に響きますよ」


 「戦場では、どこにいても一緒よ」


 私はそう嘯きながらも、


 「でも、ありがとう」


 そう言って、エルフィンを労った。


 「お陰で、フェンデルトン軍は、二千の兵を得たわ」


 「いえ」


 フェンデルトン家が用意した兵士が千五百に、寄り子の家の兵士が五百。国王陛下から送られてきた王太子殿下の率いる軍が五千と考えると、それなりの形になった。

 チュント大公国の方にも軍を差し向けているから。

 辺境伯家で用意された兵士が三万、全軍で四万。

 それでも。

 相手が敷いた陣を見るに、十分すぎるほどの量だ。

 とりあえず、見る限りでは。


 「相手は二万五千。この差を見て、引き返してくれるでしょうか?」


 「それは無いでしょうね」


 私は即座に、エルフィンの言葉を否定した。

 いかに戦力差が有ろうと、一当てもせずに帰るという事は、まずありえない。それに、あの陣の背後に教国が控えているのだとすれば、戦力としては互角だ。

 異教徒を誅すと号して出てきた軍なら、尚更だろう。

 根本的な部分で我々とは違うのだ。

 奴らは、教義の為ならば、人間だろうとなんだろうと、何をやっても良いと思っている。その辺は、知性がある分、魔物よりもたちが悪い。

 負ける事はすなわち、レイプや強盗の横行に繋がる。

 彼等に言わせれば、彼等の教義に反する人間ならば、どんな非人道的な事を行っても、神の聖名に於いて許される。

 それだけは、させる訳にいかない。

 見ていろ、狂信者ども。

 私がもたらした戦法は、強いぞ。

 身をもって思い知るがいい。


 「行きましょうか、エルフィン」


 「はい」


 私は決意を新たに、踵を返した。


 ※


 とはいえ。

 アンザス王国の兵が弱いとは言えない。

 あの国には、強力な弓兵団が居る。

 乱戦になれば、こちら優位で戦況は固まるのだろうが、虎の子の回復術師が接近するまでに討たれてしまうと、非常に都合の悪い結果に終わる。見抜かれないように動かねばならない。

 その辺は義兄様にも伝えてあるが、


 「現実的な運用法は、考えてある」


 というのが、答えだった。

 無論、全軍が集結した時に、それは伝えられた。

 さて。

 この運用方法が、上手く効果を発揮してくれるか。

 ストーニア西部を流れる川の唯一の渡河ポイントを渡ってくる敵兵を迎え撃つために開かれようとしている陣の門を目の端に収めながら、私は馬上で一人、握りしめたこぶしを見つめた。

 そこに、王太子殿下が馬を寄せてくる。


 「リズ」


 「殿下」


 「前線に出る事になるが、怪我には気を付けろよ」


 「はい。殿下もお気をつけて」


 「ああ」


 王太子殿下が、私の頬に手を添えて下さった。

 心配してくださっているのですね。

 大丈夫ですよ。

 私は将来の王妃です。

 護衛がしっかりと、私を守って下さります。

 殿下こそ、前線に近い所まで行くのですからお気をつけて。

 そして、


 「ミリーネも気を付けるように、殿下の方からお伝えいただきたく」


 あの子も無事に帰還できる様、殿下にお願いをしておこう。

 癪に障るが、あの子も王太子殿下の愛する娘だ。

 喪う訳にはいかない。


 「分かった」


 王太子殿下が、歳相応に、ニカッと笑ってくださった。

 私も、絆されたものだ。

 この笑顔に、弱いのだ。

 成長してから、ついぞ見る事が叶わなかったが、ここに来て拝むことになるとは思わなかった。ミリーネの存在が、王太子殿下をこうさせていると思うと、思う所も無いではないが、まぁ、良しとしておこう。

 あの子も、王太子殿下にとって必要な存在であるという事は、認めなければならないな。

 だからこそ、


 「ご存じの通り、光の魔術師は教国にとっては聖者の証拠です。奪いに来るのは今からでも解りきった事。出来るだけ光の魔術は使わないよう、あの子には言い含めておいて下さい」


 分かっていても、忠告をせざるを得ない。

 無論、


 「分かっている」


 王太子殿下も分かっているので、そういう返事が返ってくるのだが。

 馬を返して去っていく王太子殿下の背中に、私は一礼をした。


 「フェンデルトン軍、前へ!!」


 その号令の下、私は馬を前へと進ませる。

 さぁ。

 戦の始まりだ。


 ※


 戦いは、アンザス王国軍が八割程度渡河してきた辺りで始まった。

 まぁ、敵にしてみれば渡河せず対峙したままでは物資を食いつぶすだけだから、用意が出来たら背水の陣だったとしても渡ってくるのは当然だし、渡河の途中で叩くというこちらの戦法も当然の事だから、ここでぶつかるのは自然と言えば自然と言える。

 本当に自然な形で、戦端は開かれた。


 「行け!!行け!!急ぎ敵陣に喰らい付け!!機動力を活かし、突撃しろ!!弓兵の狙撃には気を付けて、急げ!!」


 味方指揮官の命令に従い、私も馬を駆った。

 途中、矢が飛んでくるが、騎士様が叩き落せるような威力のものばかりだったので、私は矢の脅威に晒される事なく、敵陣に突撃する事が出来た。

 途中、五名ほど矢に射られた騎士様が居たので、回復魔法をかけて、突撃を支援しながら。

 私の周りに、死者は出ていない。

 見渡しても、被害はほとんど出ていないようだ。

 これならいける。

 私は騎士様に回復魔法をかけながら、心の中で拳を握った。


 「リーズディシア様、気を付けてください!!」


 騎士様のリーダーが、私と敵兵の間に身体を入れて、射線を切る。キンッと音を立てて、矢を落とした。

 そして、


 「三名はリーズディシア様の護衛に残れ!!残りは敵兵を狩れ!!」


 そう言って、フォーメーションを整える。

 これなら。

 いける。


 「深く敵陣に入る必要はありません!!私の部隊は、この場所を堅守!!前線に出ている部隊の支援に回ります!!」


 周りを広く見て。

 回復魔法の使い手がやられていないかを、冷静に観察して。

 私は支援に徹底する。

 出来る事をやって。

 味方を鼓舞する。

 私は、味方が私たちの部隊を追い越していくのを見ながら、戦争の勝利の手ごたえを感じた。


お読みいただき、ありがとうございます

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