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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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90 急ぎです

 「ではアイリ」


 「はい」


 「出征は、急ぐか」


 「そうですね。ホムンクルスだけを伴って、今夜にでも出ようと思っています」


 「フェンデルトン家の騎士を百名ほど与えようと思っておったが、それさえも要らぬと申すか」


 「脚が鈍ります」


 「鈍らぬような者たちであれば、良いのだな?」


 「出立に間に合えば」


 「わかった」


 帰りの馬車に揺られながら、つくづく、孫娘に甘い爺様だと、私は思った。

 曾祖父様の生い立ちやこれまでの人生を考えれば、私に出立を遅らせるよう命令する事だって思いつくだろうに、それをしない。

 傲慢さなど、欠片も見せない。

 それどころか、


 「間に合うよう、手配しよう」


 私に合わせようとしてくる。


 「今夜、発ちますよ?」


 「任せよ」


 「ストーニアまで、十日です」


 「馬でも無理な速度だぞ」


 「自走で、行きます」


 「分かった。お前の要望に合うような部隊を、整えよう」


 私の無茶な要求さえ通してくれるようだ。

 つくづく、


 「孫に甘い爺様ですね」


 「褒めとるんか?」


 「半分は呆れています」


 こんな、私情を挟んでくる重鎮が居て、この国は大丈夫なのかと、心配にもなる。まぁ、王権が確固たる力を持っているからこそできる事ではあるのだろうが。

 現に、王権を支えるこの曾祖父様に異を唱える者は居ないのだろう。


 「爺様」


 「なんだ」


 「西や東との同盟を重視するような、穏健派の貴族などは居られないのですか?」


 「居るには居るが、今の情勢を考えるに、相手の強硬な姿勢からして、同盟を声高に唱える者は国政から弾かれるな」


 封建国家の、良い所と言えば、良い所なのだろうな。

 元の世界にも、民主主義を唱えながらも、実際は金持ちしか政治に口を出す事が出来ないような仕組みになっている国もあったし。国民の声をすべからく聴くなどと言いながらも、少数の意見を聴くために、政治が混乱するような国もあった。

 日本だって、金と票を集める事が出来れば、どの様な思想を持っていようが、政治の中枢に入り込む事が出来た部分もある。

 足並みを揃えて国家が一丸になる事が出来ない。

 必ず反対勢力が出てきて、足を引っ張ろうとする。

 民主主義の悪い所だ。

 それだったら、反社会勢力が権力を握る事の無い封建社会の方がまだマシとも言えるのではないだろうか。

 国主が、国家国民のための政治をやっている限り、だけど。

 もっと言えば、貴族が国家国民を想って国主を盛り立てている限り、だけど。


 「今は、シンフォース王国の内部は安定しているのですね」


 「そうだな」


 「何故、今の安定しているこの国に、東も西も、攻撃を仕掛けてきたのでしょうか」


 「さてな。盤石であるからこそ、外の国の目には脅威に映ったのかもしれん」


 安定した大国であるからこその、悩みという奴か。

 内部に足を引っ張る者が居なければ、外部が、という事か。反映していたら足を引っ張られ、衰退を見せれば付け込まれる。

 本当に。

 面倒な事だ。


 「同盟などは、結ばないのですか?」


 たしか、学院で習った内容だと、南方の小国家同盟とは結んでいるが、西、東の大国とは結んでいない。どちらかとでも同盟関係にあれば、もっとこの国は安定するのではないだろうか。


 「南方以外とは、結ばんだろうな」


 「何故です」


 「西からは宗教が入ってくるし、東からは特有の官僚文化が入ってくる」


 「デメリットが大きいと」


 「そして、仮に同盟を結んだとしても、本当に信の置けるものにはなり得ないという点も、同盟を結ばない理由の一つだ」


 価値観が違い過ぎる。

 曾祖父様は、そう言って馬車の中で座り直した。

 そうか。

 この国の国交の状況は、例えるなら、古代ペルシャの様な立ち位置に居るという訳か。西にローマ帝国があり、東に中華の帝国があり、その間に挟まれる形の一大国家という訳だ。私が生きていた時代の感覚で国家の同盟を語ると、かなりおかしな事になるのだろうな。

 そこまで詳しくはないが、文化的な交流はあっても、物の往来はあっても、それはごく少数で、どの大国も、独自の文化を形成しているのだ。

 なるほど。

 私が最初に思った十字軍という例えも、あながち間違いではなかったようだ。

 となると、だ。


 「爺様」


 「なんだ、アイリ」


 「所変われば品代わる、と言うように、やはり西側もシンフォースとは違った戦い方をしてくるのでしょうか?」


 東が歩兵中心の戦い方だったように。


 「そうだな。弓兵には気を付けろ、といった所だな」


 「弓に特徴があるのですね」


 「うむ」


 この世界にバリスタという兵器が存在しないのは、レベル次第ではバリスタを超える飛び道具を使う弓兵が存在するからだ。

 そこに特徴があるという事は、飛び道具で相手を制圧するような、高レベルの弓兵団が存在するという事になる。

 弓兵、か。

 ゲームの世界では弓使いは多かったが。

 この世界に来てから、この国では魔術が弓の代わりになるから、見る機会が減ってしまったが。

 対応策も、同様で良いのだろうか。

 矢は、叩き落せばいいのだろうか。

 ゴブリン騒動の時、レベル600の弓使いが居たのを見たから、ある程度の予測ができるが、仮に私と同レベルの弓使いが居たとしても、叩き落せるのは叩き落せるとは思うのだが。運用が、一方向からの斉射になるだろうから、軌道を予測しやすい分、数本程度なら同レベル帯でもそれほど脅威にならないとは思うのだが。

 それでも気を付けろと言われれば、気を付けるんだけどね。


 「気を付けます」


 私は曾祖父様にそう言った。


 「アイリ。お前は、跳ぶらしいではないか」


 「跳びますね」


 「なら、尚の事、気を付けねばなるまい」


 「そうですね。気を付けて跳ぶ事にします」


 足場をたくさん作り、狙いを定めにくくしますよ。


 「跳ぶな、と言いたいところではあるが」


 「それは、鳥に飛ぶなと言っているも同然ですので」


 「左様か」


 「はい」


 大丈夫ですよ、曾祖父様。

 跳んで戦う事は、私の基本戦術です。

 弓による狙撃も、当然頭に入っております。

 カンストした連中が集まる戦場でも、滅多に後れを取る事の無かった私です。

 この世界で、そうそう後れを取るような事はありませんて。

 さ。


 「フェンデルトン邸に着きましたよ、爺様」


 止まった馬車の扉を見ながら、


 「約束の人員、よろしくお願いします」


 私は曾祖父様にそう言った。

 この王都に居る騎士様では、私の望む人材が集まる事はあるまい。

 フェンデルトン公爵領に念話を飛ばし、人員確保に努めてくださいな。


お読みいただき、ありがとうございます

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