表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された「帳簿の令嬢」は、十年分の記録で王国を詰ませる  作者: 青雨あき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/16

第三話 男爵令嬢の後ろにいるもの

監査請求が受理されるまでの十日間、社交界は「悪女エルディア」の噂で持ちきりだった。

曰く、嫉妬に狂って可憐な男爵令嬢を虐めた。曰く、殿下に捨てられて逆恨みしている。


「お嬢様、よろしいのですか。あんな噂を放っておいて」


 マーサが悔しそうに紅茶を注ぐ。わたくしは頁をめくる手を止めない。


「よろしくてよ。噂に反論すれば水掛け論。ですが監査は、数字ですもの。それより、頼んでいたものは?」


「はい。『銀の百合』の納品記録の写し、商業ギルドの登記簿、それと――ミレーヌ様の御実家、ハトフォード男爵家の借用証書の情報です」


 三つの書類を机に並べる。ばらばらだった数字が、線でつながっていく。


 ハトフォード男爵家の借金、九百万リル。返済期限は三年前に切れているのに、差し押さえの記録がない。債権者はモルダート商会。同じ商会が出資する宝飾店に、王太子府から三倍値の支払い。差額の行き先は――。



「殿下は、貢いでいたのではありませんわね。貢がされて、その金を吸い上げられていた。ミレーヌ様は餌。釣り針は借金。釣り糸の先は、隣国」


「では、ミレーヌ様は間諜だと……?」


「さあ。彼女自身は何も知らない可能性もありますわ。実家の借金のために『王太子に気に入られなさい』と命じられただけの、哀れな駒かもしれない」


 そのとき、窓の外で馬車の音がした。マーサが確認に走り、青い顔で戻ってくる。


「お嬢様……ミレーヌ様が、お一人で、いらしています」


 玄関ホールに降りると、彼女は雨に濡れて立っていた。


パーティーで見た愛らしい仮面は剥がれ落ち、そこにいるのは、追い詰められた娘だった。


「エルディア様……助けて、ください。わたし、監査が入ったら、殺されます」


 わたくしは扇を閉じた。


「上がってくださいな。お話は、記録を取りながら伺いますわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ