第137話 クラスの雰囲気の変化
半月ほど魔物の森で過ごした我々だったが、何とか無事に合宿も最終日となった。あの日、崖から飛び降りた勇敢な皇太子とクリスは、当然ながら皆に一目置かれる存在となっていた。
これまで遠巻きにして、我関せずと距離を取っていたクラスメイトも、クリスの『虐めていた相手を許し、危険に向かう器の大きさ』に賛辞を送り、ウィルもまた『幼いクリスをサポートするために、崖から一緒に飛び降りた英雄』として、尊敬の眼差しで見られるようになっていたのだ。
「半年も一緒にいたのに、今さらっていうか……不思議な感じだよね」
キャンプファイヤーの火を眺めながら、代わる代わる訪れては褒め称えるクラスメイトに、クリスが驚いている。
「噂なんてあてにならないって、分かったんじゃない? これまではアボットたちに撒かれた噂に翻弄されていた者たちが、目の前で起こったことに素直に反応したんだと思う。人の感情なんてそんなものさ。ほら、クリス。マシュマロを焼いたからお食べ」
ルシアンが苦笑いしながら、串に刺さったマシュマロを口に運んであげている。ニコニコと喜んで食べるクリスに、ウィルは一つため息をついていた。
「そろそろ、本格的に動かなきゃダメかな……」
今回、注目を浴びてしまった二人のことを言っているのだろう。ウィルは婚約者が決まっていない。クリスも、今は女性だとは気づかれていないから、明日からは釣り書きがガルシア公爵家宛てに大量に届くだろう。
「ウィル、夜に時間を空けられるか?」
「ああ、大丈夫だよ。レオンからなんて、珍しいね。深刻な話かい?」
「そうだな。七年生もあと数カ月しかないからな。色々と……次年度の準備が必要だろう」
「次年度? 想像がつかないが、ここでする話ではなさそうだね。今日は公爵家に泊まろうかな」
「ああ、そうしてくれ。ルシアンもいいか?」
「うん、合宿が終わったら、具体的に話すって言ってたもんね。面倒な話は、早めに終わらせるに限るよ。明日から三日間は学園も休みだし、うちでのんびりしながら話をしようか」
何の話をするのか分からず、少し気になっているが気にしないふりをしているウィル。この合宿を通して随分と成長した彼を、周りが認め始めていることは、俺も感じているのだった。
★★★
一週間ぶりに帰ってきた公爵家に安心した皆は、ソファなどにぐったりともたれかかっていた。やっぱり、居心地のよくなった公爵家は落ち着くな。
「今日はウィルもお泊りなの? やったー!」
大事な話し合いなのだが、クリスにとって喜ぶポイントが違うらしく、ウィルが泊まることに喜んでいた。
「今日はもう遅いから、遊ぶのは明日にしようね、クリス。いつもより遅くまでキャンプファイヤーが行われていたから、すでに眠いんじゃない?」
「うん、ちょっと眠いかな……」
意識したからか、クリスはあくびを噛み殺して苦笑いした。
「そうだな。俺も疲れたから、風呂に入ってから休むとするか」
「そうだね。ウィル、明日いっぱい遊ぼうね!」
俺とクリスは先に部屋へ戻る。風呂と寝る前の準備を終えてベッドへ潜り込んだクリスは、一瞬で眠りについたのだった。




