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小さな光と、その軌跡 ―隠された幼子と神獣の物語―  作者: 月城 蓮桜音
第二部

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135/156

第135話 ハヤブサの勝利 ★ウィリアム side

「ピッピ! 行くよー!」


 クリスが走り出そうとした瞬間、僕は計算を始める。先ほどの説明で、テント場は標高二千メートル弱だと言っていた。二時間歩いたなら、最低でも五百メートルは上がっているだろう。二千五百メートル――落下は二十秒台。姿勢次第で三十秒近い。だが……躊躇したら追いつけない。なら、僕は速度を出す。真っ直ぐ“刺さる”――ならば間に合う。


「チュン、お願い! 手伝って!」


 僕も瞬時に走り出した。崖の手前でチュンと並ぶ。頷いたチュンに笑顔を向ける。

 

 ――大丈夫だ。計算は合っている。

 

 それでも、足元の空白は、覚悟を試すには十分すぎた。僕は迷いを切り捨て、飛び降りた――。


「チュン、急降下して! 僕を振り落とすつもりでいいから! クリスより、早く!」


 巨大化したチュンは、ハヤブサの姿になっていた。翼の付け根に指をかけ、膝でチュンの体を挟むようにしがみつく。できるだけ抵抗をなくして急降下しなければ間に合わない。ピッピは巨大化しても『(ふくろう)』だから、ハヤブサのスピードには敵わないはずだ。これで、クリスがイーサンを受け止める必要はなくなる。


 だが、すでに十秒は経っているはずだ。風が全身を叩きつける。呼吸をするたびに、胸の奥が軋んだ。それでも手を離すわけにはいかない。この速度で落ち切らなければ、意味がない。急降下しているからか、時間が長く感じた。


 そして、やっとイーサンを目の前に捉える。


「チュン、僕が受け止める! 五秒後に翼を広げて!」


「うぎゃぁ――――――!」


 バタバタと手足を動かしながら叫ぶイーサンが近づいてくる。ふと横に並んだ瞬間、僕を認めたイーサンが、「た、だずげで……」と、声にならない声で(すが)る。


 影が、急速に大きくなる。風の音が変わった。もう、誤差は許されない距離だ。


 ――――地面はもう間近だった。

いつもお読みくださり、ありがとうございます!

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