第129話 秋の合宿と、新たなチーム
新学期の二日目は、実技しか受けない俺たちも合わせた同学年が、一堂に集められた。とはいっても、ジョセフが開発した動画機に向かって説明している内容を、各クラスで一斉に見ているだけだったが。
「ですので、参加する生徒は申請書を提出してください。参加ルールは、改めて担任の先生から説明があると思いますので、質問はその時にお願いします。以上、秋の合宿の説明を終わります」
動画が終わると、皆が一斉にざわざわと騒ぎ始めた。ざわつく声の中に、『推薦』という単語が何度も混じっていた。
「騎士や魔導師の卵に有利な制度か?」
「本来の考え方はそうだよ。簡単に言えば、国に認められる実力があると証明される証がもらえるから、それが目的の生徒も多いかな」
「なるほど、己の格が上がるのか」
「そういうこと。例えば、騎士の中でも『近衛騎士』になりやすかったりするし、婚約に有利だったりね」
「では、そなたたちは参加するのか?」
「そうだね、私たちは参加する予定だよ」
ふとクリスを見ると、やはり目を輝かせている。クリスの行動を制限する気もないが、目立たないでほしいと思うのは……。双子もアリシア嬢も困った顔をしているから、クリスが参加することを認めざるを得ないと思っているのだろう。
「クリス、一緒に頑張ろうね!」
おっと、ウィルも出る気満々なのか……。まあ、ウィルのことだから、クリスがやりたいという意思を尊重して、ダメとは言わずに『僕が守るから一緒にやろう!』となるのだろうな。
「俺もいるから大丈夫だ」
双子とアリシア嬢にシレッと言うと、三人は苦笑いして頷いてくれた。危険だからとクリスだけ参加させない理由には無理があるしな。この大陸で一番強いのはクリスなのだ。経験値の高いジョセフたちも当然強いのだが、単純な火力だけでいえば、クリスに敵うものはいない。
「チームは九人で組むのか。双子、ウィル、クリス、アリシア嬢、ヘンリー、俺……あと二人か」
「あ、あのっ!」
「ぼ、僕たちを入れてもらえませんでしょうか……」
低姿勢で頭を下げてきたのは、リタを目で追っていた二人だった。彼らも精霊が気になっているのだろうか?
「えっと、君たちは……。そちらの彼はローデンベルクの嫡男じゃなかったかな。たしかカイルくん」
「はい、そうです。我がローデンベルク伯爵家は、ラターナ伯爵領の隣領になります。ジョセフ様とジョエル様には、私の両親が若い頃にお世話になったと聞いております」
「ほお、ジョエルの領地の隣か。面白い繋がりだな」
「たしかに、そうだね。そちらの彼は、カイルくんの友達かい?」
「あ、はい。僕はノア=ノクティスです。カイルとは幼馴染で、僕は魔法を、カイルは剣を扱うのが得意です」
「ノクティス伯爵家の次男のノアくんかい? たしか……西の辺境伯閣下と……」
「あ、はい。辺境伯閣下とも、彼女のお兄様とも面識があります」
ノアはアリシア嬢に軽く頭を下げた。アリシア嬢も優しく微笑んでいた。悪いイメージはなさそうだな。
「うん、君たちなら是非、一緒にチームを組みたいよ。ただ、約束してほしいことがいくつかあるんだけど、ちょっといいかな?」
ルシアンが、彼ら二人を教室の隅へ連れて行き、コソコソと何か条件を伝えようとしているようだ。気になった俺は、こっそり聞き耳を立てる。
「君たちをチームに入れる条件は二つだ。まず一つ目は、アリシア嬢に近づきすぎないこと。このチームでレディはアリシア嬢だけだろう? 近づきすぎて怖がらせてはダメだよ。あとは……君たち、精霊が見えているよね。仲良くなったとしても、口外しないこと。特にクリスの精霊については、絶対にね」
「も、もちろんです! 僕たちは、初めて『動物に擬態』している精霊を見ました。それも四匹も……。絶対に外では口にしないと誓います!」
「私も誓います。彼らは特別な存在でしょう。お役に立てるかは分かりませんが、誠意を持って――」
「ああ、それは普通に接してやってほしい。クリスはまだ六歳で幼いだろう? あの無邪気さを、今はまだ守ってやりたいんだ」
「「かしこまりました」」
二人は大きく頷き、礼の姿勢をとった。
「ふふっ。私たちには敬語じゃなくていいよ。私たちは立場上、知らない者には牽制することが多いけど、仲間には甘いんだ」
優しく微笑んだルシアンに、二人は肩の力を抜いた。新たな仲間も増え、わいわいと進めていく合宿の準備はとても楽しそうだと、目をキラキラとさせているクリスとウィルを微笑ましく眺める。
行き先は南の魔物の森。魔物は弱いが、地形が複雑で、とにかく広いらしい。
――合宿は、ここからが本番だ。
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