十五話、会話できない奴は意外と多い
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◆◇◆
メリーは今、牢屋にいる、
あの後、激怒した王は騎士へと命じたのだ。牢屋に入れとけ、と。
メリーの目論見『時間稼ぎ』の経過は順調。あとはアルスター様の救出を待つしか出来ない。
部屋には小さな穴と薄い毛布のみがある。メリーは寝る気にもなれない、ここでトイレをしたいとも思えなかった。
――――うん、脱出しよう。
「……この程度なら」
メリーは呼び出す。己の魔装を。
魔力封じの腕輪はあるが、魔装は魔力に関係なく呼び出せるのだ。
「やあ、助けに来たぜ」
「……?」
その時、目の前に何処かで見たような気がする男がいた。妙に綺麗な件を腰に持った男。
名前は忘れた。
「僕の名前はオーサー、といっても知ってるよね、あはは」
知らない。メリーはこの男と同じ場所にいた時、眠っていたのだ。
「僕は君をあの屋敷から連れ出したんだぜ?」
メリーの表情が固まる。
「……何故」
「ん? なんでっそりゃあ……君を助けるためだぜ」
オーサーは不思議そうな表情を浮かべる。彼の脳内ではメリーを助けたことになっているらしい。
「助ける……?」
「??? 苦しかったんだろ? 分かるよ、だけど信じてくれ、僕は味方だぜ」
「貴方は何を言ってるのですか」
致命的に前提情報がズレている。目の前の人物と徹底して話が、価値観がかみ合っていない。
「私は、あなたに助けを求めましたか?」
「あれ? 求めてなかったっけ? なんか、似たようなこと、言ってよね?」
言ってない。と、言う以前にメリーは彼と初対面である。言葉を交わしたことすらない。
「私は、あなたに助けを求めた覚えはありません」
「目が言ってたよ……大丈夫、僕は味方だぜ」
お前の眼大丈夫か。とツッコミをしても許されそうな状況だった。
「それに奴隷の首輪も僕を信じろ。頑張って交渉してミリッジの阿保から君を守るぜ……僕が君の新しい所有者になってあげる」
「は……?」
――――|アルスター様との繋がり《奴隷の首輪》の、奪う……?
「だから――――」
「ふざけるな」
メリーの語気が強まる。王族というのはこういうのしかいないのだろうか、と静かに……けれども深い怒りを宿していた。
流石にもう、我慢の限界が近い。
「……ねえ、僕さ。君を助けるために必死に王家の秘宝も持ち出したんだぜ?
なのに文句ばっかり言ってさ……はぁ…こっちも苦労も考えろよ……」
「貴方は、自分の自己満足に巻き込まれる方の苦労は考えないのですか?」
王族は露骨に態度が悪くなる。舌打ちすらしている。
「私は助けなど、一度も求めていません。
貴方が王家の秘宝を持ち出したのは貴方が勝手にしたことです。
貴方が勝手に行動したのだから責任もまた貴方のもの。これは社会常識なのですが、御存じありませんか?」
「はぁ? なぁ……僕がさ……助けてやるって言ってんだから、いい加減素直になれよ……!」
「会話が通じませんね……」
「会話してるじゃないか!!」
駄目だった。メリーは目の前の人物に心底失望する。
本当に分かってない。会話すら出来ていない。
メリーは言葉を紡ぐ。説明するのすら億劫であるが、その気持ちすら飲み込んで。
「私は先ほど、社会常識を知りませんか? と【問い】を投げました。
それに対して本来するべき応えは【質問に対する返答】……つまり、イエスかノーかの二択に限られます。
……貴方は、何と答えましたか?」
「は? それは……」
オーサーの言葉が詰まる。自分の言葉すら、覚えていないのだろう。思い付きで発現をしている場合、そのような状態になることが多い。
「分からないようですのでお答えします。貴方は『素直になれよ』と発言しましたね……不思議ですね、イエスでもノーでもない。
お分かりですか――――貴方は 会話すら 出来ていないのですよ?」
「…………屁理屈で話を誤魔化すな!! もういい! 帰るからな僕は!!」
オーサーは怒鳴りながら牢屋を後にした。
「……奴隷の首輪の、所有権……」
オーサーが去ってから、メリーは一人呟く。
オーサーは先ほど『新しい所有者』という発言をした。彼の性格上、本当のことである可能性が高い。
「……いや、だ……かえ、りたい」
◆◇◆ メリー視点。
初めて『この人の傍にいたい』 って 思えた。
傍にいるだけで こころが 安らいだ。
頭に 浮かべるだけで 胸が かるくなる。
だから 誰にも、邪魔 させない。
「――――エルの十三番に 接続……」
牢屋を 壊す? ううん、足りない。
城 ごと 壊してやる。
「【是…汝ヘ終焉ヲ刻ムモノ】
【是…我ガ渇望ニ及バヌモノ】
【是…原初ト終焉ヲ喰ラウモノ】」
キて。おね がイ
「【魔装顕現――――終焉ガ喜劇ヲ齎ス】」
【適合率 2%】
【魔装ノ 使用ニハ 60% 以上 ノ 適合率ガ必要 デス】
「………………………………え?」
どう して ?
【固有魔法 死神】
◆◇◆
「応えて 応えて、よ……なん、で。どう、して」
ポロポロと涙をこぼす。けれど、メリーは即座に拳を握りしめる。
「……ちが、う。嘆く、のは 違う。
考え、る……なんで、使えない か。
そう、情報、はある。嘆くのは 宗教信者 だけでいい」
情報を集めよう。そう結論し、メリーは情報の整理を開始する。
手段/第三者の構築。
――俺の知ってる所有者の場合は【導き手】の属性が一定以上――
――はい、私の魔装もそんな感じです――
過去に、固有魔法について話した時の言葉だ。このことからメリーは【前提】を手に入れる。
「魔装に、条件がある……」
『それは何?』
分からない。情報が少なすぎるゆえだ。
『ならどうする?』
「アプローチを、変える……」
メリーは過去。確かに魔装を使えた。確かに、使えたのだ。
『過去と現在、情報の整理。比較を推奨』
過去の、メリーはこんなことを言っていた。
――わたし、許可ないと、動けないの、だけれど……?――
――身の、振り方……かな――
この時、メリーは確実に固有魔法を使えていた。
では、何故、固有魔法が今は使えないのか?
――――この時のメリーから一体、何が消えた?
「…………命に対する、諦め……?」
瞬間、メリーの脳裏に衝撃が走った。
牢屋の灰色の床に、水滴がぽつり、と堕ちる。
薄暗い地下に人はおらず、壁に掛けられた蠟燭は火すら付いていない。
……寒い、とても寒い地下で。少女の小さな鳴き声が、切なく響いた。
◆◇◆
思えば、ヒントなどそれこそいくらでもあったのだ。
『メリー・バットエンド』
この名はメリーの魔装と同じ名前だ。メリーが自分で付けたのだ。
――――彼女に、名前を付けてくれるような人間がいなかったから。
『兄が、いたら……こんな感じ、なのかな』
これはアルスターと同じベットで寝ていた時の感想だ。
――――『恋人』や『交際相手』などではなく『兄』と表現したのは何故?
答えは単純――――メリー・バットエンドは『家族』と呼べる存在を知らずに育ったのだ。
メリー・バットエンドという少女の渇望、それは『家族愛の飢え』だ。
育児、それが彼女の人生には徹底して欠けていた。
『メリーの不良化』
虐待された子供は里親の元に行っても、すぐには信用できない。
自分が本当に愛されているかを確認するためにわざと迷惑を行う。それを『試し行為』と呼ばれるものだ。
――――メリーの試し行為を受け入れた瞬間、初めて『里親』として認識したのだ。
そしてだからこそ、固有魔法の適性が消えてしまった。
メリーは……生きる希望がある限り、魔装を使用できない。
「ぁ、ぁぁぁ……ぅ、ぁ、ぁ、ぁぁぁ……っ」
自覚した瞬間、彼女は恐ろしい密度の不安に囲まれた。
アルスターが傍にいない、それだけ、それだけでこの少女は泣き出してしまうほどに弱かったのだ。
「ぁ、ぁああっ、ぁ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーッ!!」
泣いても、泣いても。彼は来ない……だが。
「――――さて、どうしたものか」
化物は訪れた。
ちなみにメリーの会話云々ですが、アレには注意点が一つあります。
それは『状況を理解した上で会話の要点をずらす』という場合です。その場合、高確率で『相手はこの話題を避けたい』という合図なので、特に問い詰めずに別の話題しましょう。
じゃないと、嫌われます。




