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十四話、短パンニーソ短パンニーソ短パンニーソ短パンニーソ

◆◇◆

「…………」


 アルスターはコタツに入り、編み物をしていた。背筋は伸びており、普段から姿勢に気を付けていることが窺える(魔王)


「…………」

「…………?」


 アルスターは背後の気配に気づく。


「…………アルスター、様」


 アルスターは振り返る。背後には聖剣を手に持ったメリーがいた。


「聖剣を……室内で飼いたい、です」


 聖剣は今まで、裏庭で放し飼いをしていた。それを室内で飼いたい、と言い出したのだ。


「…………部屋に刃物を置いたら危険だ。裏庭に帰してきなさい」


 アルスターは聖剣の室内飼いを拒絶。理由も明確にする。正に魔王。


「ちゃんと躾けます……!」

「無機物を躾けるとは」


 聖剣をしっかりと躾けると言い出すメリー。頭おかしいように見えるが、実際はそうではない。


「危なくないようにします……!」


 メリーはポツリと呟く。


「下水道浄水器……形変えて」


 下水道浄水器……聖剣が光り輝いた!!

 そして光が収まるとそこには……


「……ゴミ箱」

「はい……! 入れたゴミを浄化する機能もあります」


 コタツに置いたら丁度良いサイズのゴミ箱(聖剣)が出来上がっていた。


「あと置くだけで空気中の悪いものを全て浄化します!!」

「…………」


 聖剣は空気清浄機としても使える。便利!!


「……室内で飼うなら条件が二つある」

「……!」


 メリーはその場に座る。右脚がないので自然と女の子座り亜種のようになる。


「一つ、一日三回、水をあげること」

「はい……!」

「二つ、その聖剣でとある実験に協力すること」

「実験……?」


 メリーは首を傾げる。




「わぁ……!」

「メリリ……メリリが立った……!」

「誰ですか、その女!?」


 現在、メリーは立っていた。壁に手を付けているモノの、間違いなく立っていた。

 左脚は震えながらも健気に身体を支え、右脚から漂う白銀の輝き(・・・・・)は彼女の歩を讃えている。


【メリーの義足】

素材:聖剣

効果:空気清浄機、下水道浄水器、病気無効。


 ――――聖剣は義足になりました。


「うん、これでい…い……」

「しゅき……しゅき、しゅき……」

「たっだいまーー! メリーちゃん! また禁断症状が出てるー!?」


 鈴木、帰宅。

 メリー、アルスターに対面で抱き着きしゅきしゅき言い出していた。聖剣でも治せない不治の病であった。聖剣ざっこ!


「メリーちゃん、上司キメるのは良いけど程々にね!」

「俺は薬物か」

「うん……しゅき、しゅきしゅき……」

「中毒症状が出てるぞ」


 アルスター中毒、略してアル中になった。

 アルスター中毒症状が起きたメリー――――アル中メリーは、がばッと顔を上げる。


「……! そろそろ、昼食……! 作ります……!」

「ああ、ではお願いしよう…………腹の音、聞かれたな、今」


 メリーは立ち上がり、ヨタヨタと部屋を出る――――台所へと向かうのだろう。それを見てアルスターと鈴木は顔を合わせる。


「上司、さっき森に可愛いウサちゃんがいた! でも、ウサちゃん、足を怪我してた……」

「そうか、それはさぞ庇護欲を掻き立てられる兎だな」


「うん、それで鈴木の目の前をとてとて歩いてんの! 健気に! 鈴木は……! どうすれば、よかったんだ……!」

「うーん、兎の傍をそれとなく歩いて蛇にあったら助ける、とかが無難じゃないか? だが兎が野生を忘れるといけない、噛まれてから助けるようにしなさい。アホ毛があれば解毒できよう、包帯も使っていいぞ」


「あい!」


 鈴木は部屋を出ていった。


「(……鈴木は唐突に良く分からない遊びをしたがるな……以前の陰謀映画の影響か、エウンテーラがなんか吹き込んだな)」


 アルスターは以前見せた陰謀映画の真似だろうとの当たりを付ける。

 そして編み物に手を伸ばす――――刹那に。


「顕現せよ! 鋭竜の牙(鈴木の剣)

「……鈴木?」


 廊下へ向かった鈴木が、そんな声を呟いた。

 そして次の瞬間。


「チッ……! 上司!! メリーちゃんがなんか攫われた!!」

「はっ!?」


◆◇◆

 下には荘厳な絨毯。壁には黄金の輝き、そして天井には見事なシャンデリアがある。

 しかしその全てが異様なまでに気持ち悪いと思えてならない、それはメリーのトラウマがそう認識させているではないのだろう。

 ――――その場所は、ところどころ破損が見られた。


 何日も掃除していないのか埃があり、雑に片付けたのは花瓶の破片が見えたりもした。


「(……やられた。転移の魔道具、なんてものが 存在、するとは……)」


 ここにいる原因を即座に分析する。先ほど、台所に向かうメリーは一人の男と出会った。否、目の前に突然現れた(・・・・・)


 そしてメリーの顔を見るや否や、転移、と叫んで謎の道具をかざした。

 ――――結果、彼女は王城にいる。


「ふむ……この娘が、あの奴隷、か。まあ、望むなら余の側妃にしてやってもいい……な」

「(……死ね)」


 メリーは内心で呪詛を吐きながら、固有魔法を使用する――――否、使用しようとした(・・・・・・)


「(……!? 魔力、が……ない……!?)」


 そこで気が付いた。自分の腕に皮のベルトのようなモノが巻かれていることを。その形状は見たことがあった。そう、それは――――


「(魔封じの、腕輪……どこかで付けられた。あとは……鎖? 拘束されてる……)」

「メリーよ、其方の力で今一度骸骨兵を呼び出すのだ」

「(……? ……それが、目的……?)」


 メリーは口を閉ざす。それは状況を把握しようと思考を切り替えたゆえである。

 この状況、最も重要な点は『時間』である。


「(アルスター様は、来る……のか、分からないけど、そう信じるしかない……選択するだけの力は、所有していない)」


 アルスターが来るまで、軽く見積もっても一日前後である。尚、固有魔法を使うのは論外である――――メリーは、彼らのために力を振るうのがトコトン嫌らしい。


「お前のためにドレスを仕立てたのだぞ。以前のように骸骨を呼び出してくれれば全てプレゼントしよう。さあ、呼び出しておくれ」

「(ドレスなんて……要らない)」

「そんなはずはないだろう、女なのだからドレスが好きなのは当然だろ? な? 警戒しなくていいんだよ」


 女はドレスが好きで当然らしい。


「(……メイドや兵士を一億雇うより、ドレスの方が安い、というのは、分かるけれど……)」


 本当に要らないのだ。それが王には分からない。そしてわざわざドレスを買った理由もメリーは見抜いていた。


「儂は反省した、だから許しておくれ」

「はぁ、」

「この国にはお前がいなければならないのだ、ほら、骸骨だよ。わかるな?」

「……お断りさせていただきます」

「は?」


 王は立ち上がり、近寄る。足枷や手枷があるメリーには逃げることが出来ない。


「お前のためにこんなにドレスを用意したんだぞ!?」

「頼んでおりません」


 メリーは事実をぶつける。


「儂は……お前が喜ぶと思ってこんなに用意したんだぞ?」

「頼んでおりません」


 王はメリーの目の前に紙を置く。ゼロが何個も並んでいた。


「これはお前のために買ったドレス、その出費だ。お前はこれを無駄にしようというのか?」

「頼んでおりませんゆえ」


 王は拳を振り上げる。そしてメリーの頬を引っ叩いた。赤く、腫れている。


「別の王なら十倍の力で叩いていた所だぞ」

「アルスター様は、この程度のことで暴力は振るいません」


 淡々と、告げる。事実を。先日、ようやく信用できた相手のことを。

 ――――殴られる。今度は頬ではなく腹部。


「なあお前が骸骨を出さなければ、どうなると思う? 国が滅び、罪のない人々が飢えて苦しむことになるのだぞ? みんなのためなんだ、お前ひとりの我儘でみんなを苦しめるのか?」

「……」


 メリーは身体をふらつかせる……だが、決して膝は付かなかった。


「……手弱女一人、膝を付けさせることが出来ないなんて……とても、お優しいのですね」

「…………は?」

「加えて、申し上げます。

 私が骸骨兵を出さなければ 国が滅ぶと言いましたが、私一人いない程度で 滅ぶ国など 遅かれ早かれ、滅んでいますよ」


 常識的なことだが、一人の力で回るほど国とは弱いものではない【本来は】。そもそも国とは『一人で生きれないから生まれた群れ』のことなのだ。

 断じて国とは『一人に依存する有象無象』を指す単語ではない。

 ――――つまり一人の力に依存する国など、国とは呼べないのではないだろうか。


「王様……もっと、勉強して……?」

「ッ! 儂、を、侮辱するかッ!」


 ――――メリーは最大の悪意を持って王を睨みつける。


「ひっ!?」

「……どうしましたか、王様。小娘一人の悪意が、そこまで怖いですか?」


 ――――明確な殺意。無理難題な戦場にいた獣。その獣らから歪な殺意を受け続けた少女だ。

 その少女が最大の悪意と共に殺意を叩き付けたのだ。王は無意識のうちに尻をついていた。


「私は彼――――アルスター・サナライオの所有物です。

 私は、彼のものです。お前のものではありません」


 語気を強めて、そう告げる。


「私は彼の奴隷です」


 噛み締めるように、己の過去を振り返るようにそう宣言した。そして最大の殺意と、最大の悪意を込めて告げた。


「もう一度、理解の悪い猿に、分かり易く言ってやる。

 ――――お断りだ。地獄に堕ちろ」


 親指を突き立て、地面を指した。

ポイント くれると 励みに なります。

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