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68 タルタロス

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 夢葉たちが南極に着いた時刻とほぼ同時刻。

 ここはタルタロス。日本、いや、世界で有数の人災者収容施設である。ここでは約1万人を超える人災者が収容されており、施設内は5層に分かれている。層が深い程危険度が高く、最下層ではあの禰宜猛也(ねぎたけや)が収容されていた。

 タルタロスでは、厳正な審査と訓練を積んできた職員で構成されており、24時間体制で監視され、外には、公安出身の自警団が配備されている。


 タルタロスの副看守長である五味朝陽(ごいあさひ)。彼は帽子を被り、黒い丸サングラスにガスマスクをしている。ガスマスクは人災者と同じ空気を吸いたくないからと噂されている。

 五味が向かうのは、タルタロス最下層。ここは職員でも限られた人しか入ることができない。最下層では、入江與が収容されている。入江は椅子に厳重に拘束されている。五味の足音に気づいた入江は、ゆっくりと目を開けた。

 「久し振りだね……。あれ?少し見ない間にイメチェンでもしたのかい?」

 入江がそう言うと、五味は鼻で笑った。

 「今の時代、スターライトやシルヴィアみたいに女が活躍しているのに、まだ日本、特にタルタロス(ここ)は未だに女性は非力だなんだで男の職員しか採用しない。ほんとふざけてるよな……。それより、“時は満ちた”。Z様が本格的に動き始めるぞ」

 五味がそう言うと、入江は嬉しそうに微笑んだ。

 「随分早いお迎えだね。じゃあ、行くか……」

 入江はそう言って、入江は恩寵を発動させた。本来であれば、恩寵を発動すれば、機械が感知し、麻酔銃が自動で発射されるはずなのだが、今回は発動しなかった。五味の手元には引きちぎられたコードがある。

 それに加え、入江の恩寵のストックは、戸籍上は上限10個で登録されているのだが、本来の入江の恩寵“ギブアンドテイク”のストック上限は、ない。

 (“電波”+“変電”で電波を空気へ変換+“風圧”で、防電の壁を貫通して、タルタロス全体の電波を破壊する。更にその組み合わせに“脳内共有”で外にいる闇蜘蛛、サタンに我々の意識を共有させる)

 入江はその行動を一瞬にして行い、鍵を解錠した。

 「五味。この扉の電子キーは解除したが、アナログキーの開錠は私の恩寵だと時間が掛かるんだ。五味、持ってるだろ?」

 入江はそう言って、五味に向かって手を差し出したが、五味は微動だにしなかった。

 「……はあ、“脳内共有”のときに薄々感じたが、まさか持ってきてないとはな。まあいい」

 入江はそう言って、黒い渦を作り出した。その渦は五味の真横に出現した。入江は手を黒い渦に入れると、五味の横の黒い渦から入江の手が現れた。その後、入江は五味の横から現れた。

 「まあ、“ワープゲート”を使えば良いのだがな」

 入江は背伸びをすると、恩寵で自身の服を黒のスーツに変えた。

 「他に我々のメンバーはいるのか?」

 入江はスーツの襟を正しながら言った。

 「Z様がその者たちが捕まる前に勧誘したメンバーは、貴方を含め3人。元警察官の綾釣薄夫(あやつりうすお)に、未成年の重杉力也(おもすぎりきや)

 「そいつらは今どこにいる?」

 入江が五味に聞いた。五味は指を上に向けた。

 「……いや、もっと明確な場所を教えてくれ」

 「……二人は中層の両端にいる。正直言って面倒だぞ」

 五味がそう言うと、入江は微笑んだ。

 「大丈夫。彼なら気配りができるからね」

 入江は見えない壁の向こうを見つめた。


 入江が脱獄した数時間前。

 タルタロスは、本島から離れた離島に存在し、島全体を全高50メートルの壁で覆われている。タルタロスには島唯一の入口でしか入ることはできない。

 「今日は雲が多くて助かるわ」

 闇蜘蛛は、雲に引っ掛けた糸を蜘蛛の巣のようにして、座っていた。横には、元夫丈高校の神谷堕(かみやおとし)がいた。神谷は“サタン”と名乗っている。顔はピアスだらけで手首には、リストカットの傷が沢山あった。黒髪だった髪も白い。

 「闇蜘蛛さんって、前は名のある自警団(ヴィジランテ)だったんですよね?どうしてZの下についているんですか?」

 サタンがそう言うと、闇蜘蛛が答えた。

 「簡単に言えば、この世界に絶望したからかな……。Z様は俺にとって新世界そのものなんだ。俺は彼にこの命を捧げた。んじゃ、世間話もこれくらいにして……」

 闇蜘蛛はそう言うと、糸を遠くの雲へ飛ばした。

 「サタン、お前飛べるけど、俺と手、繋ぐか?」

 闇蜘蛛はそう言いながら微笑んだ。サタンは微笑みながら断った。

 「俺だって、一人で飛べるさ」

 サタンはそう言って、自身を光にして一人で飛んで行ってしまった。


 「……司令部。こちらペルセ。T-45の“索敵”により、二体の物体を感知した。タルタロス訪問の予約はあるのか?」

 ペルセ(タルタロス直属護衛隊 隊長)は、司令部に指示を迫っている。横にはペルセの妹のポネ(タルタロス直属護衛隊 副隊長)も立っている。

 「こちら司令部。冗談を言える辺り、かなり余裕のある敵だと思われる。そちらで対処を頼む。T-28、T-45の導入後初会敵となる。操作記録を併せて宜しく頼む。オーバー」

 「ペルセ了解。可能な限り生け捕りにする。オーバー」

 ペルセは通信を切ると、掛けているサングラスを掛け直した。

 割と説明を省きましたが、T-28、T-45はイギリスの物体に恩寵を与える技術を基に、ベストロンの改良型として作られた機械です。それぞれ3つの恩寵を所持しています。T-28は、“増電”“粘着液”“追尾レーザー”。T-45は“索敵”“空気壁”“エネルギー操作”となっています。ちなみに、エンシェント=ジェントルのマントにも恩寵が与えられており、“自我”と“浮遊”が付いています。

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