66 南極
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
暗闇の中、誰かの声が聞こえる。分かるのは女性の声であるということだけだった。聞いたことのない声なのだが、聞いていて何故だかとても落ち着く。何を言っているのか判別はできないが、何かを訴えているのは分かった。耳を傾けるが、何を言っているのか分からない。
「夢葉!」
夢葉が目を覚ますと、目の前に王がいた。
「……良かった。寝息が静か過ぎて、凍死したのかと思ったよ」
「馬鹿言わないで、こんな快適な場所で死ぬわけないでしょ」
夢葉がそう言うと、窓の外を見た。一面が氷と海に覆われており、一目でここが南極大陸であることが分かる。
「ああ、夢葉くんも起きたのか。どうだろう。体調は特に問題ないかな?」
夢葉は、風間を見て頷いた。
「なら良かった。もうすぐ目的地に着くから、荷物の整理でもしとくと良い」
風間にそう言われ、夢葉はベッドから起き上がり、近くにあった椅子に座った。王が温かい飲み物を持ってきてくれた。夢葉は王にお礼を言って、それを受け取った。
夢葉は飲み物を飲みながら、ここ最近の出来事を思い出していた。濃すぎて思い出しきれなかった。
夢葉は飲み物を飲み干し、自分の部屋に向かった。
部屋にはリボルバーと防寒着と、リュックが置いてあった。夢葉はそれを身に着け、出発の準備をした。
数十分後。
船が止まる感覚と音で、到着したこと分かった夢葉は、風間の部屋に向かった。
丁度風間は部屋を出たところであった。
「準備は良いかな?」
夢葉は頷いた。王と海人もやって来た。4人は船を降りた。
船を降りると、一面が真っ白な世界が広がっていた。
「す、凄い……」
夢葉は、思わず息を呑んだ。身体は温かいが、顔は露出しているので、かなり寒い。
「ここ近年で南極大陸は、急激に気温が低下したらしい。日本人の人口が減ったからの影響と言われているが、明らかに入江氷菓とベストロンの影響だろうね」
風間はそう言うと、二人に簡易的なガスマスクを渡した。
「これは、海人君が改造したガスマスクで、着ければ喉が凍傷する心配はないと思うよ」
夢葉たちはそれを着けると、呼吸がだいぶ楽になった。
「そう言えば大丈夫なんですか?日本をほったらかしにして。まだベストロンの脅威が日本を脅かしていると思うんですけど……」
王がそう言うと、風間は口を開いた。
「日本に関しては雫君がいるから安心して欲しい。その他の国もレジェンダリが警備にあたっている」
「……そうですか」
王はそれから暫く口を開かなかった。普段は活発な王は静かで、夢葉は違和感を感じていたが、特に理由を聞くようなことはしなかった。
吹雪の中、暫く歩くと目の前に、巨大な金属の施設が見えた。明らかにそれは人工物で、不穏な雰囲気を醸し出していた。
「これから中に入るけど、心の準備は大丈夫かい?」
風間がそう言うと、2人は頷いた。風間を先頭に施設の中に入った。入口を抜けると、そこには、何もない広い空間が広がっていた。100メートルほど先に鉄扉があった。
「かなり簡単に侵入できましたね」
夢葉がそう言うと、風間は不思議そうに頷いていた。
「まあ、警備が少ないのは想定内だけど、流石に少なすぎるな……」
そのときだった。入口が閉まる音が聞こえた。影から無数のベストロンが現れた。突然の出来事で4人は反応が遅れた。一番後ろにいた王がエクスカリバーを握った。
エクスカリバーが風間の脇腹を刺した。風間は吐血し、王を睨みつけた。
「何故……だ……」
風間は跪く。王の手は激しく震えている。そのときだった。部屋の奥から甲高い笑い声と一緒に氷菓が現れた。
「良くやったわ!騎士!」
氷菓は王の元へ歩み寄った。氷菓は王の頭を撫でると、残りの三人を見回した。
「どういうことなのよ!氷菓」
夢葉は叫んだ。リボルバーを氷菓に向けて構える。
「どういうことって、騎士は私の息子同然の存在なのよ」
王は俯いたまま、何も言わない。
「私は今、お前に聞いてるんじゃない!騎士。どういうことか教えて」
「だから騎士は……」
氷菓が口を開いた瞬間、氷菓の頬に弾丸が擦った。氷菓は白々しく両手を挙げた。
「騎士。どういうことなの?」
王は俯いたまま口を開いた。
「僕、孤児だったんだ。それで、氷菓さんに出逢って……。風間さんに出会う前まで良くしてもらってて……。それで、氷菓に言われたんだ。「風間さんの元に潜入して、あるものの情報を流して欲しい」って」
風間はそれを聞いて、震えている。
「騎士!でも、それと風間さんを斬りつけることとは関係ないでしょ!?これは貴方の意思なの!?」
夢葉は王に歩み寄り、胸ぐらを掴んだ。
「お前の返答次第で、私はお前を撃つ。答えろ!」
「……止してくれ」
夢葉を制止したのは、風間だった。風間はエクスカリバーを支えながら、立ち上がる。夢葉は風間を支えるために、風間の元へ歩み寄った。
「今まで君の気持ちを知ることができなかった。……済まない。……もしもここで私が死んでも、君が責められる必要はない。だから……」
風間は話し半ばで倒れた。
「風間さん!!!」
夢葉は風間を抱きかかえる。王も駆け寄ろうとするが、足が凍っていて動かない。王は氷菓を見た。氷菓は光悦な表情で王を見ていた。
「……夢葉君。私の鞄に大きな箱が入っている……。その箱のチェーンを、切ってもらえないかな……?」
夢葉は頷くと、風間の鞄の中から大きな箱を取り出した。
「それは……」
今まで口を出さなかった氷菓が、口を開いた。
「その箱を開けてはならないわ!ベストロンたち!あれを回収しなさい!!」
ベストロンたちは、氷菓の声に反応し、一斉に箱に向かって飛び出した。そのときだった。夢葉の背後が神々しく光った。その光に何故かベストロンは後退る。夢葉は何が起きたのか分からず、辺りを見回す。しかし、何も分からないまま、夢葉は箱をこじ開けた。そのとき、箱から禍々しい何かが溢れ出てるのが分かった。夢葉は思わず腕で口を覆った。その何かは、風間の傷口に向かって蠢いていく。その何かは風間の傷口を塞いだ。
(凄い……。でも、何か嫌な予感……)
その何かは、風間の傷口を防ぐと、風間の鼻や口に入り込んでいく。すると、風間は震えだす。
「風間さん!?大丈夫ですか?」
夢葉は風間の体を揺らすが、風間は反応しない。しかし、数秒後、風間は不気味に起き上がると、箱に向かって歩き出した。風間?は箱の中から一つの剣を取り出した。その剣を取り出した頃には、風間の容姿が変わっていた。髪や髭が伸び、髭の先は燃えている。鼻の下の髭も凛々しい。体が一回り程大きくなっており、筋骨隆々になっていた。風間?は大きく背伸びをした。
「ああ……。久しぶりの外の世界だ!やっぱり外の世界は良いなあ!!」
そう言うと、辺りを見回した。
「……誰だ、お前ら」
風間?はそう言うと、もう一度辺りを見回した。
「……誰や?」
辺りに数秒の沈黙が訪れるのであった。




