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65 六道

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 炎司は左手で剣を振り下ろした。その攻撃を鬼喰は安々と受け流した。受け流された炎司は、その力を使って、回転しもう一方の刀で斬りつけた。背後を狙った炎司の攻撃は、鬼喰には見切られていた。背中越しに剣で受け止めた。炎司は鬼喰の殺気に思わず、片足から炎を発し、距離を取った。

 「その“妖力(ようりょく)”に頼るなと言ったはずだぞ」

 鬼喰はそう言うと、炎司を睨みつけた。炎司は思わず後退る。

 「良いか?人は物を目で見る。何かを見るとき。何かをするとき。それには必ず目を使う。攻撃の予備動作は目を見れば、分かるはずだぞ」

 鬼喰は剣先で、炎司を指した。

 「お主、今から儂の呼吸を使おうとしたな?……駄目だ。お主。お主自身が編み出した剣術を見せてみろ」

 「でも……」

 「まさか、お主の剣術で儂が死ぬと思っているのか。それなら心配せんでええ。お主如きに儂は死なん。それに既に死んでいるからな!」

 鬼喰にそう言われ、炎司は口角が上がった。

 「分かりました」

 炎司はそう言って、一度刀を鞘に収めた。

 「じゃあ、いきます。俺の……、“(ほむら)(かた)”を」

 炎司は深呼吸をした。炎司は息を止めた。その瞬間、鬼喰の間合いに一気に入った。鬼喰は危険を察知し、後退した。鬼喰の目には、6本の刀が見える。

 「“修羅道(しゅらどう)”」

 炎司の殺気によって、生成された4本の刀は鬼喰に絶え間なく襲い掛かる。その間、炎司は呼吸をしていない。

 鬼喰は、それを刀一本で受け流している。

 「それだけか?」

 鬼喰が言っても、炎司は反応しない。炎司のこめかみに血管が浮かび上がる。炎司の髪型が炎のように靡き始める。

 (呼吸をしていないのに、威力が増しているが……)

 鬼喰の不意の一撃は、炎司のみぞおちに入った。炎司は苦しそうに蹲るが、息はしていない。炎司の目が充血し始める。

 「おい、息をしろ。死ぬぞ!」

 鬼喰は炎司に近づく。その瞬間、炎司の高速の突きが、鬼喰の頬を掠った。鬼喰の頬から一筋の血が流れる。

 「……“地獄道(じごくどう)”」

 炎司は片方の刀を逆手に持ち、構えた。

 「それがお主の全力か?(のぶ)殿!そこにあるもう一本の刀を!」

 信と呼ばれる男性は、足元にある刀を鬼喰に投げた。

 「意識があるか分からんが、お主の全力に儂も答えよう!」

 鬼喰は飛んできた刀を抜いた。

 「(あけぼの)よ。お主を使うなんて久しいのお……」

 炎司は鬼喰に襲い掛かった。その瞬間、炎司は吹き飛んだ。炎司は地面に着地し、深く息をした。炎司は刀を鞘に収め、地面を這った。炎司は右手右足を使って回転し、鬼喰に突進した。居合中に刀を抜き、鬼喰を斬りつけた。鬼喰も同様に居合をした。

 「見えました?」

 大輝は大道寺に問い掛けた。

 「……おう」

 大道寺は曖昧な返事をした。

 居合は相殺し、二人は距離を置いた。炎司は鬼喰を見ると、再び回転し襲い掛かる。摩擦なのか恩寵なのか刀が燃え上がる。

 「まるで獣だな……」

 鬼喰は深く息を吸った。鬼喰の体が一回り大きくなる。鬼喰は大きく両手を振り下ろした。炎司は地面に強く叩きつけられた。空中に浮いた炎司に腹部に、鬼喰の刀の棟を喰らわせた。炎司は気絶し倒れた。

 数秒の間、蹲っていたが、炎司はゆっくりと起き上がった。

 「今度は普通だな。どうだ?全力は出せたか?」

 鬼喰がそう言うと、炎司は首を横に振った。

 「そうだろうな。お主の剣術はいいもんだが、あのやり方だと早死にするぜ。炎司。深く息を吸ってみろ。そして、耳を傾けてみろ」

 炎司は言われた通りに、深く息を吸った。

 「……何が聞こえる?」

 「風の音、それに服が擦れる音、……俺の心臓の音も聞こえます」

 「そうだな。儂はお主に観察眼と呼吸のやり方しか教えなかった。儂はそれしか知らんからな。ただ、死んでみて、自分の心の臓の音が聞こえなくなり、気づいたことがある」

 鬼喰は、炎司の胸元に手を当てた。

 「自分が生きていることが、一番身近に聞こえるということだ。儂は死ぬまで気づかなった。良いか?人の原動力はその心の臓だ。人を観察することも大切じゃが、人を知ることも大切じゃ。生にも死にも執着した儂なら分かる。己のこの鼓動を忘れるな」

 鬼喰は炎司の胸を軽く叩き、離れた。

 「先生。俺、分かった気がします。最後に少しだけお手合わせお願いできますか?」

 鬼喰は頷いた。二人は一定の距離を取り、構えた。炎司は刀を納め、構えた。

 二人の間に静寂が訪れる。先に仕掛けたのは、勿論炎司だった。炎司は深く腰を落とし、鍔を切った。そのとき、優しい風が辺りに吹いた。炎司の刃が鬼喰に届いた。鬼喰は二刀の刀で受け止める。炎司は片手で軽々しく刀を持っている。

 「見事……!お主はその剣術、何と名付ける」

 炎司はゆっくりと口を開いた。

 「“焔ノ型 六道(ろくどう)”。どんな道も俺の道。全部受け止めますよ」

 「……素晴らしい」

 鬼喰は微笑んだ。炎司もつられて微笑む。

 刀を納めた炎司は、清々しい顔であった。

 「ありがとうございました。先生。なんかすっきりしました」

 「そうかそうか。……頑張れよ」

 鬼喰はそう言うと、戻っていった。

 「さっきは良かったよ。今まで見た刀技で一番美しかった」

 信が近寄ると、炎司の肩を優しく叩いた。

 「ありがとうございます」

 炎司は深く会釈した。

 「炎司!」

 炎司は深く抱擁された。大輝だった。大道寺もゆっくり近づく。

 「やっぱりお前は自慢の息子だよ!こんな大きくなりやがって!!」

 炎司は照れくさそうに笑った。大道寺も優しく微笑んだ。

 「……どうやら時間のようですね」

 刻の神がそう言うと、炎司に近づいた。炎司は抱擁から離れると、口を開いた。

 「そろそろ時間みたい。じゃあ、行ってくるわ」

 炎司がそう言うと、大道寺たちは大きく手を振った。炎司もそれに応えるように、手を振りながら後退った。


 「恐らく天照は、俺の呼びかけで目覚めるはずだ。それでいいか?炎司」

 素戔嗚がそう言うと、炎司は頷いた。

 「よし、じゃあ戻るか」

 炎司はゆっくり目を閉じた。

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