64 黄泉
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
「それで帰ってきたら、突然、片腕が生えた二重人格者になったって訳か」
海人はレントゲン写真を見つめながら言った。丁度、炎司はシャワーを浴びて戻ってきたところだった。
「親友の言葉ぐらい信じてくれよ、海人。それで異常はないか?」
「異常だらけだよ。まあ、2年前に比べればな。細胞も寵臓も変化はない。その左腕以外な。恩寵が消滅した現代で“超再生”みたいな恩寵が、再現したとも思えないしな。炎司が言ったことは信じるよ」
「ありがとうな」
炎司はそう言うと、小綺麗なシャツに腕を通した。
「それより、天叢雲剣はどこにあるんだ?」
炎司は首元に掛けた5つの勾玉が付いたネックレスを見せた。海人はそれを見て、驚いた様子だった。
「……本気で言ってるか?」
炎司は頷いた。海人は半信半疑だったが、炎司がそれを開放させて実物を見せると、納得したようだった。
「それより、まさか日帰りで帰ってくるとはな。当然、夢と王、風間さんも帰ってきてないぞ?どうする?思い出でも語るか?」
海人の提案を炎司は断り、黒いパーカーを着た。
「どこか行くのか?」
「ちょっと散歩……」
炎司はそう言って、風間邸を後にした。
炎司は人気のない公園のベンチに腰掛けた。炎司はフードを深く被り、目を閉じた。
数秒後、炎司が目を開くと、目の前には、赤く染まった空が広がっていた。それに加え、常に噴火し続けている火山に、人々の呻き声が聞こえていた。炎司は、自分の身体が動くか確認した後、歩き出そうとしたときだった。炎司の腕を誰かが引っ張った。それは素戔嗚であった。
「おいおい、どうして只の人間が自由に地獄に来れるんだ?」
素戔嗚がそう言うと、炎司は面倒くさそうに答えた。
「俺の記憶見れたんなら、分かるだろ?話すと長くなるから話したくないんだわ」
炎司がそう言うと、素戔嗚を振り払い、歩き出した。素戔嗚は思わずその場で立ち尽くしていた。そのとき、素戔嗚の肩に誰かの手が置かれた。素戔嗚はその人物を見たとき、一瞬で跪いた。そこにいたのは、刻の神であった。
「お久しぶりです!」
「あれ?会ったことあったっけ?」
刻の神がそう言うと、素戔嗚は深々と頭を下げた。
「そもそもこんな負け犬に頭を下げる必要はないよ」
刻の神がそう言うと、素戔嗚は真っ先に否定した。
「いえいえ!神皇様がいたからこそ、我々も存在できて……」
「おーい、置いていくぞ」
炎司に遮られ、二人は会話を止めた。二人は炎司を追いかけた。
暫く歩くと、山よりも巨大な男に出会った。
「よおぉ、兄弟」
巨漢は、炎司を覗き込みように炎司を見た。
「お久しぶりです。閻魔さん」
閻魔と呼ばれる巨漢は、炎司を片手で握った。そして自分の顔の近くまで手繰り寄せた。
「中々会えなかったから、寂しかったぞ、兄弟!!!」
「く、苦しい……」
炎司は自身を炎に変え、抜け出した。
「ほほう。其方の恩寵と呼ばれる能力は、自身を炎に変え能力なのか」
素戔嗚がそう言うと、刻の神は訂正した。
「正確には違うんだけどね。彼の本当の恩寵は、“継承”。相手の同意の元恩寵の継承ができる」
「なんと強いお力なのでしょうね」
素戔嗚がそう言うと、話を続けた。
「それより、あの閻魔が人間と仲良くしているとは、何十億年も生きてますが、始めてみましたよ」
「それが彼の強みなのですよ……」
刻の神がそう言うと、炎司の元へ向かった。
「ここへ来た理由は、私とゆっくり話したいからでしょう?閻魔殿。黄泉の扉へ案内してもらいませんか?」
刻の神がそう言うと、閻魔はかしこまって側近の鬼を呼んだ。
「勿論ですとも!神皇の御命令なら!この御一行を案内してやれ」
閻魔がそう言うと、三柱は黄泉への扉へ案内された。
「ここです。それではまた」
鬼はそう言うと、静かに去っていった。
「行きますか」
炎司がそう言うと、三柱は扉の奥へ向かった。
扉を抜けると、そこは先ほどの景色とは打って変わって、美しいものだった。辺り一面は薄白く、人々が楽しそうに暮らしていた。
「ここは初めてですか?素戔嗚殿」
刻の神がそう言うと、素戔嗚は頷いた。
「はい……。何とも落ち着く場所ですね」
炎司は迷うことなく歩き始める。二柱は炎司に着いていく。
暫く歩くと、大きな白い桜の木が見えた。その桜の木の周りでは、沢山の人々が宴会をしていた。炎司は一つの宴会場所を見つけると、そこに向かって歩き出した。
「お久しぶりです。皆様方」
炎司はそう言いながら、深々と頭を下げた。そこいたのは、元『徒陰』大黒柱の大道寺政宗と、炎司の父親である神楽大輝、そして白い袴を着た赤髪の女性に髷を結った細身の男が二人いた。
「おお!炎司か」
大道寺がそう言うと、炎司を手招きした。炎司は座ると、酒を勧められたが断った。
「あら、刻の神さんもこちらに……」
女性がそう言うと、刻の神はそこへ向かった。素戔嗚はただ立ち尽くしていた。
「あちらは?」
大輝がそう言うと、炎司が答えた。
「神様です」
そう言うと、髷の男たちが驚き、一気に立ち上がった。そして、素戔嗚に向かって深々と頭を下げ、席を譲った。
「お構いなく」
素戔嗚がそう言うと、炎司に話しかけた。
「どうしてこんなところに来た?」
素戔嗚がそう言うと、炎司が答える。
「ここは現世よりも時間の流れが遅い。ゆっくり話すのに好都合なんだ。それに邪魔が入らないしな」
女性は炎司が置いた刀を見ると、その刀を手に取って、鞘を抜いた。素戔嗚は思わず、身構える。
「あ、大丈夫」
刻の神がそう言い、話を続けた。
「彼女、刀鍛冶なんですよ」
「おい、炎司!また手入れを怠ったな!?良いか?刀というものは生き物だ!ちゃんと手入れしないと、刀が死ぬぞ」
「済まないな……」
女性はそう言うと、どこかへ持ち去ってしまった。
「……奴は本当に生粋の刀鍛冶じゃな……」
男の一人が呟いた。
「それより、話とは何なんだ?儂らが邪魔だったら、直ぐにどくが?」
大道寺がそう言うと、炎司は止めた。
「大丈夫。それより、刻の神。これから俺はどうすれば良い?」
炎司がそう言うと、刻の神はゆっくりと口を開き、話し始めた。
「そうだね……。私が言ったように、“歴史に残らない名刀”も集めたし、後は……、それを融合させる神器が必要なんだよね」
刻の神がそう言うと、自身が持っている杖の先を使って、地面に図を書き始めた。
「元々“歴史に残らない名刀”は、一つの武器だったんだ。その力を分散させて別々の刀にしたのが、素戔嗚たち“三貴子”。ただ、君以外行方が分からないのが現状なんだ」
「つまり、月夜見命と天照大神の居場所が分からないと、どうしようもないということですか……」
炎司がそう言うと、刻の神は頭を掻きながら話を再開した。
「そうなんだよね……。二柱は、奴から“歴史に残らない名刀”を守るために命を賭したからね……。この私でも彼女の存在を認知できないんだ」
「奴らなら生きてますよ」
そのとき、素戔嗚が言った。二柱は素戔嗚を見合った。
「本当か!?」
炎司がそう言うと、素戔嗚は頷いた。
「我々“三貴子”の絆ってやつですかね。生まれた元は同じですからね。……正確には生きてはいなくて、巨大な戦いで我々は、身を滅ぼしてしまったんです。身は滅んでも中身は生きています。俺は出雲大社に生きていた御神木になり、月夜見と天照は、人々を介して養っている。……そして今は、月夜見は一人の女性に。天照は強大な力を蓄えるために、3つの存在に心を移した。一つは武器に。残る二つは男女の身体に……。炎司、君にとってどれも近い存在であるんだ。特に、天照の宿る身体の持ち主の名前は……、神楽夢葉」
夢葉の名前を聞いた瞬間、炎司は思わず立ち上がった。
「夢葉が!?」
「そのことを知っているのですか?」
刻の神が言うと、素戔嗚は首を横に振った。
「そんなこと言ったら、大変なことになりますよ」
「じゃあ、直ぐにでも夢葉に言わなくては……」
炎司がそう言うと、刻の神が止めた。
「いや、言わない方が好都合かも知れない。南極大陸で二人で共闘すれば、もしかするかも知れない」
刻の神がそう言うと、炎司は黙りこくってしまった。
「君が夢葉殿を巻き込みたくないのは分かるが、君の傍にいるのが一番安全だろう」
刻の神がそう言うと、炎司は頷いた。
「分かりました。……鬼喰先生」
炎司は先ほどの男に声をかけた。男は炎司を見ると、待ってましたと言わんばかりに、立ち上がった。
「修業とは久しいのお、小童」
鬼喰は、足元に置いていた刀を腰に差すと、広い場所に移動した。丁度先ほどの女性も戻って来ていた。炎司も鬼喰に着いていく。炎司は着ていた服を脱ぎ、上裸になった。鬼喰も袴を脱いだ。鬼喰は恐らく70歳過ぎに見えるのだが、その肉体は20代よりも若々しかった。
鬼喰は刀を抜いた。鬼喰の日本刀は普通の刀身よりも細い。
「ああ、何度見ても惚れ惚れする刀身よお……、千枚童子よ。久々の戦闘よ。再びあの小僧と戦えるのだ。頼むぞ……」
鬼喰は構えた。炎司も構える。刀は二本構えている。
「お主の刀も良い刀だな」
「手合わせお願いします……!!!」
炎司は動き出した。




