55 柱集いし
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
「起きて!早く起きて自身の安全を!」
夢葉が目を覚ましたときには、目の前で炎司とZが戦っていた。直ぐ近くには海人と風間が倒れてる。どうやら気絶しているようだ。夢葉がゆっくりと起き上がると、目の前に王が倒れていた。床に赤黒い染みが大きく広がっている。息も絶え絶えだ。夢葉が王を抱きかかえると、王はゆっくりと口を開いた。
「……良かった……。君が、無事、で……」
微かに聞こえる声量で王は話す。
「もう大丈夫だから……!」
夢葉の目から涙が零れる。夢葉は王の手を握る。握り返してはこない。
「夢葉ちゃん……」
王の言葉はそれだけで途切れてしまった。頭は力なくぶら下がっている。夢葉の目からは激流のように涙が溢れる。そのとき、夢葉の二丁の拳銃がけたたましく光り輝いた。夢葉は意味もなくその二丁の拳銃を手に取った。夢葉は再び眩い光の柱に包まれた。夢葉は思わず目を閉じた。
(夢葉殿……。夢葉殿……)
拳銃から、いや、自身の心から誰かが語りかけてくる。夢葉が目を開けると、目の前には高貴な女性がいた。紅白の着物や雲のような羽衣を身に纏っている。
「貴方は……?」
夢葉がそう言うと、その女性は口を開いた。
「私の名は、天照大神……。貴方方を依り代として長年生き永らえてきました」
「アマテラス……って、あの!?」
「はい……。本来私が人前に出ることは有り得ないことなのですが……。今回は異例中の異例、私の力を使わなくてはいけない。神が出ないといけないまでに、この戦いは壮絶なものとなるはずです。さあ、私のお力を使いなさい……。完全顕現とはいきませんが、お役に立てるでしょう……」
天照大神は光となり、夢葉の中に取り込まれていく。
夢葉が目覚めると、天照大神の服と同じ格好をしていた。持っていた二丁の拳銃も黄金の扇へと変化していた。その様子を見た炎司は戦いながら夢葉を見つめた。
「……流石だ、夢」
「彼女が目覚めたからなんだ!僕が有利なのは変わりないだろ!?」
Zがそう言うと、背後から巨大化したベルフェゴールが襲い掛かる。夢葉は扇を一振りした。金色の風は瞬く間に竜巻のようになり、ベルフェゴールを軽く吹き飛ばした。ベルフェゴールは吹き飛ばされながらも、長い爪を夢葉に向ける。夢葉は臆せず掌を空へ向けた。
「我が意思に応えよ。神器たち……」
すると、日本の方角から物凄い勢いで三つの物体が飛んできた。ベルフェゴールの爪が夢葉は襲う。しかし、その攻撃はベルフェゴール自身が受けた。
「“八咫鏡”」
夢葉は扇を閉じると、ベルフェゴールに向かって振り上げた。
「“草薙剣”」
ベルフェゴールに光の斬撃が襲う。ベルフェゴールはあまりの衝撃に盛大に吹き飛び、近くの氷山に激突した。
夢葉の覚醒により、形勢は一気に炎司側に逆転した。
(私はどれほど意識を失っていたのだろうか……)
風間は携帯の着信で目を覚ました。目の前では凄惨な光景が広がっていた。風間は取り敢えず携帯を取り出した。
「もしもし……。ああ。心田総理……。ええ、何とか生きています。……え!?各国のレジェンダリが!?雫君は!?……そうですか」
風間は携帯を切らないまま、大声で叫んだ。
「夢葉ちゃん!炎司くん!各国のレジェンダリがやられた!」
それを聞いた炎司が風間を見た。その隙をZは見逃さず、炎司に斬りかかった。炎司から血が噴き出した。炎司は地面に落下する。
「嘘でしょ……?各国のレジェンダリが全敗って……」
夢葉がそう言うと、膝から崩れ落ちた。
「どうやら、運は僕に向いているようだね。……だから忠告したじゃないか。僕に任せて力さえくれればいいって」
Zは倒れた炎司の元へ歩み寄る。
「神が運で喜んでんじゃねえ……」
炎司はZの片足を切り落とした。Zは距離をとった。両者の傷は既に癒えている。
「俺たちはまだ負けていない。だよな?海人!」
少し前に海人は目が覚めていた。海人は通話中だった。
「鳶鷹!?……皆が各地にいるのか!?」
海人は涙で顔がぐちゃぐちゃになる。
俺の言葉を誰も信じない。俺だけが覚えている大道寺炎司という名前。しかし、やっと会えた。
夢葉たちが南極大陸に向かう数日前。
鳶鷹の元に、炎司が現れる。鳶鷹は極道組織“東祭連合”の末端の組の若頭をしている。
「炎司!炎司なのか!?」
鳶鷹は炎司に熱い抱擁をした。炎司は訳が分からなかった。炎司を覚えている人間はいないはずだった。
(萬ノ刻神産岐!どういうことなんだ)
炎司は口には出さずに言った。
(私にも分からないよ。……一つ可能性があるとすれば、鳶鷹の力が神かそれ以上の力を持つならばあるいは……)
炎司は考えることを止めた。炎司の計画としては、仲間が一人でも多くいれば好都合だった。炎司は鳶鷹に計画を話す。
「『徒陰』の柱を再集結させる!?そこまで大きな戦いになるのか?」
「ああ。今の俺はある事情があって、他の柱は俺を覚えていない」
「それは柱だけじゃないぜ。全くどういうことなんだよ……」
「済まない。今は理由を聞かないでくれ」
炎司の言葉に鳶鷹は頷いた。
「分かった。柱集めは俺に任せてくれ。“月雲組”の皆ならきっと手伝ってくれる」
「流石だよ。……じゃあさっき言ったように当日各国に着くようにお願いしてくれ」
「でも、陽兄と神夜姉はどうするんだ?時間で勝率変わっちまうけど……」
炎司は微笑んだ。
「そこは俺に任せてくれ」
鳶鷹は理解できなかったが頷いたのだった。
「エンシェント……なんだっけだったか。お前、弱いなァ」
エンシェント=ジェントルを踏みつけ見下す重杉はそう言うと、ダイヤモンドの腕を振り上げた。
「もう終いや!」
そのときだった。重杉の背後に凄まじい気配を感じ取った。
(……!?太陽やと?)
重杉は振り返り、見上げるとそこには太陽の如く光り輝く緋月陽一が立っていた。彼は『徒陰』の太陽柱であった男である。彼の恩寵“太陽”は、日の上昇と共に力が増していく。彼の今の状態は“輝光帝”と呼ばれ、正午の一分間だけ最強となる技の状態なのだが、炎司の刻の力によって無制限である。
陽一の人差し指が重杉を吹き飛ばす。重杉はすかさず筋繊維で体を覆ったが、衝撃で体は真っ二となり、太陽の熱で炎上した。
「久々の柱の仕事だァ……。ちゃんやらないとなァ……」
陽一は満面の笑みだった。
先程の戦いの反動で動きが鈍ってたアトミアルは、魖の敗北寸前だった。竹がアトミアルに襲い掛かる。そのときだった。辺り一面に夜が訪れた。夜空には巨大な満月があった。その真ん中に一人の女性が佇んでいた。彼女は緋月神夜。彼女の恩寵“月”は日暮れから徐々に力が増し、月が真上に上がったときに力が最大となる。また、満月が真上に上がった一分間だけ最強となる“月光帝”がある。彼女の今の存在がそれである。陽一同様に炎司の力で無制限である。
「竹を武器に使うとは、妾と同じよのう……」
神夜は手を振りかざすと、地上から極太い竹が暴れまわる。魖は筋繊維で自身を守るが、貫通し魖を吹き飛ばした。
「妾に勝とうなど思うでないぞ……?」
神夜は不敵に微笑んだ。
インドではシルヴィアと大嶽丸が戦っていたが、大嶽丸の与えられた恩寵の一つである“潜在覚醒”により、体が巨大化し全長三千メートルもの超大型大嶽丸となった。シルヴィアのシックスセンス“枯死”ですら吸いきれない生命力に、苦戦する一方で大嶽丸の一振りによって、インドが半壊した。攻撃に巻き込まれたシルヴィアは遥か上空に吹き飛ばされた。上空で気絶したシルヴィアは地面に落下する。シルヴィアは誰かに受け止められる。それは『徒陰』の酒柱である酒井酌斗だった。彼の恩寵“酒吞童子”は、酒を吞むことで最強といわれる鬼へ変化することができる。酌斗と酒吞童子が同調することで更なる強化になるのだが、その最高到達点である“酒吞童神”は鬼界最強の鬼へとなる。鬼界最強と最凶の戦いが今始まる。
「大嶽丸~、随分醜い姿になったなあ」
酌斗(酒吞童子)がそう言うと、大嶽丸は大きな咆哮をあげた。
インド付近で戦っていた翁王と螝は、螝の攻撃によって万里の長城まで吹き飛ばされていた。螝の七つの恩寵は本来持つ“氷帝”、ホワイトキラーが共通して持っている“強固”、“超再生”、“翼”、“井守”、“鱗”、“巨躯”であり、見た目は翼の生えた巨大なイモリである。強固な上に鱗を持つので、シンプルな打撃が武器の翁王にとっては相性が悪い。更にイモリの毒や氷に苦戦する後、敗北した。
そのとき、幾重の甲羅に覆われた蛸の足が螝を吹き飛ばした。
「何とか間に合ったみたいだな。俺、漁船から来たからここまで長かったよ……」
彼の名前は大道寺堅魚。彼は『徒陰』の魚柱である。彼の恩寵は“魚介類”。ありとあらゆる魚介類を体に再現することができる。彼の知識量に依存するので、彼が知る魚介類なら何でも再現できる。彼は幾重にも重ねた蟹の甲羅で守っている。
「可愛い鳶鷹に頼まれちゃあ、どこへでも駆けつけるぜ!……文字通り蛸殴りにしてやんよ!」
堅魚は腕を蛸にして構えた。
ロシアではフラーブルと綾釣が戦っていた。綾釣は脱獄からロシアに向かうまでの僅かな期間で、百人を超える女子高校生を誘拐し、傀儡化させてきた。フラーブルは綾釣の傀儡と戦うことはできず、間接的な攻撃しか行えなかった。
そのとき、ロシアでは珍しい温かい風が吹いた。風は綾釣を巻き込み、吹き飛ばした。風を起こしたのは、『徒陰』の妖精柱である大道寺游華だった。
「キモい……、キモ過ぎぃ!」
彼女はそう叫ぶと、幾つもの風を起こした。彼女の恩寵“妖精”は風を起こしたり、回復する風を起こしたりと、様々な風を起こすことができる。一部の傀儡が游華の風を浴びると、綾釣の拘束から解除された。
「フラーブル……。私分かるわ!貴方恋する、いや、過去形かしら?……乙女でしょ?こんなキモい奴とっとと倒して女子会しましょ!」
游華はそう言うと、フラーブルに優しく微笑みかけたのだった。
アメリカでは、キャプテン・スターライトと魈が空中戦を繰り広げていた。
「君は元人間だろ?……見た目はモンスターだが、人間を殺すとなると気が引けてしまうな……」
そのとき、背後から魈の触手に触れられた。そのとき、触れられた場所が爆発した。スターライトは地面へ落下していく。そのとき、彼女を空中で抱きかかえる男がいた。大道寺鳶鷹だった。
「セーフ……かな?」
鳶鷹は不器用に微笑んでみせた。スターライトは訳が分からず首を傾げた。
「あ、大丈夫!俺は味方だ!取り敢えず地上に降ろすわ」
鳶鷹はそう言って、地面にスターライトを降ろした。
「ここは俺に任せてくれ。あんたは付近の怪我人でも助けてな」
「で、でも、アンタ……」
「ん?ああ、大丈夫。俺、ただの鳥じゃねえからさ」
鳶鷹はそう言って、魈の元へ向かった。
魈の恩寵は本来の“ジェット”、そしてホワイトキラー共有の“強固”、“超再生”、そして先ほど披露した“触手”に“爆発”、“鱗”に“剛躯”である。そのため、体が異様に硬いはずだが、鳶鷹の足蹴りは魈の鱗を砕いた。
「貴様……、『徒陰』ノ風柱……。恩寵ハ翼ヲ動カスダケノ軟弱恩寵……」
魈は微かに自我があるようだった。
「へぇ、俺のこと知ってるのかい。だが、今の俺は数年前の俺とは一線を画くぜ?」
鳶鷹は自慢げに微笑んだのだった。




