54 終焉の序曲
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
大嶽丸がネパールの地に降り立った時刻とほぼ同時刻。
入江たちによって解放された重杉は、イギリスの北海の真ん中にいた。重杉は“重力”を使って、水中の上に立っている。重杉は空を見上げた。そこには、エンシェント=ジェントルとドイツのレジェンダリのアトミアル=テュールが浮いていた。
「なあ、お前ら。そこのガリガリのおっさんはマントで飛んでるの分かるが、隣のお前、どういう原理だ?」
重杉がそう言うと、アトミアルは鼻で笑った。
「馬鹿そうなお前に言ったところで分からないだろ」
その発言が気に喰わなかったのか、重杉は手を翳した。すると、二人は重力で重杉の前まで引き下ろされた。
「ああ、これで話しやすくなったなあ」
重杉はそう言って、不気味に微笑んだ。アトミアルは片手に持っていたコインを重杉にぶつけた。コインは電気を纏い、重杉に直撃した。凄まじい衝撃が重杉を襲った。重杉は水中に落ちていった。
「ただでさせこんな寒い場所で、上裸の男が沈んだんだ。……死んだだろ」
アトミアルがそう言ったが、エンシェント=ジェントルは納得していなかった。
「彼のことは、ミスタータナカから聞いていたが、彼の頑丈さは異常らしいぞ」
「いや、奴はただの人間だろ?魚じゃあるまいし」
そのときだった。アトミアルの右手の何本かの指が歪む様に折れた。アトミアルは思わず四方八方に電流を飛ばした。
「はァん。お前の恩寵、電極を用いたいわゆるレールガンってことだな?」
重杉は水を跳ね除け、現れた。
「なあ、少し話さないかい?」
エンシェント=ジェントルが重杉に話しかけた。
(不味い。まだ魔法陣が組み切れていない……。何とかして時間を稼がなくては)
「ああ、別にいいけど、浮いているのも楽じゃないんだよな」
重杉はそう言うと、人差し指をエンシェント=ジェントルの元へ指した。すると、エンシェント=ジェントルはイギリス本土の方へ飛ばされた。マントのお陰でダメージは軽減されたが、大怪我を負った。
(幸か不幸か、私のテリトリーに追いやったな。これなら私は強いぞ……!)
エンシェント=ジェントルは地面から魔法陣を発現させた。
「私は何か起きても良いように常にイギリス各地に魔法陣を張り巡らしている!どういうことか分かるかな!付与・水神 荒ぶる海竜”」
地面から巨大な水柱が重杉を襲った。それに連鎖するように、空中の魔法陣が発動した。空中から風の刃が重杉を襲った。頑丈な重杉だが、風の刃では傷だらけになった。はずだった。彼の体はダイヤモンドの輝きを放っていた。
遡ること数分前。
大山杭刑務所にて、入江は重杉を見つけると歩み寄った。
「四年ぶりだね。私のことは覚えているかな?」
「あァー。あれやろ?あのチビ餓鬼の手下……」
「Z様だ!……まあ、覚えてるならそれでいい。君にはこれからイギリスで暴れてもらうよ。それに伴い、君には三個の恩寵を授けよう。ドクターが新調してくれた素晴らしい恩寵たちだ。君は説明するより体験した方が、理解が早そうだ。では……」
(どうやら、俺の体には“重力”の他に“体を金剛石のように固くする力”、“筋繊維が膨大する力”、“体が高速で回復する力”があるみたいやな)
重杉のダイヤモンドの体は瞬く間に回復していく。それを見たエンシェント=ジェントルは魔法陣を構築しながら、独り言を呟く。
「本来は対ベストロン用として、十億ボルトもの雷を生成させておいたのだが……、止む負えないな」
エンシェント=ジェントルは空中に巨大な魔法陣を出現させた。魔法陣から生成された雷は、人の形に変化した。
「“付与・雷神 無慈悲な暴力”」
エンシェント=ジェントルの動きに連動して、人型の雷も動く。巨大な雷の拳が重杉を襲った。重杉は全身をダイヤモンドに変えた。
「馬鹿な俺でも分かるで!金剛石は電気を通さへん!それに加え、俺の筋繊維があれば……」
重杉の体から溢れ出した筋繊維が全身を包んだ。
「そんなこと分かっているさ」
巨大な雷の拳はドイツの方へ向けられた。ドイツの軍事基地にはアトミアル専用の砲台がある。
アトミアル=テュール。彼は第二次世界大戦の人体実験により、電気を帯びることとなった人間である。
(ドイツ謹製……“ファザー・ドナー”。こいつは言うなれば避雷針。俺と接続することで、レールガンに必要な電流を確保することができる!俺自体がレールガンそのものみたいなものだからな……。しかし、試運転すらまともにしていない。それに加え、雷以上の電流は俺の体がどうなることやら……。まあ、やるしかないがな!)
アトミアルは先ほどの雷撃を身に纏った。莫大な電流によって発生した磁界は、発射物に凄まじい加速力を与える。アトミアル自身の爆発と共に、レールガンが放たれる。弾丸は重杉のダイヤモンドの筋繊維を貫き、心臓を撃ち抜いた。あまりの衝撃に重杉の体は爆散する。
『ミスターアトミアル、どうやらやったようですね』
エンシェント=ジェントルが通信機越しに話しかけた。
「ああ、即席とはいえ、中々良い連携だったな」
そのときだった。
「気持ちええ攻撃やったなァ」
その声は間違いなく重杉の声だった。エンシェント=ジェントルは重杉の遺体を見た。そのときだった。エンシェント=ジェントルの右肩を大きな竹が貫いた。そのまま吹き飛ばされた。
「何者だ……」
どうやら大きな竹は、ある男から伸びているようだった。その男は体を蟹の甲羅のようなもので纏っており、両腕から筋繊維がはみ出ている。
「そいつはホワイトキラー……。まァ、正確に言えばちゃうってあの入江が言うとったけど。名前は確か魖。元は人間でどっかの会社のお偉いさんらしいわ。知らんけど」
気づけば重杉の体は元通りになっていた。
『エンシェント!状況はどうなっている!』
エンシェント=ジェントルの耳元からアトミアルの声が聞こえる。
「どうやら戦況はまだこちらに傾かないらしい」
レジェンダリのいる国々では、『終わりを告げる者達』が現れていた。
アメリカのレジェンダリであるキャプテン・スターライトの前には、元公務員ランキング 自衛隊部門第二位のトムクス・ジェスターだった者がいた。しかし、彼も寒田白ノ助同様ホワイトキラー化しており、殆ど自我がない。彼は蛸のように触手を何本も生やし、顔は鱗で覆われていた。ロシアではレジェンダリであるフラーブルと綾釣薄夫が戦っていた。フラーブルのシックスセンス“超物質適合”は触れたものの物質となり、その物質を自在に操ることができる。綾釣も他のメンバー同様に三個の恩寵が与えられている。他の同様に“超再生”、ホワイト=タンクが所持していた“圧縮”、雪地での戦闘で本領を発揮する雪だるまに自我を与えることができる“雪達磨”。この恩寵でフラーブルと戦闘している。各国の戦闘において、全員が所持している“超再生”が強力であり、この恩寵は脳か恩寵を生み出す器官である“寵臓”を破壊しない限り、制限なく即回復するとても厄介な恩寵だった。長期戦において、かなり有利な恩寵であり、数十分後にはレジェンダリが全敗という大敗を喫していたのだった。




