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-Re:ika-警視庁 恩寵刑事部 特殊捜査課 通称 「零課」  作者: 灯火 由夢葉
第二部 第二章 見据える大戦
53/74

52 凶刃

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 暗闇の中、誰かの声が聞こえる。分かるのは女性の声であるということだけだった。聞いたことのない声なのだが、聞いていて何故だかとても落ち着く。何を言っているのか判別はできないが、何かを訴えているのは分かった。耳を傾けるが、何を言っているのか分からない。

 「夢葉!」

 夢葉が勢いよく目を覚ますと、目の前にいた王にぶつかった

 「……良かった。寝息が静か過ぎて、凍死したのかと思ったよ」

 王は額を撫でながら言った。

 「……馬鹿言わないで、こんな快適な場所で死ぬわけないでしょ」

 夢葉がそう言うと、窓の外を見た。一面が氷と海に覆われており、一目でここが南極大陸であることが分かる。夢葉たちは風間が手配した空海両用飛行機で、南極大陸に向かっていた。夢葉は完全に起き上がると、風間の元へ向かった。風間は暖かそうなコーヒーを飲んでいた。

 「ああ、夢葉くんも起きたのか。どうだろう。体調は特に問題ないかな?」

 夢葉は、風間を見て頷いた。

 「なら良かった。もうすぐ目的地に着くから、荷物の整理でもしとくと良い」

 風間にそう言われ、夢葉は再び寝室へ戻った。

 寝室にはリボルバーと防寒着、リュックが置いてあった。夢葉はそれを身に着け、出発の準備をした。


 数十分後。

 船が止まる感覚と音で、到着したこと分かった夢葉は、風間の元へ向かった。

 丁度風間は部屋を出たところであった。

 「準備は良いかな?」

 夢葉は頷いた。数分後、王と海人もやって来た。四人は船を降りた。

 船を降りると、一面が真っ白な世界が広がっていた。天気は霧がかかっているが、悪くはない。

 「す、凄い……」

 夢葉は、思わず息を呑んだ。身体は温かいが、顔は露出しているので、かなり寒い。

 「ここ近年で南極大陸は、急激に気温が低下したらしい。日本人の人口が減ったからの影響と言われているが、明らかに入江氷菓とベストロンの影響だろうね」

 風間はそう言うと、二人に簡易的なガスマスクを渡した。

 「これは、海人君が改造したガスマスクで、着ければ喉が凍傷する心配はないと思うよ」

 夢葉たちはそれを着けると、呼吸がだいぶ楽になった。

 「そう言えば大丈夫なんですか?日本をほったらかしにして。まだベストロンの脅威が日本を脅かしていると思うんですけど……」

 王がそう言うと、風間は口を開いた。

 「日本に関しては雫君がいるから安心して欲しい。その他の国もレジェンダリが警備にあたっている」

 「……そうですか」

 王はそれから暫く口を開かなかった。普段は活発な王は静かで、夢葉は違和感を感じていたが、特に理由を聞くようなことはしなかった。

 吹雪の中、暫く歩くと目の前に、巨大な金属の施設が見えた。明らかにそれは人工物で、不穏な雰囲気を醸し出していた。

 「これから中に入るけど、心の準備は大丈夫かい?」

 風間がそう言うと、三人は頷いた。風間を先頭に施設の中に入った。入口を抜けると、そこには貨物しかない広い空間が広がっていた。百メートルほど先に鉄の扉があった。

 「かなり簡単に侵入できましたね」

 海人がそう言うと、風間は不思議そうに頷いていた。

 「まあ、警備が少ないのは想定内だけど、流石にいなさすぎるな……」

 そのときだった。入口が閉まる音が聞こえた。貨物の影から無数のベストロンが現れた。突然の出来事で四人は反応が遅れた。一番後ろにいた王がエクスカリバーを握った。

 そのとき、風間の脇腹から血が噴出した。風間は吐血し跪いた。目線の先には王が立っていた。風間は王を睨みつけた。

 「何故……だ……」

 風間は倒れる。王の手は激しく震えており、手からエクスカリバーが落ちる。そのときだった。部屋の奥から甲高い笑い声と共に氷菓が現れた。

 「良くやったわ!騎士!」

 王は氷菓の元へゆっくりと歩んでいく。王が氷菓の元へ着くと、氷菓は王の頭を撫でた。

 「どういうことなのよ!氷菓」

 夢葉は叫んだ。リボルバーを氷菓に向けて構える。

 「どういうことって、騎士は私の息子同然の存在なのよ」

 王は俯いたまま、何も言わない。

 「私は今、お前に聞いてるんじゃない!騎士。どういうことか教えて」

 「だから騎士は……」

 氷菓が口を開いた瞬間、氷菓の頬に弾丸が擦った。氷菓は白々しく両手を挙げた。

 「騎士。どういうことなの?」

 王は俯いたまま口を開いた。

 「僕、孤児(こじ)だったんだ。それで氷菓さんに出逢って……。風間さんに出会う前まで良くしてもらってて……。それで、氷菓(お義母さん)に言われたんだ。“風間さんの元に潜入して、あるものの情報を流して欲しい”って」

 風間はそれを聞いて、震えている。

 「騎士!でも、それと風間さんを斬りつけることとは関係ないでしょ!?これは貴方の意思なの!?……貴様の返答次第で、私はお前を撃つ。答えろ!」

 「……止してくれ」

 夢葉を制止したのは、風間だった。風間は夜桜を使って立ち上がる。夢葉と海人は風間を支えるために、風間の元へ歩み寄った。

 「今まで君の気持ちを知ることができなかった。……済まない。……もしもここで私が死んでも、君が責められる必要はない。だから……」

 風間は話し半ばで倒れた。

 「風間さん!」

 夢葉は再び風間を抱きかかえようとするが、足が凍っていて動かない。王は氷菓を見た。氷菓は光悦な表情で王を見ていた。そのときだった。風間が懐に付けていた骸骨の飾りが勝手に震えだし、禍々しい瘴気を放ち、風間を包んだ。

 「あの力を使わせてはいけないわ!ベストロンたち!あれを回収しなさい!」

 ベストロンたちは氷菓の声に反応し、一斉に箱に向かって飛び出した。そのとき、瘴気がベストロンを薙ぎ払っていく。近くにいた夢葉と海人も薙ぎ払われる。数秒の沈黙の後、瘴気の繭から風間が現れた。しかし、先ほどの様子とは異なり、海賊帽を被った体格が一回り大きくなった風間が現れた。顔には立派な髭を蓄えている。懐には夜桜ではなく、日本刀の刃を持つピストルソードがあった。

 「目覚めてしまったか……」

 氷菓がそう言うと、風間?は大きく背伸びをした。

 「何百年ぶりの現世だ!?」

 風間?がそう叫ぶと、施設が大きく揺れた。風間?は辺りを見回すと、近くにいた夢葉に話しかけた。

 「今は何年だ?」

 「に、二〇二二年です……」

 夢葉がそう言うと、風間?は夢葉の顔を覗き込んだ。

 「はァ!?二千年だァ?……そんなに経ってるのかよ……」

 風間?はそう言うと、頭を掻きながら考え込んでしまった。

 「あ、あの風間さん……?」

 「あァ?カザマ?ああ、この身体か。中々良いぞ。暫く借りるな」

 風間?のペースに夢葉はついていけない。その様子を黙って見つめる氷菓と王。

 「……この中で誰が一番強い?」

 風間?がそう言うと、近くにいる人間を見て回った。しかし、あまりの威圧感に誰も名乗り出ない。痺れを切らした風間?は口を開いた。

 「だったら……、嬲り殺しだァ!」

 風間?が叫ぶと、ピストルソードを抜き出した。その瞬間、辺り一帯に凄まじい“麒麟”が放たれた。田中にも引けを取らない凄まじい“麒麟”だった。夢葉たちは跪いた。そのとき、王は離れたところにあったエクスカリバーを手繰り寄せると、風間?に斬りかかった。

 「お前はァ活きが良いなァ!」

 風間?は王を薙ぎ払うと、地面にピストルソードを刺した。すると、ピストルソードから瘴気が溢れ、そこから黒い骸骨が溢れ出した。

 「“黒い大海(ブラック・カリブ)”」

 黒い骸骨たちは手当たり次第に襲い掛かる。夢葉たちは何とか応戦する。王はエクスカリバーを構えた。

 「“(ひかり)(のかた) 流れ(スターダスト)”」

 王の居合が風間?を襲う。しかし、難無く対処されてしまう。

 「速いが弱ェ!」

 風間?は薙ぎ払うと、横一線にピストルソードを振った。その瞬間、施設が真っ二つになった。王は助走をつけて空中で何度も前転をする。

 「“(ひかり)(のかた) 満月(マンゲツ)”」

 先ほどの数倍の威力のはずだが、風間?には手応えがない。風間?はエクスカリバーを素手で掴むと、王を空中に投げつけた。

 「良いか?剣ってのはこう使うんだ……!“アン女王の復讐(アン=グリー)”」

 風間?がピストルソードを振り上げると、火山の噴火のように斬撃が吹き上がる。王はベストロンが盾となり、何とか防いだ。

 「チッ、邪魔が多いな……」

 風間?は再び地面にピストルソードを突き刺すと、先ほどよりも大きな雄叫びをあげた。先ほどの“麒麟”よりも威力が上がっており、更に“麒麟”に“玄武”を纏っている。周りにいた人物たちが傷だらけになり吹き飛んだ。王はエクスカリバーが身を挺して守ってくれたことで、致命傷にはならなかった。しかし、威力は絶大でその場に跪いた。

 「己が剣に守られるとは……、つくづく弱いな、お前」

 風間?はピストルソードを王の心臓に突き刺した。

 「騎士!」

 氷菓が叫んだ。風間?はピストルソードを抜くと、高笑いした。しかし、王の様子が変である。傷口から血が出ていない。

 「王騎士……、貴方の傷口から血は出ない」

 夢葉が囁いた。これは夢葉の恩寵“新論理(ニュー=ロジック)”。対象者の論理を無理やり変えたのである。しかし、王の息は荒い。夢葉が視線を上げると、眼前に風間?が立っていた。刹那、夢葉の喉元を切り裂いた。夢葉の首から血が噴き出し、その場で倒れ込んだ。

 「興覚めだ」

 そのときだった。風間?の背後から黒い液体が突然現れた。そこから突如としてZ、ふくよかな体の男が現れた。風間?はすぐさまZから距離を取った。生存本能が働いた。

 「君が風間か。いや、今はエドワード・ティーチかな?」

 Zがそう言うと、風間?に歩み寄った。風間?はZに斬りかかった。しかし、そこにはZがいなかった。

 「なにをそこでぐずぐずしている?」

 Zがそう言うと、黒い液体の中から入江と國崎敏正が現れた。しかし、その姿はかなり若々しく、三十代に見える。入江は拘束具を恩寵で壊しながらゆっくりと出てきた。容姿は五年前のままである。

 「お兄ちゃん!」

 氷菓が入江の元へ駆け寄ろうとした。しかし、入江の圧縮された“空圧”によって、氷菓の腹に大きな風穴を開けた。氷菓は走りながら倒れ込んだ。

 「今までよく頑張ったなあ、氷菓。お疲れ様」

 入江は嬉しそうに氷菓の死体を撫でた。

 「與」

 Zがそう言うと、入江は耳を傾けた。

 「彼はどうしてここにいるんだい?」

 Zがそう言うと、國崎を指さした。

 「え?貴方様が“修復”の力は必要になると……」

 「確かにそう言ったが、僕はその力さえあればいいのだよ」

 Zがそう言うと、入江は納得したように頷いた。次の瞬間、國崎の上半身が吹き飛んだ。

 「ドクター、直ぐに“修復”を培養、複製して、同胞に配布しておいてくれ。何分かかる?」

 ドクターと呼ばれる男、あたふたしながら答えた。

 「三十分、いや、二十分でやる!良いか?」

 Zは渋々頷いた。入江とドクターは再び黒い液体に包まれ、消えていった。それとほぼ同じタイミングのことだった。

 夢葉の体から眩い光が溢れだした。その光は風間?に向かうと、風間とティーチを分離させた。風間はその場で倒れ込んだ。

 「おっと、思ったより“開化”が早いな……。急いでくれよ、ドクター……」

 そのときだった。黒刀がZを襲う。Zは黒い風切り刃によって防いだ。

 「神楽炎司ィ!」

 炎司とZは相見えた。炎司は刀をしまうと、Zを睨んだ。

 「また僕の邪魔をするのかい?」

 Zがそう言うと、炎司は口を開いた。

 「邪魔も何も、俺はあんたと協力する道を選んだまでで……」

 「五月蠅い!」

 Zは背中から黒く長い棘を無数に出した。棘が炎司を襲うが、未來視に近い“白虎”により、難無く避ける。

 「お前はあのときから何を学んだんだ!俺たちが争っても勝てないぞ!」

 「黙れ!この戦いは僕たちだけで十分だ!来い!蹂躙するんだ!」

 Zの呼びかけに地面が激しく揺れた。施設の外から轟音が響く。地面からベルフェゴールが現れたのである。

 「コイツだけじゃないぞ!僕には忠実な下僕共がいるからな!」


 日本にて。

 「南極大陸で莫大な活動エネルギーを感知した。恐らくベルフェゴール(ヤツ)だ!」

 炎丈がそう言うと、田中が口を開いた。

 「そこにいたのか。道理で見つからない訳だ。しかし、先ずはコイツらの対処が最優先だ。捕間(とるま)さん。大丈夫か?」

 そこは大山杭刑務所だった場所、『終わりを告げる者達』によって、大山杭刑務所は倒壊し、更地同然となっていた。そこにいるのは、闇蜘蛛にサタン、死んだはずの國崎慶喜がいた。

 それは夢葉たちが南極大陸に着く数時間前のことである。

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