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-Re:ika-警視庁 恩寵刑事部 特殊捜査課 通称 「零課」  作者: 灯火 由夢葉
第二部 第二章 見据える大戦
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51 刀の声

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 炎司は人気のない公園のベンチに腰掛けた。炎司はフードを深く被り、目を閉じた。


 数秒後、炎司が目を開くと、目の前には赤く染まった空が広がっていた。それに加え、常に噴火し続けている火山に、人々の呻き声が聞こえていた。炎司は自分の身体が動くか確認した後、歩き出そうとしたときだった。炎司の腕を誰かが引っ張った。それは素戔嗚であった。

 「おいおい、どうして只の人間であるお主が自由に地獄(ここ)に来れるんだ?」

 素戔嗚がそう言うと、炎司は面倒くさそうに答えた。

 「俺の記憶見れたんなら、分かるだろ?話すと長くなるから話したくないんだ」

 炎司がそう言うと、素戔嗚を振り払い、歩き出した。素戔嗚は思わずその場で立ち尽くしていた。そのとき、素戔嗚の肩に誰かの手が置かれた。素戔嗚はその人物を見たとき、一瞬で跪いた。そこにいたのは、刻の神であった。

 「お久しぶりです!」

 「あれ?会ったことあったっけ?」

 刻の神がそう言うと、素戔嗚は深々と頭を下げた。

 「そもそもこんな負け犬に頭を下げる必要はないよ」

 刻の神がそう言うと、素戔嗚は真っ先に否定した。

 「いえいえ!神皇様がいたからこそ、我々も存在できて……」

 「おーい、置いていくぞ」

 炎司に遮られ、二人は会話を止めた。二人は炎司を追いかけた。

 

 暫く歩くと、山よりも巨大な男に出会った。

 「よおぉ、兄弟」

 巨漢は覗き込みように炎司を見た。

 「お久しぶりです。閻魔さん」

 閻魔と呼ばれる巨漢は、炎司を片手で握った。そして自分の顔の近くまで手繰り寄せた。

 「中々会えなかったから、寂しかったぞ、兄弟!」

 「く、苦しい……」

 炎司は自身を炎に変え、抜け出した。

 「ほほう。其方の恩寵と呼ばれる能力は、自身を炎に変え能力なのか」

 素戔嗚がそう言うと、刻の神は訂正した。

 「正確には違うんだけどね。彼の本当の恩寵は、“聖火(せいか)”。歴代の炎を受け継ぐ力さ」

 「なんと強いお力なのでしょうね」

 素戔嗚がそう言うと、話を続けた。

 「それより、あの閻魔が人間と仲良くしているとは、何十億年も生きてますが、始めてみましたよ」

 「それが彼の強みなのですよ……」

 刻の神がそう言うと、炎司の元へ向かった。

 「ここへ来た理由は、一つしかない。閻魔殿。黄泉の扉へ案内してもらいませんか?」

 刻の神がそう言うと、閻魔はかしこまって側近の鬼を呼んだ。

 「勿論ですとも!神皇の御命令なら!この御一行を案内してやれ」

 閻魔がそう言うと、三柱は黄泉への扉へ案内された。


 「ここです。それではまた」

 鬼はそう言うと、静かに去っていった。

 「行きますか」

 炎司がそう言うと、三柱は扉の奥へ向かった。

 扉を抜けると、そこは先ほどの景色とは打って変わって、美しいものだった。辺り一面は薄白く、人々が楽しそうに暮らしていた。

 「ここは初めてですか?素戔嗚殿」

 刻の神がそう言うと、素戔嗚は頷いた。

 「はい……。何とも落ち着く場所ですね」

 炎司は迷うことなく歩き始める。二柱は炎司に着いていく。

 暫く歩くと、大きな白い桜の木が見えた。その桜の木の周りでは、沢山の人々が宴会をしていた。炎司は一つの宴会場所を見つけると、そこに向かって歩き出した。

 「お久しぶりです。皆様方」

 炎司はそう言いながら、深々と頭を下げた。そこいたのは、元『徒陰』大黒柱の大道寺(だいどうじ)政宗(まさむね)と、炎司の父親である神楽(かぐら)大輝(たいき)、そして白い袴を着た赤髪の女性に、髷を結った細身の男が二人いた。

 「おお!炎司か」

 大道寺がそう言うと、炎司を手招きした。炎司は座ると、酒を勧められたが断った。

 「あら、刻の神さんもこちらに……」

 女性がそう言うと、刻の神はそこへ向かった。素戔嗚はただ立ち尽くしていた。

 「あちらは?」

 大輝がそう言うと、炎司が答えた。

 「神様です」

 そう言うと、髷の男たちが驚き、一気に立ち上がった。そして、素戔嗚に向かって深々と頭を下げ、席を譲った。

 「お構いなく」

 素戔嗚がそう言うと、炎司に話しかけた。

 「どうしてこんなところに来た?」

 素戔嗚がそう言うと、炎司が答える。

 「ここは現世よりも時間の流れが遅い。最後の戦いの前にゆっくりしたいんだ。それに(えん)()さん。例の件は……?」

 炎雌と呼ばれる女性は炎司が置いた刀を見ると、その刀を手に取って、鞘を抜いた。素戔嗚は思わず、身構える。

 「あ、大丈夫」

 刻の神がそう言い、話を続けた。

 「彼女、刀鍛冶なんですよ」

 「おい、炎司!また手入れを怠ったな!?良いか?刀というものは生き物だ!ちゃんと手入れしないと、刀が死ぬぞ」

 「済まないな……」

 女性はそう言うと、どこかへ持ち去ってしまった。

 「……奴は本当に生粋の刀鍛冶じゃな……」

 男の一人が呟いた。

 「それより、話とは何なんだ?儂らが邪魔だったら、直ぐに退くが?」

 大道寺がそう言うと、炎司は止めた。

 「大丈夫。それより、刻の神。これから俺はどうすれば良い?」

 炎司がそう言うと、刻の神はゆっくりと口を開き、話し始めた。

 「そうだね……。私が言ったように、“歴史に残らない名刀”も集めたし、後は……、それを融合させる神器が必要なんだよね」

 刻の神がそう言うと、自身が持っている杖の先を使って、地面に図を書き始めた。

 「 “歴史に残らない名刀”……正確にはエクスカリバー、ティーチ、天叢雲剣は、元々は一つの武器だったんだ。その力を分散させて別々のものにしたのが、神皇の一柱、萬乃力神産岐(まんのりきかみむすぎ)。通称“正義(せいぎ)の神(かみ)”。しかし、君彼の行方は分からないから、一つの武器“最神器(さいじんぎ)”は恐らく作れない。代行神である天照大神(あまてらすおおみかみ)がいればね」

 「奴らなら生きてますよ」

 素戔嗚が言った。二柱は素戔嗚を見合った。

 「本当か!?」

 炎司がそう言うと、素戔嗚は頷いた。

 「我々“三貴子”の絆ってやつですかね。生まれた元は同じですからね。……正確には生きてはいなくて、巨大な戦いで我々は、身を滅ぼしてしまったんです。身は滅んでも中身は生きています。俺は出雲大社に生きていた御神木になり、月夜見と天照は、人々を介して養っている。……そして今は、月夜見は一人の女性に。天照は強大な力を蓄えるために、二つの存在に心を移した。それは人間の男女の身体です。炎司、君にとってどれも近い存在であるんだ。天照の宿る身体の持ち主の名前は……、神楽夢葉」

 夢葉の名前を聞いた瞬間、炎司は思わず立ち上がった。

 「夢葉が!?」

 「彼女はそのことを知っているのですか?」

 刻の神が言うと、素戔嗚は首を横に振った。

 「そんなこと言ったら、大変なことになりますよ」

 「じゃあ、直ぐにでも夢葉に言わなくては……」

 炎司がそう言うと、刻の神が止めた。

 「いや、言わない方が好都合かも知れない。南極大陸で、二人で共闘すれば良い話だ」

 刻の神がそう言うと、炎司は黙りこくってしまった。

 「君が夢葉殿を巻き込みたくないのは分かるが、君の傍にいるのが一番安全だろう」

 刻の神がそう言うと、炎司は頷いた。そのときだった。炎雌が帰ってきた。手には刀が増えている。黒い鞘に収まっている刀は厳かな雰囲気を醸し出していた。

 「炎雌さん。それは?」

 炎司がそう言うと、炎雌は興奮気味に答えた。

 「この刀はな!日本いや、それ以上の刀だ!」

 炎雌がそう言うと、刀を抜いた。刀身は漆黒のように黒い。

 「玉鋼に加え、この世界でしか取れない獄炎(ごくえん)(いし)を用いている。軽く丈夫な石だ!玉鋼の相性も最高とみた!非力な私でも……」

 炎雌が刀を白い桜に向かって軽く降ると、白い桜は簡単に斬り落とされた。

 「これはまさしく黒刀……!装飾にも拘っていてな……」

 「もう大丈夫です。それより」

 炎司は細身の剣士を見た。

 「刀が二本あれば、本来の剣術、“鬼喰流(おにじきりゅう)”、いや、お主は“(ほむら)(のかた)”か。それが使えるではないか。お主が稽古に訪れたときは既に隻腕だったからのお。どうじゃ、感覚を取り戻すために軽く手合わせをするか?」

 鬼喰の提案に炎司は頷いた。鬼喰は腰に差した二本の刀を優しく撫でた。

 「“無明(むみょう)”、“無碍(むげ)”……、こうして再びお主たちを振るうことができて嬉しいぞ」

 鬼喰は刀を抜いた。ここは死後の世界。時間という概念は存在するが、ここでの一時間が現実世界の一秒にあたる。鬼喰は更に上裸となる。享年五十歳過ぎとは思えないような繊細な筋肉を鬼喰は纏っている。鬼喰は炎司の刀である“(おお)高吉(たかきち)”の刀身を見て口を開いた。

 「お主、刀の手入れを怠っているな?」

 炎司はバツが悪いような顔で俯いた。

 「良いか?刀は生き物だ。世話をしないと死んでしまう。……刀は人を殺すために生まれた鉄の塊だ。前にも言ったじゃろ?刀を選ぶ権利は私たちにあるが、持ち主を認める権利は刀側にあると。それが分からぬ脆弱者が扱うことで名高き名刀が妖刀と成るのだ。先ずはその“黒刀”に試させてもらうのだ。お主が相応しいかどうかな」

 炎司は頷いた。そこから、十二時間にも及ぶ稽古が行われた。炎司は息を切らしながら動きが洗練されていく。その様子を大道寺、大輝、スサノオを見守る。手合わせの終盤、炎司の“黒刀”が鬼喰を追い詰めた。鬼喰は刀を降ろした。

 「上出来だ。お主が追い求めた最強の剣術、掴めたか?」

 鬼喰の息は上がっていない。炎司は荒く呼吸しながら頷いた。

 「お主、稽古中に考え事をしておったじゃろ?」

 「はい……。すいません。どうしても、“黒刀(コイツ)”のこと考えていて……。俺、決めたとき、先生を追い詰めることができた。……“夢幻(むげん)一刀(いっとう)”。幻をも切り裂く一振り……」

 「悪くないぞ……」

 鬼喰は炎司の肩を叩くと、その場を後にした。

 そこに先ほど炎司を案内した鬼である導鬼(みちびき)が現れた。

 「炎司殿、良いですか。私の裁量で本来集まれない人たちを集めました。特にあの鬼喰という男は何百を越える人を、殺しています」

 「分かってる。それに関しては閻魔殿と話を付けているはずだ」

 「分かってます。ただ、彼に一言述べた方が……」

 炎司は首を横に振った。

 「せめてこの戦いが終わるまでは待ってくれ」

 炎司は二刀を腰に差すと、導鬼に会釈した。

 「閻魔殿に宜しく伝えておいてくれ」

 炎司はそう言うと、炎に包まれ、炎と同時に消えた。導鬼は深い溜め息をついた。すぐ後ろには閻魔大王が立っていた。

 「友人であるお前でも萎縮してしまうか!」

 閻魔大王はそう言うと、導鬼の背中を何度も叩いた。

 「しょうがないさ!奴はただの人間じゃないからな!」

 地獄には閻魔大王の大声の笑い声が響いていた。

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