48 魔導師と星の女王
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
ランスロットは、地面に崩れ落ち、爆発を起こした。
王はエクスカリバーを離すと、地面に手を付いた。王の息は荒く、肩で息をしていた。
「王君!」
すっかり元気になった夢葉が王の元へ駆け寄った。
「怪我はない!?」
「……大丈夫。ただ、これめっちゃ疲れるね」
王はそう言うと、エクスカリバーの異変に気が付いた。エクスカリバーは輝き出し、ネックレスのような形状で、王の手元に来た。
「急に光ったり、ネックレスになったりと、本当にめちゃくちゃな剣だよ……」
王はそう言って、首元にエクスカリバーを付けた。そのときだった。全てランスロットに合体したはずのベストロンが復活していた。
「やっぱり。斬られた場所以外のベストロンは無事よね……」
夢葉は見える範囲のベストロンを数えた。その数は先ほどまでとはいかないが、百体は優に超えていた。夢葉は拳銃を握りしめた。そのときだった。
『待たせたね。ミス神楽さんにミスター王。ミスター風間の救援信号受け取ったよ』
夢葉が上空を見上げると、そこには一人の男が浮いていた。男は指で円を空中でなぞっていた。
「エンシェント=ジェントル……!」
エンシェント=ジェントルは、独り言を呟いている。
「マントン。彼らを助けてきてくれ。……私なら大丈夫。落下死はないように保険で“魔法陣”を張ってあるから」
エンシェント=ジェントルは、マントンと呼ばれる赤いマントにそう言うと、助けに行くように促した。マントはエンシェント=ジェントルから抜け出すと、物凄い勢いで二人の元へ駆け寄った。エンシェント=ジェントルは、マントが離れた途端に地面に勢いを増しながら落ちていく。そのとき、エンシェント=ジェントルは、指を鳴らした。
「君たち二人が、避難誘導に加え、あの巨大なベストロンを退けてくれたお陰でこの数もの魔法陣を生成できた。これで心置きなく……」
空には無数の魔法陣が浮かび上がった。
「“付与・雷神 捻じれる雷”」
空から無数の雷が落ちていき、その雷は、ベストロンを追尾するかのように落ちていく。瞬く間に、半数ほどのベストロンが破壊され、遂には目視で数えられるほどにまで減っていた。
「これが、レジェンダリ……」
夢葉がそう呟いた。王はマントのフカフカさに感激していた。その後、安全な場所に移動したマントは、二人を置いていくと、すぐさまエンシェント=ジェントルの元へ向かった。地面寸前でエンシェント=ジェントルは回収され、一気に急上昇していく。残りのベストロンは撤退していった。エンシェント=ジェントルは、優雅に二人の元へ向かった。
「怪我はないかい?」
二人は頷いた。その様子を見たエンシェント=ジェントルは、優しく微笑んだ。
「済まないが、もう行かなくては……。レジェンダリを必要としている人は沢山いるんでね」
そう言って、エンシェント=ジェントルはマントで全身を包むと、マントと共に一瞬で消えた。
二人がロンドンに着いたのとほぼ同時刻。
風間は船に揺られていた。彼がいるのはカリブ海の近くの海である。
「船は初めてですか?」
風間は乗組員に話しかけられた。
「いや、以前に一度だけ……。それより、この近くに海賊エドワード・ティーチの遺物があるという海底遺跡があるんですか?」
「ああ、半分本当で半分嘘だがな。……というのも、海底遺跡があるのは本当だが、そこに遺物があるのかは分からねえ。ただ、よくそこの海では海難事故が起きるんだ。それを観光客が面白半分で“ティーチの呪い”って騒いでいるだけさ」
「なるほど」
風間は乗組員に一礼して、船頭へ向かった。そのときだった。船が急停止した。風間は思わず身を乗り上げそうになり、必死に堪えた。何とか持ちこたえた風間は、辺りを見回した。海中に何かがいるのが見えた。それは複数のベストロンだった。ベストロンたちは船底を掴み、持ち上げようとしている。風間は鞄に忍ばせておいた夜桜を取り出した。そのときだった。
「やっぱりここだったかあ……」
風間は声のした方向を見た。空中に一人の子どもが浮いていた。その子どもは推定で小学校低学年であるように見えるのだが、スーツを着こなしていた。
「君が風間君だね」
子どもと風間は会ったことがない。それなのに風間の名前を知っていることに驚いている。
「君は一体何者なんだ!?」
「……あれ?“彼女”から何も聞いていないのかな?」
子どもはそう言うと、指を鳴らした。すると、そこには無数のベストロンが現れた。
「その恩寵は入江與の恩寵の一つでは……?」
「ああ、これか。これはね、彼が幽閉される前に借りたのさ」
子どもはそう言うと、次に“黒い何か”を手から放出させた。その物体が零れ落ち、ベストロンに触れるとそのベストロンは溶けてなくなってしまった。風間は本能的にあの物体に触れてはいけないと悟った。子どもは有無を言わず船にその物体を投げつけた。物体は生き物のように船体にくっつき、船を蝕んでいった。船体が大きく揺れ、風間は思わずしゃがみ込んだ。
「君は少々邪魔な存在になりそうなので、ここで消しとくね」
子どもはそう言って、黒い物体を放出させた。そのときだった。子どもの頬に光る何かが飛んできた。子どもは勢いよく吹っ飛んだ。
「“白虎”なるもので、人の助ける声が聞こえた!でももう大丈夫!ワタシが来たからには、もう誰も死なないよ」
そこにいたのは、アメリカのレジェンダリのキャプテン・スターライトであった。
「スターライト……」
風間はそう呟くと、スターライトは風間を見た。
「ああ、君は日本の!先日は済まなかったね!シズクから、いろいろ言われて、パトロールがてら来たのさ!」
スターライトは、マントをなびかせながら言った。その直後、巨大なイージス艦数隻に小型戦闘機数十機がやって来た。
『キャプテン!お前はいつも一人で突っ走りやがって!!』
戦闘機に乗る男性がそう叫ぶと、スターライトは微笑んだ。
「でも、ワタシが直接飛ぶ方が早い!」
この数分の間に子どもは既に戻って来ていた。
「……ワタシの“星”の攻撃を受けても、あんなピンピンしてるとは、やはり普通の子どもではないのだな!貴様!何者だ?」
スターライトがそう言うと、子どもは服の汚れを叩きながら言った。
「“Z”」
「“Z”……だと?」
風間は過剰に反応した。勿論、“彼”から名前を言われていたからである。ある時代では陰陽師、ある時代では戦国武将とどの時代にも実在する存在だと。
「……その反応。やっぱり言われてたのか。まあ、言ったところで何も変わりしないがな」
スターライトは終始訳が分からず、風間とZを交互に見ているだけだった。
「何者なんだ?奴は」
「……詳しくは分かりませんが、彼一人で国、いや、地球一つ分の武力があるとか……」
風間がそう言うと、スターライトは高らかに笑った。
「こんな状況でそんな冗談が言えるなら、大した怪我はしてなさそうだな。歩けるなら、その船の乗員の安否確認と避難指示を行ってくれ」
スターライトはそう言うと、Zの直ぐ近くまで寄っていった。
「Zかなんだか知らんが、アメリカ(ワタシ)に喧嘩を売るとは、いい度胸だな!良いだろう。ここで楽にしてやる」
スターライトがそう言うと、指を鳴らした。すると、空中に幾つかの輝く物体が現れた。
「“星”」
Zは輝く物体を注意深く観察した。
「これは……、星?」
「良く分かったな!その通り。私は星を扱い、自由に戦闘する!正に自由の女神と言うわけだ!」
その瞬間、スターライトがZの視界から消える。と思いきや、Zは背後から強い衝撃で吹き飛んだ。Zは思い切り海面に叩きつけられた。Zは抵抗しようと、振り向いた。しかし、その瞬間、スターライトの拳がZの腹部に振り下ろされた。ソニックブームにより、周りの船が大きく揺れた。しかし、Zは顔色を変えずにスターライトを分析していた。
「“瞬間移動”?……いや、星間で高速で移動しているのか。面白い恩寵だね」
Zはそう言うと、人差し指をスターライトに向けた。スターライトは嫌な予感を感じ取り、星を使って避けた。Zの指から黒い物体がレーザー光線のように発せられた。その瞬間、その黒い物体にスターライトが引き寄せられている。スターライトは抵抗しようと、星からレーザー光線を発し、相殺させた。
「凄いね。全力ではないと言え、僕の“次元歪”を相殺させるとは」
「……今のブラックホールなのか?」
スターライトがそう言うと、Zは嬉しそうに頷いた。
「今の一瞬で何か分かるとは、やはりレジェンダリは違うね」
Zは再び指を鳴らした。すると、どこからか刀が現れた。
「久し振りだね、狂皇」
狂皇と呼ばれる刀は、刀身が3つあり、まるで獣の爪のようだった。
「……悪趣味だな」
スターライトがそう言うと、Zは不敵に微笑んだ。
「これでも“歴史に残らない名刀”の一刀なんだけどね」
Zはそう言って、刀を構えた。スターライトは再び身の危険を感じ、星を使って避けようとした。Zは刀を振り下ろした。
「“次元限無斬り”」
スターライトは完璧に避けたつもりだったはずだった。しかし、スターライトの片腕が切り落とされていた。スターライトは激痛に顔を歪ませた。
「君の星による移動は目には見えないが、ただ単に光速で移動しているだけだからね。次元に直接干渉してしまえば何てことはないよ」
「スターライト!」
風間は思わず殺意をZに向けた。その瞬間、Zからの威圧に足が力を失い、その場に崩れ落ちた。すこしでも気を緩めれば、気絶してしまいそうだった。
(これは……!雫君の!?いや、それ以上か……!?)
「まだ、僕に歯向かうのか……。分かった。僕が直接君を殺すよ」
そのとき、狂皇が風間の目の前に飛んできた。風間は思わず目を瞑った。しかし、何も起きず、風間は恐る恐る目を開けた。風間の目の前には、赤毛の男が立っていた。
「神楽炎司君……!」
「やはり来たか、神楽炎司。いや、“創始神”」
二人は暫く睨み合った。




