46 Legendary
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
翌日(正確には四時間後)の朝七時。
コーヒーの匂いで目覚めた夢葉は、居間にいた風間に挨拶をする。風間は既にスーツを着ており、朝食の準備をしていた。
「お早う。九時には向こうには着いていたいから、そのつもりで準備をお願いするよ。朝食準備しておいたから、食べな」
夢葉は頷くと、開いている席に座った。テーブルの上には、“三人分の食事”が置いてあった。数分後、上の階からドンドンと階段を駆け下りる音が聞こえると、勢いよくドアが開くと、そこに夢葉と同い年ぐらいの男が現れた。
「いつまで寝ていたんだ、騎士」
騎士と呼ばれる男は、ぼさぼさの髪を掻きながら、開いている席に座った。席に座るなり、夢葉を見て椅子から転げ落ちた。
「だ、誰!?」
男は酷く動揺しているようだった。
「こちらの女性は、神楽夢葉さん。以前話さなかったかな?これから彼女も私たちと行動を共にする」
男は起き上がり、夢葉のもとに寄ると、手を差し出した。
「俺の名前は、王騎士。よろしく!」
夢葉は王の手を握った。
朝食を済ませた三人は、日本に新設した“コネクト”と呼ばれる施設へ向かった。この施設は日本が開国となった際に、世界各国を繋ぐ施設として設立された。このビルはそれに加え、ベストロン計画の日本拠点として存在してもいる。地下階には、製造施設や研究施設が存在する。三人は地下階の秘密会議室へ向かっていた。
「はあ……」
王は深い溜め息をつきながら、トボトボと歩いていた。
「何で溜め息をついているの?」
夢葉がそう言うと、矢継ぎ早に王は解説した。
「君もあの場面にいれば、嫌でも溜め息をつくさ!」
「まあ、分からなくもないな」
風間が口を挟んだ。
「今回の会議は、半期に一度秘密裏に行われる会議なのだが……、まあ、口で言うよりも直接見た方が分かるよ」
風間はそう言うと、進行方向に目を戻した。数メートル先を見覚えのある人物が歩いていた。
「心田総理!」
夢葉がそう言うと、心田が振り向いて嬉しそうな表情を浮かべた。
「憾、神楽さん。久し振りだね」
心田は夢葉に近づいた。
この二人は、高校時代は繋がりがあまりなかったのだが、そもそも官房長官時代に何度か顔を合わせや護衛などで関わっていた。その後、心田が総理大臣になった後も何度か護衛にあたり、親睦を深めていた。
「君もここに来たのか」
心田がそう言うと、少し苦笑いを浮かべていた。
「心田さんもこの会議に苦手意識があるんですね。そんなに過酷なんですか?」
「過酷というか……、なんだろうな、癖が強いんだよな」
心田がそう言うと、頭を掻いた。心田が風間を見ると、軽く手を挙げた。
「会議以来ですね。お元気ですか?」
風間がそう言うと、心田が笑顔で返した。
「日々、色んなものに苛まれていますよ。そちらも調査は順調ですか?」
心田がそう言うと、風間も同じように苦笑いをしていた。
「ボチボチですかね……」
風間がそう言うと、腕時計を確認した。
「もうすぐ会議が始まりますよ、急ぎましょう」
「大丈夫ですよ。彼らが定時に集まった試しがないのでね」
そう言うと、のんびり四人は会議室へ向かった。
会議室に入ると、中は薄暗く十四個のモニターとパソコンがあるだけだった。四人はパソコンの前に集まった。パソコンを起動すると、パソコンに繋がれたモニターも起動した。すると、連動するように半分のモニターも起動した。夢葉はモニターに映し出された人物を見て驚いた。そこに映っていたのは、アメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中国、インドの六国の首脳たちであった。夢葉はその光景に、思わず後退る。そのとき夢葉は後ろの何か硬いものにぶつかった。夢葉は一瞬で人間の感触だと気づき、後ろを見て謝ろうとしたが、ぶつかった人物を見て、更に驚いた。
そこにいたのは、田中雫であった。田中は夢葉を見下ろしながら何も言わず、心田の元へ向かった。心田に近づいても何も発さず、田中は心田の横にあるソファに腰を下ろしたのだった。
「さっさと始めるぞ、総理」
田中がそう言うと、会議室の空気が一気に重くなった。王は夢葉の服を軽く引き、耳元に口を近づけた。
(なあ、言ったろ?恐くてもう帰りたい……!)
「聞こえてるぞ、王」
田中がそう言うと、王は一気に夢葉との距離を置き、直立不動となった。膝は生まれたての小鹿のように震えていた。
「……まだ、各国の“レジェンダリ”は揃っていないのか……」
「レジェンダリ……?」
夢葉は思わず反芻してしまう。
「風間さん」
田中は風に視線を向ける。
「俺は暇じゃない。出来れば物事を円滑に合理的に行いたい。本会議で必要最低限の情報は新入りだろうが把握させてもらいたい」
「……すみません。神楽ちゃん。レジェンダリというのはね……」
「待ってください!」
風間との会話を夢葉は遮った。
「田中先輩!私は夫丈高校のOBです!一度貴方にあったこともあります!貴方がどれほどの人間だったかを知っています。貴方のような人がどうしてしまったのですか!」
夢葉は田中に向かって言葉を並べるが、田中には響いていない様子だった。
「止してくれ」
そこに炎丈鉄郎が現れ、夢葉を止めた。
「アイツが変わったのは、百目鬼のせいなんだ。アイツの母親と妹は百目鬼の災害に巻き込まれ亡くなったんだよ。それに涼も……。アイツは今、時間に囚われているんだ。あまりアイツを疲れさせるな。不眠症なんだ」
炎丈はそう言うと、田中の元へ歩いていった。
「……そういうことなんだ。話を続けてもいいかな?」
風間にそう言われ、夢葉は静かに頷いた。
「君は海外にも恩寵のような力を持っている人がいたのは、知っているよね?」
夢葉は先ほど同様に頷いた。
「海外では、彼らをミュータントと呼び、日本で言う自警団と同じように役職を与えた。そして、政府や国家に最も多大な貢献をした人物をレジェンダリとして、表彰するようになったんだ。日本で言う公務員ランキングのナンバーワンってところかな」
「なるほど……。ここに田中先輩がいる理由ってまさか?」
「うん。彼が一応日本のレジェンダリ扱いだね。それに、彼はベストロン計画に携わっているからね」
「説明はそれくらいでいいだろ」
田中の発言によって、二人の会話は終わってしまった。どうやら、役者が揃ったようだった。
「これから、ベストロン計画の緊急会議を行います。……キャプテン・スターライトは自由ですね」
心田がそう言うと、アメリカの首脳は大声で笑った。
「彼女は自由が売りなのさ!まァ、別に彼女がいなくても物事は進む!」
アメリカの首脳はそう言うと、田中を見つめた。田中は表情一つ変えなかった。むしろ眉間の皺が深くなっていた。アメリカの首脳の額には汗が一滴流れた。
「さあ、そんなことよりも早く議論をしよう」
声をあげたのは、イギリスのレジェンダリのエンシェント=ジェントルだった。
「そうだ!我々は楽しくおしゃべりするために集まったのではない!」
ドイツのレジェンダリのアトミアル=テュールが机を叩きながら言い放った。
「では先ず、各国のベストロンの出現情報を提示しよう。風間さん」
田中がそう言うと、風間は口を開いた。
「はい、日本では先日、十体目の氷を纏ったベストロンに遭遇しました。恐らく同じ製造者だと思われます」
風間が言い終えると、首脳たちの間でひそひそと会話が聞こえた。
「もう十体目か……。既にジャパンにまで被害が出ているようだな。ドイツでは、革命のように日々ベストロンが現れるがな!」
「イギリスも同じく」
イギリスの首脳はそう言うと、中国を指差した。
「ベストロンの製造元はチャイナだよね?お宅らが裏で糸引いてるんじゃないの?」
イギリスの首脳にそう言われ、中国の首脳は机を叩き、怒号を挙げた。
「こちらはあくまで体だけだ!コアの開発は、ジャパンなはずだろ!」
「何度言わせれば良いんだ……?」
田中の発言に、一瞬にして沈黙が訪れた。
「どの国も既に製造を中止している時点で、国単体の行動ではないのは明らかだろ。恐らくこれはベストロン自身の行動だ。それに加え、国ではなく個人でベストロンに協力している者がいる」
「誰なんだ?」
アメリカの首脳がそう聞くと、田中は首を横に振った。
「まだ分からない。そこで俺から頼みたいことがある。……先日、ここにいる風間さんがベストロンに有効な手立てを見出した。それは“歴史に残らない名刀”と呼ばれている武器だということだ。そして、俺の友人たちの尽力で、その名刀が四つあり、その内三つの居場所を突き止めた。今、その情報を転送する」
田中はそう言うと、各国に情報を転送した。
「これは……、また、面白いものを見つけて来たね」
エンシェント=ジェントルがそう言うと、アトミアル=テュールは手を叩いて笑い出した。
「エクスカリバーにティーチとは!ガッハッハッハ!」
田中は表情を変えない。
「大マジだ。どれも確証はないが存在している代物だ。エンシェント。エクスカリバーの調査を風間さんのグループと共にお願いしたい。それにアトミアル。お前にも妖刀ティーチについて協力して貰いたい。翁王とシルヴィア、フラーブルは自国の警戒を引き続き頼む」
「……まあ、それしか手掛かりがないなら、しょうがないな」
アトミアル=テュールはそう言うと、硬貨を弄りだして黙りこくってしまった。
「皆さん、頼んだ」
田中はそう言うと、席から立ちあがり、去って行ってしまった。
田中が去った後、会議室に沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのは、インドのレジェンダリのシルヴィアだった。
「皆さんすみませんね。インドは今、内乱で再び乱世になってしまって……」
中国のレジェンダリの翁王が口を開いた。
「中国も同じく、反乱が続いておる……。鎮圧で手一杯じゃ」
「右に同じ」
ロシアのレジェンダリのフラーブルが言った。
「ならばこの中で一番海上を自由に戦えるのは、スターライトよね。でも生憎の欠席……。アメリカの首脳さん。出来れば彼女に伝えておいて」
シルヴィアがそう言うと、アメリカの首脳は親指を綺麗に挙げた。
その後、ベストロンの少々の報告を交わし、会議は無事?終わった。
「お疲れ様、神楽ちゃん。大丈夫だった?」
風間は汗を拭いながら、夢葉に言った。夢葉も溢れ出る汗を拭いながら頷いた。
「田中先輩のあの圧は何なんですか。もしかして、“神域”ですか?」
夢葉がそう言うと、風間は頷いた。
「“麒麟”を知っているのか。なら説明は不要だね。彼の“麒麟”はほぼ常時発動中だよ。全く胃腸炎になってしまうよ……。それより、先ほどは詳しく説明できなかったけど、ベストロンについて、詳しく教えようか」
夢葉は頷いた。
「少し長くなるから、施設内に食堂があるから、軽食を摂りながら話そうか。騎士……」
風間が王に話しかけたが、王はなんと立ったまま気絶していた。二人は炎丈に王を任せて、食堂へ向かった。
食堂はお昼時で、社員で賑わっていたが、席は余裕があった。二人は人気の少ない席に向かい、座った。
「少しは落ち着いたかな?」
風間がそう言うと、夢葉は頷いた。
「ベストロンって何が目的なんですか?」
夢葉がそう言うと、風間は口を開いた。
「ベストロン計画が始まったのは、二〇〇〇年。田中幸作さんが先立って始めたんだ。日本自体鎖国って言ってたけど、最小限の交易はしてた。そんな中で田中さんは海外の自立二足歩行ロボットに興味を示してね。それが始まりなのさ。実際、当時はインターネットの普及もあって海外の情報は規制されながらも閲覧することはできたからね。彼は独学でベストロンの前身である自立二足歩行ロボットの完成寸前まで作り上げてしまったのさ。同時に人工知能の開発も行い、人工知能が完成したのは、二〇一七年。完成させたのは雫君だったんだけどね。しかし、秘密裏に行っていた研究が政府にバレてしまってね。殺されるかと思ったら、公安が管轄することとなった。その後、雫君は大怪我を負い、最終的にはあんなことになってしまったんだよね。決定打は百目鬼の再来の際に、彼の大切な人が植物状態になってしまってね……。彼は今それを治す方法を模索しているんだ。炎丈君から聞いた話によれば、彼の平均睡眠時間は数分程度らしい。
話を戻そうか。ベストロンについてだが、制作理由は海外の恩寵者のミュータントから一般人を護ることが目的とされている。しかし、試作品一号が完成したときに、ベストロンにバグが生まれてしまってね。ベストロンが暴走するようになってしまった。奴は自分自身で制作所を破壊し、身を隠した。そうして、奴は別のどこかで自分を複製しているとされている。現に中国やロシアなどでは大量のベストロンによって襲われているからね」
「奴らの目的は何なんですか?」
夢葉がそう言うと、風間は答えた。
「簡単に言えば、人類の滅亡だね。奴らは一般人を護ることをプログラミングした際に、ミュータントの撲滅と一般人の命を天秤にかけた際に、両方を滅亡させる方が合理的だと判断した。……だが、実際には裏で誰かが糸を引いているというのが、田中君の見解だ」
「……なるほど」
「それと、さきほどの話なんだが、私は“妖刀 ティーチ”をドイツのレジェンダリであるアトミアルさんと一緒に行くから、騎士と神楽ちゃんはイギリスへ行って“エクスカリバー”を取りに行って欲しい」
「別にいいんですけど……、手掛かりはあるんですか?」
夢葉が言うと、風間は
「ない」
とだけ言っただけだった。




