44 終わりの始まり
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
「百目鬼を食い止めた世界線は初めてだ。この世界線の君は稀有だよ」
炎司が目を開けると、そこは何もない空間であった。
「ごめんね。もう少し早く助ければ良かった」
本当に何もない空間であった。白と言えばいいのか透明と言えばいいのか、永遠と広がるその空間に、声の主はそこにいた。
「名無氏さん……?皆は?……ここはどこですか?」
炎司は訳も分からず、名無氏に質問攻めを行う。
「落ち着いて。先ずはこれを見せてあげよう」
名無氏はそう言うと、杖で床を突いた。すると、二人の下に先程の光景が映った。炎司は思わず後退る。
「これは君が見た世界線だよ。これだと、駄目なんだ。分かるかな?と言っても分かるわけないか」
名無氏はほぼ独り言で話を続けていた。
「改めて、自己紹介するよ」
名無氏はフードをめくり、サングラスを取った。すると、長髪が現れる。
「僕の名前は……、いや、刻の神と言っておくよ。ここは僕が作り出した時間と時間の間だよ。まあ、時間は人間が作り出した数字に過ぎないけどね」
突然の言葉に炎司は度肝を抜いた。目の前にいるのは神である。炎司は信じられないと同時に納得がいった。この空間は神でないと作れないことに。
「早速本題に行くんだが、このままだと、日本、いや宇宙が終わってしまう」
刻の神はそう言うと、炎司の目を見つめた。炎司は見えない左目は使わず、右目だけで刻の神を見つめた。彼は嘘をついているようには見えない。
「話を聞かせてください」
炎司がそう言うと、刻の神は優しく微笑んだ。
「先ずはこの話から話そう。この宇宙の始まりは、無から突然ビッグバンにより宇宙が誕生したとされているが、正確には違うんだ。無から誕生したのは“輪廻”と“無限”という……、うーんと、君たちの言葉で言えば“概念”だね。輪廻が生まれ、様々な概念が生まれた。ビッグバンも概念によって生まれた副産物にすぎないよ。輪廻を辿り宇宙や地球が誕生し、そこに生命を宿ったのも輪廻さ。輪廻は本能に従い、宇宙に三大要素を作り上げた。それは君たちの言葉で言えば、“空間”、“時間”、“力(正義)”の三つだ。輪廻はその概念を石のような鉱物に顕した。その後、輪廻は神という概念を作り上げた。その石は、神の王である“神(しん)皇”が管理していた。僕は時間をね。
“神皇”よりも上位の存在がいるんだけど、それが創始神(しん)と終焉神(しん)だ。彼らは輪廻から直接派生した存在なんだ。つまり、概念に近い存在ってこと。彼らは常に対立していた。ビッグバン(初めの対立)で宇宙が誕生し、創始神が地球に生物を栄えさせても、終焉神によって隕石や氷河期によって滅ぼした。終焉神はその後も様々な場所で戦争を起こし、あるとき、この二柱は巨大な闘いに発展するんだ。その影響で、また新たな概念が生まれたんだ。それが“混沌”。混沌によって輪廻の理が変わってしまった。輪廻は歪となり、ほぼ混沌がこの概念を支配するようになった。空間を操る石も混沌に奪われ、半ば強制的に世界は破滅の輪廻を辿ることになったんだ。
……漸く本題に入れるよ。この混沌を討つのは、炎司君。君だ」
突如として現れた自分の名前に炎司は驚くが、刻の神は話を続けた。
「本来であれば、世界線に干渉できる人はいない。絶対に」
「絶対に?」
炎司は首を傾げる。刻の神は話を続けた。
「詳しく言うとね、この世界はね譜面のように多くの世界が存在するんだ。それを多元宇宙と人間は言うね。それは平行線じゃなくて心音みたいに定期的に交わっているのさ。簡単に言えば、朝の君がご飯を食べた世界とパンを食べた世界があったとする。それぞれ違う道を進むが、同じタイミングで排泄するとき、その排泄は世界線の交わりってこと」
「なるほど。では、俺が何をしようとその世界線は変化しないってことですね」
「そうなんだ。一人間が世界線をどうこうできる訳ではない。しかし、君は干渉できる。干渉できるのは神以上の力をも持つ存在、つまり君は神(しん)皇かそれ以上……、つまり君は、創始神である可能性が高い。それに、創始神は炎を操る。君以外で炎そのもの恩寵者いなかったでしょ?」
炎司は少し思い出した後、頷いた。
「つまり、俺は、本当は神でこの輪廻を正すのに必要ってことですね?」
刻の神は頷く。
「僕たちは長年、混沌に挑んできたが、その度に敗北を期していた。それは、戦いを好まない創始神と、終焉神が協力しないからだ。だから、君には一つのお願いをしたい。君は今から、鎌倉時代に飛んでもらう。その時代に一度二柱が邂逅する。そこで創始神は力の半分以上を終焉神に奪われてしまう。均衡が崩れれば、それを察知した混沌が二柱を殺すだろう。幸い混沌は今も尚、二柱が死んだと思っているからね。……頼む」
刻の神は頭を下げる。炎司は焦って、刻の神の頭を上げようとする。
「構いません。でも、どうやって、鎌倉時代に?」
炎司がそう尋ねると、刻の神は自身の左目を指差した。
「僕は実は既に死んでいる。今の僕は路地裏に死にかけていたホームレスに宿っているに過ぎない。君を依り代にする。この力を使いこなせるかは運だが、君に賭ける」
刻の神は、炎司の失われた左目を人差し指で押さえた。すると、炎司は不思議な感覚に襲われる。気が付くと左目が見えことに気づく。
「済まないが、僕には治癒能力がないから、その左腕は治せない。だから、これは僕からのもう一つのプレゼント。神の特別な力が宿った義椀だよ。それじゃあ、僕は君の心の奥からサポートするから」
刻の神はそう言うと、徐々に消えていく。炎司自身も消えていることに気づいた。
炎司が目覚めると、そこは雑木林の中だった。遠くから、男性の声が複数聞こえる。
第一幕 完




