41 麒麟、猛き獣なり
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
炎司はゆっくり大道寺の瞼を閉じさせた。炎司は國崎を睨んだ。刹那、炎司の周りに赤黒い殺気が具現化した。
(これはまさか……、“麒麟”!?)
「やっぱり炎司君も“麒麟”を持つのか……。親子だね」
心田がそう言うと、優しく微笑んだ。
“神域”とは本来、恩寵が目覚めた際に人間が本能的に遺伝子の奥深くに存在する力を、疑似的に発現することができる力である。つまり人間(古代人)は、空を飛び、水中を泳ぎ、鱗のように体を硬くし、自身の危機を察知する力を有していたということになる。その中でも“麒麟”は特殊であり、古代人の中でも古い血、つまり人ではない時代からの産物である。この古い血を呼び覚ますには、個人差があることから、“麒麟”を扱える者は数少ない。
炎司の“麒麟”の発現と同時に、炎司本来の恩寵が開化する。炎司の恩寵は地球が生まれる前から発生した炎の力、それを聖火の如く受け継いでいく恩寵である。それを受け継いできた恩寵者の炎の熱が増していき、炎司の代では太陽に近い力を有する。歴代の恩寵者はその恩寵を“聖火”と呼称し、一家代々と受け継いできた。
炎司の本来の恩寵“九尾の狐”は、炎司の寵臓に刻まれている炎司自身の恩寵である。つまり、炎司及び神楽家の当主は“恩寵二つ持ち”ということになる。この世に存在する恩寵二つ持ちは年々研究されているが、何分該当者が少ないため(禰宜猛也、百目鬼拳武)、明確な理由は不明であり、一説では元々双子であったが、体内で一人が吸収されることで、二つの恩寵を持つという説が有力であるが、真偽は不明である。
炎司は自分自身の体を燃やす。
「“幻獣化”」
背中には九つの炎の尾を持ち、代々受け継がれてきた炎が炎司に纏う。
(感じたこともない程の力を感じる。これなら、奴を止められる)
「もう時間がない……。オヤジの仇、取らせてもらう」
炎司がそう言うと、國崎は両手を地面に触れる。先ほどの八岐大蛇が再び、炎司に襲い掛かる。炎司は掌を差し出す。掌から小さな太陽が現れる。太陽は強大な熱放射を行い、八岐大蛇を破壊した。その瓦礫をかいくぐり、炎司は死角から國崎に拳を当てる。強力な炎を纏った炎司の拳は、國崎を吹き飛ばした。
そのときだった。突如として次元が歪み、國崎の前から百目鬼拳武が現れた。
「久々の移動は難しいな」
百目鬼は頭を掻いている。百目鬼は目の前にいる炎司を睨んだ。
「お前、強いな。“白虎”でビンビン感じるぞ」
百目鬼は微笑んだ。炎司は有無言わずに殴りかかった。しかし、直ぐに対応され、殴り返される。
「躾がなってないな。この世界を破壊する前に、お前を躾けるか」
百目鬼はそう言うと、“次元”による高速移動をし、瞬時に炎司の背後を取った。炎司は“白虎”で対応するが、早過ぎて間に合わ。炎司の左指が何本か吹き飛ぶ。
「“穿亜轟鳴”」
炎司の背後が抉れるように吹き飛ぶ。
「Zからの命令だ!そこの爺さんは殺すな、お前は殺してもいい!」
百目鬼は、炎司の下に“次元”を発生させ、強制的に場所を移動した。国会議事堂は崩壊寸前である。炎司たちは皇居外苑にいた。
都心部では、先の戦いで機能を失いかけている警察と自衛隊が連携し、WKの制圧を行っている。しかし、全国規模の戦いとなっており、都心ですら人手が足りていない。そんな中で夫丈高校の生徒教員が協力してWKの鎮圧を行う。しかし、被害は甚大であり、都心部は焼け野原、多くのビルは崩壊していた。
「おい!ここにも人がいるぞ!」
「直ぐに安全な場所に!」
「馬鹿言え!安全な場所なんてあるかよ!」
都心部ではホワイトキラーと戦う人たちの声の他にも、様々な声が響いていた。
「なあ!芯!」
戦闘中に、真田が三上に話しかける。
「後、敵はどのくらいだと思う?」
「少なくとも二桁!劣勢なのは変わりないと思う!」
三上は、巨大な弾丸を誘導しながら言う。そのときだった。遠くから海人が叫びながら走ってきた。
「皆さん!ここから離れろお!」
海人がそう叫ぶと、地面が大きく揺れ始めた。三上は嫌な予感を感じた。次の瞬間、地面の割れ目から巨大な螻蛄の爪が現れた。それはコンクリートを砕きながら現れる。WKなのか分からないその男は、野太い呻き声と共に現れた。
「なんだこいつ!だいだらぼっちか!?」
三上がそう言うと、巨大な男の爪が真田を襲おうとしていた。そのときだった。人の二倍近くある瓦礫が、どこからともなく飛んできて、巨大な男の爪を弾いたのだった。
「お前……」
巨大な男の野太い声が辺りに響く。瓦礫が飛んできた方向には、田中がいる。
「久し振りだな……。ベルフェゴール、だったか?嫌な予感がしたから、この近くに警備を異動して良かったよ」
ベルフェゴールは何かの恩寵なのか、体を縮めると二メートル程の大きさになった。
「お前、俺に傷を付けた」
ベルフェゴールは、左鎖骨の小さな傷を指差した。
「うるせえ。俺はお前に片目奪われてんだ」
田中は右目を軽く叩きながら言った。田中の発言の後に、炎丈と操園が空からやって来た。三人はベルフェゴールを見据えていた。
「田中君」
真田が田中を呼ぶ。
「真田先生。貴方は早く離れて身の安全を。ここは俺たちに任せて下さい」
田中がそう言うと、真田と三上はその場から離れたのだった。
「お前のこと。色々調べたよ。“七つの恩寵”を持ちながら、ホワイトキラーのような自我を失うことなく、Zと呼ばれる子どもに服従してるってな。約一年前、お前に殺された人たちを代表して、お前を捕まえずに殺す」
「お前、まだ、死んでない」
ジャイアントがそう言うと、田中は言葉を紡いだ。
「いや、“あのとき”に俺たちはもう死んだよ」
三人は構えたのだった。




