40 盛者必衰之理ヲ顕ス
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
ここは、日本に浮かぶ人工島。名前は大山杭。そこにたった一つある施設、それは“大山杭刑務所”。闇蜘蛛は施設が見える木の上で座っていた。
「なあ、ドクター。僕はいつになったら、あの中に入れるんだ?」
「それは……、もう直ぐですよ。君が言ったんじゃないですか。組織は内部からの破壊が一番脆いって」
闇蜘蛛がそう言うと、横に入江が現れた。
「やあ、待たせたね。邪魔者が多くて」
「うす」
少々の沈黙、入江は大山杭刑務所の前に向かった。闇蜘蛛のインカムから、入江の声が聞こえる。
「Zさん。入江さんが到着しました。作戦を決行します」
『分かった。頼んだよ』
おそらくZの声が闇蜘蛛のインカム越しに聞こえた。
『さあ、日本、いや、世界……、宇宙全体をひっくり返そうか』
大山杭刑務所内部にて。
「本日はどうもありがとうございました。五味副看守長。私のためにお時間を頂いて」
入江はそう言うと、五味に軽くお辞儀した。
「……いえ。本日は禰宜猛也の面会ということで宜しいでしょうか?」
五味の少し機械じみた声に、入江は何の素振りも見せなかった。どうやら、外の様子を把握していないらしい。
少し歩くと、そこには一枚の厳重な観音開きの鉄の扉があった。
「……かなり厳重ですね」
入江がそう言うと、五味は頷く。
「ええ、勿論。この扉の向こうには、現状、日本史上最悪な人災者がいますので……」
そう言うと、五味は胸元のカードを扉の横のモニターに当てた。数秒後、扉のロックの解除音と扉がゆっくりと開く音が聞こえる。扉の向こうは薄暗く、少し先の様子を把握するのに手間取った。奥には、分厚い強化ガラスを隔てて、一人の老人が座布団に腰掛けていた。
「……お久しぶりですね。禰宜猛也さん」
入江がそう言うと、禰宜は顔をゆっくりと上げた。禰宜は骨に人の皮を付けたような風貌で、髪は地面に付くほど長く、今にも死にそうな様子だが、眼光は鋭かった。
「……なんじゃ、入江か」
禰宜はそう言うと、再び俯いた。
「今日は貴方に頼みたいことがあって会いに来ました。……と言ってもかなり前のことですが」
入江がそう言うと、禰宜は興味深そうに口を開いた。
「遂に可能なのか!?私、いや、Z殿の野望が!」
入江は頷く。その様子を見た禰宜は、酷く喜んだ様子で立ち上がった。
「私がこの日が来るのをどれほど待ち望んだことか!……この日のために私は力を温存してきた。漸くZ殿に使命を全うすることができる!」
禰宜は忙しなく辺りをうろつく。
「入江!私を早くここから出せ!」
「落ち着いてください。先ずは五味にここの制圧を任せます。良いかな?五味」
五味はそう言われると、静かに頷いた。
「ここは、死人が日常茶飯事に湧いて出る。私の恩寵と相性は良い」
五味が地面に触れると、金属製の床にヒビが入る。やがて、床から大量の屍が湧いて出てきた。
「“屍の行進”」
屍は数百体にも及び、出現した。異変に気づいた刑務所の職員は恩寵で応戦するが、如何せん相手は死人なので、攻撃しても歩みを止めなかった。
「先ずは、数で内部破壊を助長させる。次に私だ」
入江は天井に向かって、手を伸ばした。すると、“電波”の影響で監視カメラや扉を破壊した。すると、一斉に収容者たちが飛び出した。禰宜もゆっくり抜け出した。すると、そこには入江の“ワープ”によって現れたZと闇蜘蛛がいた。
「ああ、Z殿!お久しぶりです!」
禰宜はそう言うと、Zに向かって跪いた。
「ああ、俺も君に会えて嬉しいよ」
若々しい声が辺りに響いた。刑務所は依然として混乱状態だった。
「早速君に頼みたいことがあるんだ」
Zがそう言うと、禰宜を立たせた。
「分かっております。ですが、私にもお願いがあります。私は長年、恩寵と向き合ったことで、私の恩寵を他者に干渉させることが出来ました。ここに、生贄を呼んでいただければ、Z殿の願いを叶えることができます!」
禰宜は目を輝かせながら言った。その様子を見て、Zは手を叩いた。すると、宙から一人の職員が現れた。
「彼で十分かな?」
Zがそう言うと、禰宜頷き念仏を唱えながら、男の頭に触れた。
「“崇敬憑依”」
男の様子がおかしくなっていく。体つきが二倍、三倍となっていく。髪の毛はドレッドに変化し、鯉のような髭が生えてくる。すると、辺り一帯に地震が起き、刑務所の壁が崩壊した。
「やあ、久しいね、拳武」
Zがそう言うと、百目鬼は何が起きたのか分からず、辺りを見渡した。
「ここは、現世なのか?」
百目鬼がそう尋ねたので、Zは頷く。
「……何だ。閻魔と少しは楽しめると思ったんだがな。幼くなったが元気そうだな、Z」
百目鬼はZを見ると、嬉しそうに微笑んだ。
「俺との約束は覚えているかな?拳武」
Zがそう言うと、百目鬼は頷いた。
「んじゃあ、ひと暴れしてくるぜ」
百目鬼がそういうと、百目鬼は次元の狭間に消えていった。Zは百目鬼を見送ると、入江の方を見た。
「さ、入江。次の目的を達成しよう」
Zがそう言うと、入江は頷いた。すると、入江が“転送”を行った。数秒後、Zは大山杭刑務所だったものの入り口にいた。
「君が綾釣薄夫かな」
Zがそう言うと、綾釣がZを見た。
「君は?」
「俺はZ、『終わりを告げる者達』だ。君をスカウトしに来た。俺と一緒に世界を変えないか?」
綾釣は少し黙っている。やがて、綾釣は口を開いた。
「世界が変われば、俺がハーレムの王国は築けるのか?」
Zは頷く。
「分かった。君に着いていくよ」
綾釣はそう言うと、入江の“ワープ”によって姿を消した。次にZは重杉に声を掛けた。
「やあ、君が重杉力也君かな?」
Zがそう言うと、重杉はZを睨んだ。
「俺はZ、『終わりを告げる者達』だ。君をスカウトしに来た。俺と一緒に世界を変えないか?」
「……俺は俺より強い奴にしかつかない」
「……そっか」
Zは“麒麟”を放つ。あまりの衝撃に重杉の体は激しく震える。
「……悪かった。Z、俺はアンタの下につく」
「良かった」
Zは最後に禰宜の元へ歩んだ。
「禰宜、君にはある女性を降ろしてして欲しい」
「誰を降ろせば?」
「……君はもうこの世にいられなくなる」
「……“永劫憑依”ですか?」
Zは頷く。禰宜は考える間もなく、口を開いた。
「君の恩寵を複製すれば良いけど、君の技術力でないと降ろせないのだ」
「なるほど。以前話していた鎌倉の人間、いや、“妖怪”ですか。たしかに今、私が知る限りの恩寵の詳細だと八〇〇年が限度、ただし複製して技術力を上げるには、期限が切れてしまう。……分かりました。やります。所詮、余命幾ばくかの命、最期は貴方に捧げます」
「感謝する」
Zはそう言い残し、禰宜を“ワープ”で日本の山奥へ飛ばした。
全てが謎に包まれた神童、Z。
あらゆる恩寵を所持する若き政治家、入江與。
全てを破壊する亡者、百目鬼拳武。
秩序を糺す者、禰宜猛也。
死んだはずの大研究者、Dr.ゴースト。
素性が分からぬ闇に身を包む元自警団、闇蜘蛛。
神を見放した若き反逆者、サタン。
性別すらも謎の副看守長、五味朝陽。
連続女子高生強姦殺人事件犯人、綾釣薄夫。
恐怖の人肉嗜食者中学生、重杉力也。
百目鬼拳武を模した破壊者、ベルフェゴール。
鎌倉時代の極悪大妖怪、大嶽丸。
「百目鬼拳武の再来……。これはフルコースの前菜に過ぎない。もっと仲間を集めようか、皆」
Zは入江に指示して、この場から離れたのであった。




