38 神楽
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
「俺と夢が兄妹?」
炎司は語られた真実を中々飲み込めなかった。
「済まないね。炎司君。彼女との記憶は僕の独断で行ってしまった」
心田が謝る。
「……俺はずっと親がいないもんだと思ってました。でも、今はっきりしました。俺は何のためにこの炎を扱うのか。俺の目的は今も昔も変わってなかった。俺は……、國崎を止める。ただそれだけだ!」
炎司の言葉に大道寺は涙した。
「彼、逞しくなりましたね。本当に大輝君と瓜二つだ」
心田がそう言うと、大道寺は涙を拭い、國崎を見据えた。
「滑稽だなあ!本当に君たちは滑稽だ!良いか?人を信頼するとろくなことがないぞ!私はあの日から人を信用してない!」
「止めろ!敏正。もう止めよう。お前の恩寵では我々には勝てない」
大道寺は争いを避けようと必死であった。しかし、國崎は聞く耳を持たない。
「私はさっき言ったよな!?恩寵二つ持ちだと!……私の本来の恩寵は“修復”。堀田恵子の治癒とは異なるが、対象物の修復が可能である。そしてもう一つが……」
國崎は地面に触れた。すると、地面が音を立てて崩れる。三人は國崎から距離を取る。
「“分解”。対象物を分解する。シンプル且つ最強の恩寵だ!」
分解は伝播し、広がっていく。炎司が炎で“分解”を炎に移し、難を逃れる。
「すみません!僕の恩寵はここでは役に立てません!」
「いや、今まで道案内、ご苦労であった!炎司!」
大道寺は心田にお礼を言うと、上着を脱ぎ捨てた。そこには、高齢とは思えない引き締まった体が見えた。
「儂は白龍院のように器用じゃないからのお、常に体を引き締めておかなければならない。……炎司!久々の共闘と行こうか!」
大道寺は微笑み、構えた。
「はい!」
炎司も大道寺と同じように構えた。
「二対一かあ……。甘くないな」
國崎はそう言うと、再び地面に触れた。すると、地面は蛇のように蜷局を巻き始めた。
「敏正。まだ恩寵を?」
大道寺がそう言うと、國崎は首を横に振った。
「これはあくまで“修復”だよ」
“修復”で地面が大蛇のような巨大な物体へと変化した。
「“大蛇”」
巨大な物体は、大道寺を襲う。大道寺は早い足蹴で巨大な物体を砕いた。
(凄い!流石オヤジだ!)
炎司が感激していると、再び生成された巨大な物体が襲い掛かる。炎司も同じように足蹴で破壊する。
「炎司!まだ体の螺旋が活かせてないぞ!地面への反動も甘い!!」
「はい!」
國崎は再び8体の“大蛇”を出現させた。
「“八岐大蛇”」
「炎司。お前の修行の成果を見せてみろ」
大道寺がそう言うと、炎司は頷いた。炎司は意識を集中させる。
「“甕速日”」
以前の甕速日とは格段に進化し、速さ、攻撃力が上がった甕速日は一瞬で八岐大蛇を破壊した。
「悪くないが、まだまだじゃな。“神域”の使い方が完璧ではないが、強くなったな、炎司。その調子で頑張るのじゃ」
大道寺にそう言われ、炎司は嬉しそうに返事した。そのときだった。空中に黒い謎の液体が至る所に溢れ出た。その液体の中から大量のホワイトキラーが現れた。
「オヤジ!こいつら最高位だ!」
そこには少なくとも五体の最高位のホワイトキラーがいた。
入江とサタンの連携に成す術なく、二人は拘束されていた。
「そろそろ始めようか」
入江がそう言うと、“ワープ”でその場からいなくなってしまった。気づけば街中にWKが溢れていた。
「花、早くどうにかしないと……!」
「でも、海人に連絡しようにも奴らにインカム破壊されたから……」
街はWKによって火に包まれていた。そのときだった。拘束具が溶けた。そこには酸欠月香がいた。ここはビルの屋上なのだが、どうやってここに来たのだろうか。酸欠の横にはジョン・ジェスターが立っていた。
「どうしてここに?」
夢がそう言うと、辺りを見渡した。そこにはA組とB組のメンバーがWKと戦っていた。
「どういうこと?」
「詳しいことは真田先生に聞いてな」
ジョンがそう言うと、花の拘束を解き、酸欠と共に地上へ戻った。地上には真田先生がいた。
「真田先生!これは一体」
「貴方たちの助太刀に来ました。礼なら大道寺先生に言ってください」
「大道寺先生って『徒陰』の……?」
夢がそう言うと、真田は頷いた。
「今は貴方がすべきことをしてください。私たちは貴方がたを全力でサポートします。そちらの豪華絢爛な女性も……」
「あ、彼女は草木花ちゃんです」
「なるほど……。って、え、ええええ!?」
夢は今までに起きたことを話した。
「なるほど……。兎に角今は先生をお願いします。私はここで生徒たちと戦います」
夢は頷き、花と真田と別れた。
時刻は二十一時を回ろうとしていた。
心田の助力もあり、最高位のWKを二人は完封したのだった。
「衰えていないな、政宗」
「そう言うお前はどうなんだ」
大道寺は國崎を煽る。國崎は地面に手を触れる。
「同じ手は喰らわない!」
炎司は炎を地面に沿うように放った。國崎は手を地面から離した。
「私も“修復”で何とか生き永らえているが、本来ならばもう死ぬ年齢だ。少しは労わってくれ」
國崎は隙を突いて地面に触れた。“分解”は小型発射機の方へ向かった。“分解”が触れたとき、警報が鳴った。
「何をした、敏正」
「無理やり起動させた。後十分ほどでこれが発射し、中にいる笑里の恩寵が暴発し、全世界に影響を与える。止めるにはこれを押せばいい」
國崎は懐から小型の装置を取り出した。
「炎司!直ぐに敏正を止めるぞ!」
大道寺は走り出す。炎司の炎が大道寺を包む。炎司の炎は善者には効かない。良い目くらましになるのだ。大道寺の拳が國崎の腕を破壊した。國崎は瞬時に“修復”で回復し、反撃する。炎司の炎を纏った大道寺の拳は國崎を追い詰めた。國崎のみぞおちに大道寺の拳がめり込んだ。國崎は悶絶し倒れ込んだ。
タイミングよく、海人が現れる。
「大黒柱!憾咲さんが恩寵で容器が完成しま……」
そのときだった。時刻は丁度二十一時。海人が取り出した容器が溶けてしまう。
“新論理”最初の理、この容器はヴィウランに食われない。
二十一時に夢が気絶したことで、“新論理”が解除されたのだった。
床にヴィウランが零れ落ちた。國崎は起き上がると口を開いた。
「どうやら天運は私にあるようだな」
國崎は大道寺に触れていた。
「もうお前と戦えないのが残念だよ」
大道寺は穏やかな表情である。大道寺は炎司を見た。
「お前より先に逝くことを赦してくれ。後は頼んだぞ」
大道寺は國崎の“分解”によって崩壊した。
「オヤジ!」
炎司が大道寺だったものに駆け寄る。心田は泣き崩れる。
「俺はお前を赦さない」
炎司の炎が一層強くなる。
ビルから出たホームレスの名無氏は、闇夜に輝く月を見ていた。。
「やっぱり、“この世界線”でも敵わないのか……。だけど、この世界にはまだ希望はある。死なないでくれよ、神楽炎司君……」
名無氏はそう言うと、懐から杖を取り出し、歩み始めた。
(今まで百八の世界線でこの戦いを見てきたけど、今回は今までで一番ひどいかも知れないな)
名無氏はそんなことを思いながら、高層ビルの隙間を歩いていく。WKの騒動もあり、外を出歩いている人や車は少ない。そのとき、一体のWKが名無氏を見つけた。WKはすぐさま名無氏に襲い掛かる。それに気づいた名無氏は、杖をWKの方へ向けた。すると、WKは動きを止めた。というよりも、その空間自体が停止していた。羽ばたいている鳥も、風でなびいている木々も、歩んでいる人も動いていなかった。
「済まないね。久しく能力を使うのを忘れていたよ。……まあ、聞こえてないか」
名無氏は何事もなかったかのように再び歩み始めた。




