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34 風岩、闇をも穿つ

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 準備を整えた『徒陰』は、国会議事堂を見据えるために、ビルの屋上に上がった。時刻は二十時ぴったり。月が神々しく輝いている。

 「なあ、オヤジ。わざわざこんな場所に昇らなくても良くないか?」

 鳶鷹はそう言うと、寒そうな素振りを見せる。吐息は白い。

 「良いじゃないか。一度こういう感じ、やってみたかったんじゃよ」

 「え!?本当に意味なかったの?」

 海人がそう言うと、大道寺は静かに頷いた。

 「なんだ。だったら、夢の元に戻りますよ?」

 海人がそう言うと、大道寺は海人を制止した。

 「彼らが来る」

 大道寺がそう言うと、数秒後、大量の動物の群れがやって来た。戦闘には『獣士団』の獅子奮迅がいた。

 「時間ぴったり……とはいかなかったが、凄い数じゃ」

 動物の群れの戦闘にライオがいた。

 「お久しぶりです。皆さん。あのときの恩を返すときが来ましたね」

 ライオがそう言って、雄叫びを上げると、動物たちも雄叫びを上げた。

 「心強い助っ人じゃ。息子たちよ。行くぞ。世界を救おう」

 鳶鷹の背中に生えている翼が海人を除くメンバーを包み込んだ。そのまま屋上から落ちていく。ここにいる全員が決意に満ちた顔でたった一つの光を見据えていた。


『徒陰』の柱と大黒柱が飛んでいると、国会議事堂の前に入江がいた。その後ろに洗脳された機動隊が大量に並んでいる。

 「皆様!極道の方々と組んだんですか!我々に都合が悪すぎる展開ですよ!」

 入江がそう叫ぶと、黒い液体が空中に何個も現れる。その液体から何百体ものWKが現れた。炎司たちは構える。そのとき、WKに向かって、大量の鳩が襲い掛かる。他の動物も機動隊の足止めをしている。

 「ホワイトキラーは、動物たち(われわれ)が引き受けます!」

 獅子奮迅がそう言うと、口を大きく開けて叫ぶ。すると、動物たちが興奮したように暴れ出す。

 「我々は正面突破するぞ!」

 大道寺がそう言うと、鳶鷹は更にスピードを上げた。

 「逃がすか!」

 入江はそう言うと、腕をゴムのように伸ばした。しかし、その腕は途中で勢いを緩めた。

 「お前の相手はこの俺様だ!」

 狼狽がそう言うと、入江の腕を引っ張った。入江は地面に叩きつけられた。『徒陰』は動物たちのお陰で国会議事堂に入ることに成功した。鳶鷹から降りた一行は辺りを見渡す。中にも多くの機動隊と警官、義正と横田がいた。

 「國崎義正は俺に任せろ!」

 鳶鷹はそう言うと、義正に飛び掛かる。

 「一哉は俺がやる!」

 悟空は如意棒を使って、横田を吹き飛ばす。

 「風柱、岩柱。任せたぞ」

 大道寺は口を閉じると、意識を研ぎ澄ませた。すると、機動隊や警官たちは泡を吹き倒れていった。“麒麟”であった。

 「老いぼれじゃから、この程度の助力しかできん。気を付けるのじゃよ」

 大道寺がそう言うと、二人は頷いた。


 国会議事堂の更に奥へ進むと、そこには、郡谷凍斗がいた。

 「大黒さん。ここは私が行くよ」

 獣柱がそう言うと、腕を前に構えた。

 「大丈夫か?獣柱」

 大道寺がそう言うと、獣柱は静かに頷いた。

 「私も火柱のお陰で、強くなったんだからね!」

 大道寺と炎司が獣柱の様子を見て、少し安心したか、獣柱を見て再び頷き、その場を後にした。

 「見ない顔だな……。雑魚か」

 「私のこと舐めてたら、痛い目見るよ!」


 『徒陰』が国会議事堂に突入してから、数分後、風柱と岩柱はお互いの敵と戦っている。

 鳶鷹は、義正の素早い攻撃を避ける。

 「僕の“二倍”の攻撃を避けるなんて、君、速いね」

 鳶鷹は翼をはばたかせながら、飛び回っている。

 「君、躰道を使うんだってね。本気の君を見るなら僕も本気を出さなくちゃね!」

 義正はそう言うと、懐から謎の液体の入った注射器を取り出した。

 (あれって……、『ディアブロ』か!?情報通り、政府御用達ってことかよ!)

 鳶鷹は急降下して、注射器を狙った。しかし、間に合わず、注射器は義正の首に刺さった。次の瞬間、義正は苦しみ始め、辺り一面に衝撃が走る。義正の全身が震え始め、雄叫びを上げる。その勢いに鳶鷹は吹き飛ばされ、窓を突き破った鳶鷹は国会議事堂の外へ投げ出された。外ではまだ動物たちが暴れている。空中で態勢を整えようとした鳶鷹だったが、次の瞬間には、義正に足首を掴まれていた。

 「は、速いな!」

 「僕の恩寵はあらゆるものに二倍を付与する。でも、今の僕は更に二倍を付与し、四倍なのだよ!」

 義正は鳶鷹を振り回し、地面に叩きつけた。叩きつけられた鳶鷹の周りには、砂埃が舞う。鳶鷹は“玄武”でダメージを軽減させている。

 「君のような何も考えていない陽キャが僕は嫌いなんだよ!」

 義正は壁に鳶鷹を投げつけた。何とか壁に着地した鳶鷹は叫んだ。

 「俺は明るいだけだ!あんな奴らと一緒にすんな!」

 鳶鷹は飛び跳ねると、足蹴りをお見舞いした。

 「“(くろ)孔雀(くじゃく)”!」

 “玄武”を纏った鳶鷹の卍蹴りは、義正の首元にヒットした。骨が折れる音が響く。骨が折れたのは、鳶鷹の方だった。

 「君たちだけが神域を使えると思うなよ。」

 義正の首元は鋼鉄の様だった。義正は片手で鳶鷹の足を掴むと、近くにあった数メートルある巨大な瓦礫を片手で持ち上げ、鳶鷹に叩きつけた。鳶鷹は瓦礫の下敷きになる。義正は国会議事堂の前にある小さな木を“二倍”で巨大化させた。その大木を何度も鳶鷹に叩きつけた。鳶鷹のペストマスクが壊れ散る音が響く。野犬が義正に噛みついている。義正はその犬の首を飛ばそうとする。しかしその犬は数枚の羽によって遠くへ飛んでいた。気づけば鳶鷹も瓦礫の山から抜け出している。

 「俺の恩寵は“操羽(そうう)”だ。飛べるだけだと思ったか?……ごめんだけど、お前のこと舐めてたわ。これからお前に対して全力だ」

 鳶鷹は血塗れになりながら言った。鳶鷹の羽が自立していき、全身を支えるように羽が纏わりついた。

 「“鳥人の衝撃(バードストライク)”」

 鳶鷹は構える。

 「よぉーし、僕も本気だ」

 そのとき、義正の左手が吹き飛んだ。義正の左手から血が噴き出る。義正はあまりの苦痛に尻餅をついた。

 「お前を生かすことばかり考えていた。はは。そうだよな。これは戦争だもんな。死亡者零なんて考ええるの可笑しいよな」

 鳶鷹は瞬く間に、義正の背後に立ち、今度は右腕を吹き飛ばした。衝撃で義正は吹き飛んだ。

 「クソが!」

 義正は巨大な岩を蹴り飛ばしたが、鳶鷹の海老蹴りにより、粉砕された。義正はバランスを崩し、その場に倒れる。出血がひどい。意識が混濁している。義正が視線を上げると眼前に鳶鷹が立っていた。義正は金切り声を上げる。そのときだった。義正に足を掴まれたのだった。見ると、義正の腕が再生していた。

 「お前!入江に……」

 義正は叫ぶと、鳶鷹を投げ飛ばした。鳶鷹は空中で姿勢を保つ。

 (あの恩寵は三上さんのときのWKにもあった“再生”に違いない……。にしても面倒な恩寵を……。それに“鳥人の衝撃”は後五分しか保たないぞ)

 「ただ……、簡単に死なないのが分かれば十分!」

 鳶鷹は再び義正の間合いに入り込む。しかし、義正の反応速度が増している。見切られている。義正の拳が鳶鷹の脇腹にヒットする。鳶鷹は吹き飛ぶ。鳶鷹は血反吐を吐くと、辺りを見渡した。義正の姿がない。いや。振り返ったときには遅かった。瓦礫の中から巨大な両腕に掴まれる。そのまま、国会議事堂の壁に投げ飛ばされる。鳶鷹は軌道を変え、近くの木の枝に止まる。

 「お前、強いな。でもこのままだと埒が明かない。次で決めるぞ」

 鳶鷹がそう言うと、右足に羽を集中させた。


 悟空と横田はお互いを睨み合っていた。

 「こうしてサシで闘うのは、久し振りだな。一哉」

 悟空はそう言うと、着けていた猿のお面を外した。横田は表情を一瞬変えたが、直ぐに真顔になった。

 「やっぱり洗脳されたままなんだな。お前ほどの漢が簡単に洗脳されてしまうなんてな」

 横田は何も言い返さず、両手を硬化させた。

 「……“(いち)”」


 横田一哉の恩寵“硬化”はその名の通り、体を硬化させることができる。シンプルゆえに汎用性の高い恩寵である。最大硬度は“参”までである。


 横田はボクシングの構えをとる。そして、悟空に向かって突進する。悟空は両腕で横田の攻撃を受けた。悟空は強靭な足腰で寸分も動かなかった。悟空はそのまま横田を持ち上げる。横田は必死に暴れるが、抜け出すことはできない。悟空は背中を反らし、地面に叩きつけた。これはまさにプロレスのジャーマンスープレックスだった。轟音と共に、砂埃が吹き上がった。悟空は器用に起き上がり、煙を払った。そこには、逆さまになった横田がいたが、自力で抜け出していた。

 「…… “()”……“(さん)”!」

 横田は再びボクシングの構えを取った。しかし、先程までの構えとは違っている。悟空が構えた瞬間、横田が視界から消えた。

 (速い!炎司と同じ“朱雀”の応用!)

 そう思った瞬間に、悟空は視界が大きく揺らいだ。横田が悟空の顎に足蹴りを決めていた。

 (速いし、重い!“玄武”も上澄みだな)

 悟空はそう思い、横田と距離を置こうと、宙に浮いた。しかし、横田の足が悟空の首を捉えた。悟空は地面に思い切り叩きつけられる。当たりに骨が折れる音が響く。悟空が起き上がると、そこには余裕そうな横田が立っていた。瞳は変わらず赤い。

 「洗脳のお陰で歯止めが利かなくなったか?」

 悟空の言葉に耳を貸さず、横田は拳を振り上げた。その瞬間、悟空の素早い拳が横田を襲う。横田は吐血し跪く。内臓が揺れている。

 悟空の真骨頂、“玄武”の内部浸透技術である。元来“玄武”は自身の外面を覆う鎧のような解釈なのだが、悟空はそれを応用させ、相手の内部を揺らす攻撃に転換することができる。

 横田は未だに起き上がれない。いつしか両腕の“硬化”が解けている。

 「もう止めよう。お前と闘ったときは、世上さんや夢が止めてくれたけど、これ以上は危険だ」

 悟空がそう言ったときだった。

 「もう戻れない」

 横田は首に『ディアブロ』を射した。突如、藻掻き始める。悟空は心配で駆け寄る。否、悟空は吹き飛ばされる。そこには既に起き上がった横田が立っている。

 「……“()”」

 横田がそう呟くと、途轍もない連打が悟空を襲う。悟空は“玄武”で防御するが、受けきれていない。

 「“(さる)(いし)”!」

 悟空は体を岩石のように硬化させた。“玄武”と相まって横田の連打を防ぎ切った。しかし、横田が拳を構えると、意識を集中させた。

 「“最大硬度・怒髪天(どはつてん)”」

 横田の一撃で、猿石が崩壊した。猿石から白い煙が放出する。石の中から巨大な毛の生えた足が出てくる。

 「“幻獣化(オリジン)”」

 猿のような顔に毛深い四肢、悟空は中国神話に出てくる孫悟空のようだった。

 悟空は如意棒で横田を吹き飛ばした。横田は直ぐに反撃した。しかし、悟空は避ける。巨大な尻尾が横田を襲う。横田は尻尾を掴むと、悟空を吹き飛ばした。悟空は空中で姿勢を整え、地面に軽やかに着地した。

 「“(かみ)分身(ぶんしん)”」

 悟空は自身の髪の毛を毟り、息を吹きかけた。すると、その毛は少し小ぶりな悟空を作り出した。その分身は一斉に雷や吹雪を口から噴出させた。横田は“白虎”で避ける。避けた瞬間、突如として現れた如意棒に腹部を突かれた。そのまま如意棒は伸びていき、国会議事堂の外へ飛ばした。悟空はその棒を小さくし、同じく外へ飛び出した。

 「もう終わりにしよう」

 悟空がそう言うと、両腕に如意棒がバネのように巻き付いた。

 「“斉天(せいてん)大聖(だいせい)”!」

 横田も“伍”で対抗する。両者一歩も譲らない殴り合い。ガトリングのような拳の応戦、横田の拳を跳ね返すかのように、悟空の拳が音速の如く繰り出される。先に綻びたのは、横田だった。横田の最高硬度である伍は、制限時間付きの力であったため、負けることは明白でだった。

 横田の腕が崩れ落ちる。腕はひび割れ、割れた箇所から血が溢れている。

 「……やっぱりお前の方が格上だったかあ」

 横田はそう言い残し、倒れた。洗脳は解けてるようだった。それを見た悟空は、如意棒を静かに戻した。

 「立場が違えば、俺とお前は仲良く隣で笑い合ってたかもな……」

 悟空はそう言い残し、横田の元を後にした。


 その僅か数秒後のことだった。

 「……やはり君には少し荷が重すぎたね」

 そこに現れたのは、傷だらけの入江だった。入江は横田を見下ろしている。

 「でも、君はまだ舞える。もう少し頑張ってもらわないとね。“Z様”の為にもね」

 そう言うと、入江は不気味に笑ったのだった。傷だらけだった横田の顔も治っていた。

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