32 陰に潜む徒党
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
十九歳の大道寺政宗は、日本で有数の大学に通っていた。当時は恩寵の発現者と無恩寵者で対立し、混沌の世の中であった。大道寺は研究室に入る。そこには、國崎敏正が机に向かって何かをやっていた。
「お早う。敏正」
大道寺がそう言うと、國崎は大道寺を見て、優しく微笑んだ。
「お早う。まさかもう朝なのか?」
國崎はそう言うと、研究室の時計を見た。
「大変大変。一時限目の講義に遅れてしまう。それでは、また後ほど」
國崎はそう言って、ボサボサの頭のまま出て行ってしまった。大道寺はそんな彼を見て面白可笑しくて笑った。ふと、机を見ると、何かの論文を見つけた。そこには、横文字で何かが書かれていた。
「ゔぃうらん……?」
思わず大道寺はその論文を見た。彼の論文は拙い文章であったが、読めば世紀の大発見であることは明白だった。しかし、その文献内には、新たな原子の発見とは別に、彼の計画についても述べられていた。
そこには、こう書かれていた。
『この原子のお陰で、私の計画が実現しようとしている。この原子があれば、核爆弾をも超える爆弾を作ることができるだろう。だが、それには、莫大な金と権力が必要となるだろう。私はこの論文を胸に留め、この国の総理大臣となり、何倍もの報復を行いたいと思う』
大道寺はこの論文を見て、彼が科学者になった理由が分かった気がした。大道寺はこれを誰に相談すれば良いか分からず、大道寺は高校時代の友人である白龍院に相談した。
「お前のことだから、嘘ではないと思うが、流石にスケールが大きすぎないか?」
白龍院がそう言うと、大道寺は疲れた様子で溜め息をついた。
「でも、こんなことが実現したら、私は止めなければならない。だが、私一人では到底どうすることもできない」
「だったら、お前の“力”を使えばいいじゃないか」
白龍院はそう言うと、大道寺の目を指差した。
「お前の“千里眼”は、遥か先の未来を視ることができるんじゃないのか?」
「まあ……、そうだが。視たんだが、どれだけ見ても“炎を扱う少年”、“翼を生やした少年”、“莫大な知識を持つ少年”、“猿のような少年”、“幾つかの獣を操る少女”と私が戦う未来までしか視ることが出来なんだ」
白龍院はそれを聞くと、何故だか安堵した様子だった。
「それだけ目標が明確なら良いじゃないか。それって何年後か分かるのか?」
白龍院がそう聞くと、大道寺は首を横に振った。
「明確には分からないが、私が老人の見た目だったからかなり先だろうな」
白龍院は再び安堵の様子だった。
「ならば時間はたっぷりあるってことか。前々から思っていたが、やはり一緒に教員になろう!高校時代の約束もあるが、俺はお前と共になりたいぞ!」
「俺はこの“力”を解明する。それだけはあのときから譲れんぞ」
白龍院は溜め息をついて言った。
「やはり“あのときの約束”は違えぬか。しかし、俺は将来、学校を作りたいんだ。今は混沌期で学校もままならない状況が続いているが、もしもどんな人もこの“力”が認められ、許容されるなら、俺は自由な学校を作りたいんだ」
大道寺は彼の顔を見て、口を馬鹿みたいに開けていた。
「……お前らしいな」
大道寺がそう言うと、白龍院はふざけた様子で怒った。
これが白龍院の作る『夫丈高校』のきっかけとなる出来事であった。
「お前の論文は読んだ」
大道寺がそう言うと、國崎は感想を求めた。
「まだ何とも言えん。ただ復讐はよせ」
大道寺がそう言うと、國崎は持っていた書類を床に叩きつけた。
「君までそう言うのか!」
「待て待て。確かに復讐は良くないが、内容は凄いと思うぞ。新しい元素の発見なんて偉業だぞ」
「まだ仮説だがな」
「しかし、それより論文の脇に走り書きされてた“異災混合深化”とは何だ……?」
「ああ、それはな……」
このときは、まだ國崎の心は揺らいでいた。
四十歳手前で、大道寺は研究が大成し、一段落すると白龍院の元で教員となっていた。敏正は国会議員になっていた。そして順当に地位を確立していき、防衛大臣にまで昇りつめていた。そして、数十年後のことだった。それは一九八九年に起きた“出雲百目鬼災害”をきっかけ、いや、それがきっかけの一因に過ぎないかもしれない。敏正は変わってしまった。
それは一九九六年、敏正が内閣総理大臣になった年の出来事だった。
大道寺は敏正に呼び出され、国会議事堂へ訪問した。
「久しいな、政宗」
ひどくやつれ、年老いた敏正がいたが、あのときの眼は変わらなかった。
「お互い歳をとったな、敏正」
大道寺がそう言うと、手招きされ、来賓の椅子に座った。
「……教員やっているんだってな。驚いたよ」
「正直私自身も驚いてるよ。……話があって読んだんだろ?どうしたんだ?」
「私が大学時代にお前に言ったこと憶えているか?」
大道寺の背筋が凍る感覚を覚える。
「……ああ。忘れたことはないよ」
「なら、話が早い。政宗、私とあのときの計画を遂行しないか?」
敏正がそう言うと、引き出しから一枚の論文を取り出した。
「私が政治活動とは別に行ってきた研究だ。これによれば、ヴィウランの存在を証明できることが分かった」
「待て。まだあの幻想を追いかけていたのか?」
敏正は机を勢い良く叩いた。
「幻想とは心外だな!私はこのために生きてきたんだ!全てはこのために繋がるのだよ。私が意味もなく防衛大臣を就任していたと思うなよ?」
「まさか……」
大道寺がそう言うと、敏正は微笑んでいた。
「ああ、パイプは繋がったよ。後は今の地位で人材を集める。となると、君のような天才が邪魔になる。私とてかつての友人を手に掛けるような真似はしたくない」
「だからと言って私が折れると思っているのか?」
敏正は首を横に振る。
「君の我の強さは誰よりも理解している。今しているのは勧誘兼忠告だ。……これ以上私に関わるなら、明日はないと思え」
「……忠告感謝する。だが、私の“力”を見誤っては困る。必ずお前を止めてみせる」
これをきっかけに二人に大きな亀裂が生じるのだった。




