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-Re:ika-警視庁 恩寵刑事部 特殊捜査課 通称 「零課」  作者: 灯火 由夢葉
第一幕 第二章 夫丈高校二学期
23/74

22 夫丈の賢者たち

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 数日後。

 炎司は、学校に徒歩で向かっていた。前方を茂と夢が腕を組んで歩いている。

(む。先を越された……のか?)

普段は鳶鷹と一緒に登校している炎司だが、今日は早く起きたため、少し早めに登校していた。登校中、道端で困っている様子の男がいた。炎司は思わず声をかけた。

 「どうかしたんですか?」

 男は炎司の方を見た。男の髪はぼさぼさで髭が無造作に生えており、目は輝きを失っており虚ろであった。

 「すいません、夫丈高校ってどこか分かりますか?以前目印にして辛うじて生きてきたコンビニが潰れてて……」

 男は気だるそうな声で炎司に尋ねた。

 「この大通りをまっすぐ行けば、校門が見えると思いますよ」

 炎司は大通りの先を指さしながら言った。

 「ありがとうね。……俺も卒業生だったんだけどね」

 そう言って、男は逆方向へ進んでいく。炎司はすかさず呼び止めた。

 「俺も夫丈高校の生徒なんです。一緒に行きますか?」

 「何だ……。じゃあ、お言葉に甘えて」

 男はそう言って、炎司と歩んでいった。

 「昔はこんなにも方向音痴じゃなかったんだけどね……。ははは」

 男の乾いた笑い声が虚しく響いた。

 「何か用事があるのですか?」

 炎司は苦し紛れに出した質問を投げ抱えた。

 「ああ、恩師だった先生に頼まれてね。頼まれごとをされてしまったんだ。ところで今度君にお礼をしたいな。名前は……。いや、名乗るのが先か。俺の名前は、田中(たなか)(しずく)。ただの人間さ」

 (田中雫?どっかで聞いたことのあるような……)

 炎司はそう思いながら、会話を続けた。

 「俺の名前は、大道寺炎司です」

 「はは、良い名前だ。きっと強いんだろうな」

 田中がそう言うと、炎司は謙遜した。

 「いやいやそんな。俺よりも田中さんの方が十分強そうに見えますけど……」

 「いや、正確には強かったが正しいと思うよ」

 炎司は田中の言葉を理解するよりも先に夫丈高校に着いてしまった。

 「ありがとうね。また会うと思うけど。大道寺炎司君」

 彼の常に寂しげな表情と、失われた片目が彼の哀愁を漂わせていた。


 仮免試験を終え、一息ついた一行は教室で談笑をしていた。チャイムが鳴る数秒前には、席に着いた一行は、真田先生の登壇を待つ。

 「お早うございます」

 真田は、普段通りスーツを着込み、教卓に向かって歩いていた。真田の後ろには、三人組がついてきていた。

 「仮免も無事に取得できたので、これから始まるインターンに向けて、先輩方よりご教授を受けてもらいたいと思います」

 雨水は思わず立ち上がった。

 「おいおい、貯ちゃんが興奮してるぞ。凄いやつらだぞ、絶対!!」

 鳶鷹の発言に、一同がツッコもうとする。

 「鳶鷹、知らないのか!?彼ら」

 普段馬鹿な熱熱が、真面目に話している。

 「彼らは、『夫丈の賢者たち』と呼ばれていた伝説の三人組だぞ!?」

 「知っていたのですか。なら、詳しい紹介はいらないでしょう。自己紹介だけでも……」

 一人の西洋風の男が前に出た。

 「ハロー!僕の名前は、(そう)(えん)・ダニエル・(りょう)だよ。日本でも珍しい海外の血が流れている者さ!」

 次にオールバックの厳つい男が前に出た。

 「俺は炎丈鉄郎(えんじょうてつろう)だ。そしてこいつが……」

 「こんにちは。俺は田中雫です」

 炎司は彼の登場に、内心驚いていた。

 「どうして彼らが!?だって、彼らは少し前まで活動を休止していて、そもそも数年かかる治療もまだ完治していない噂だし、そもそも超人気自警団(ヴィジランテ)の人たちがこんな辺鄙な高校に……。それに田中さんはかなり珍しい“無恩寵者”ながら、日本で活躍していた……」

 「雨水さん、それくらいで」

 真田が熱弁を仕掛けている雨水を止めた。

 「私がいくら説明したところで、経験は彼らの方が圧倒的に上です。ですから呼びました。代表して、雫。説明をお願いします」

 そう言われると、田中は前に出た。

 「あ、あぁ。初めまして、田中です。えーっと……、これから、説明したいんですけど、ああー、待って、話が纏まらないな。んー、取り敢えず戦いますか?」

 一同は、彼の発言に首を傾げたのだった。


 体育館では、ジャージ姿の生徒が立っていた。田中は軽いストレッチをしている。

 「じゃあ、軽く手合わせを……。気絶はしちゃうかもしれないけど、そこらへんは、まあ、そのときのノリで……」

 「良いんですか?こっちは十人ですよ?」

 「……」

 田中は、無言を貫いた。先に動いたのは1-Bだった。遠距離持ちの雨水、草木、炎司、波場が攻撃を仕掛ける。田中は難無く避けていく。

 「行くよ!夢ちゅん!!」

 裏表が幾つもの鏡を宙に放った。夢は拳銃を鏡に向かって撃った。拳銃は鏡を通して光の屈折のように反発していた。田中は表情を変えずに弾丸を、塩を掴むかのように掴んだ。

 「ほほう……、良くできたマグナム弾ですね。火薬の量は抑えられて殺傷性は低いですが、弾先が衝撃を吸収しながら、反発性のある素材を採用ですか。良い弾丸ですね」

 「弾丸を掴んだの?火薬が少なくて弾速が遅くなってるって言っても、高速で動く鉄の塊を素手で掴むなんてどうかしているわよ!」

 「実況も併用、ありがとうございます」

 夢がそう言っている隙に、田中は夢に間合いを詰めていた。

 「先手で、遠距離攻撃は良い判断だが、甘いね」

 田中は、みぞおちに拳をめり込ませた。夢は思わず吹き飛んだ。その衝撃のまま田中は裏表を気絶させた。

 「気を付けてください。彼は私の知る中で、一番強い男ですよ」

 真田は生徒に向かって言った。

 「やっぱりあの異名は本当だったんだな」

 茂は独り言のように言った。

 「異名?」

 鳶鷹は、茂の発言を反芻した。

 「何だ、鳶鷹。何も知らないんだな!彼の異名は、“夫丈高校史上最強の男”だ」

 「何だその中二病が付けた名前は!」

 「ふぎゃん!」

 二人が会話をしている内に、雨水がやられていた。

 「自分の行動が、相手によって阻止されたとき、次の一手をどう考えるのかをいかに早く判断できるのか鍛える。つまり、“白虎”を鍛えれば、未来すらも見えます。俺だって本来は、素手で戦うような男じゃないんです」

 突然、波場が飛び出してきた。田中は防御をとった。波場の一撃は重く田中にのしかかる。吹き飛ばされながらも、綺麗に着地した。

 「お前が殺したのか?」

 波場が、俯きながら言い放った。田中は何のことなのか分からず、返事に困っていた。

 「お前が……、スカイ=ウォーカーを殺した奴か!!」

 田中は思わず目を見開いた。その瞬間、途轍もない殺意が周囲を襲った。その殺意に、波場は尻餅をついて後退っていく。波場の目の前に田中は立ち塞がり、拳を振り上げる。田中が振り下げた瞬間、どこからか手を叩く音が聞こえた。そのとき、田中と波場の位置が入れ替わっていた。

 「はい!もうおしまい!!これくらいで彼の凄さは分かったでしょ?」

 操園がそう言うと、炎丈が田中の肩を叩いて、落ち着かせていた。


 1-Bは教室に戻り、三人の話を聞いた。

 「さっきは少し荒げてしまってすまないね。俺が言いたかったのは、こんな恩寵を持たない俺でも、十分に強くなるということです」

 「まあ、近年は人災者が増えているので、無理にインターンすることはないと思うがな」

 炎丈は、真田に確認しながら言った。

 「結局、僕たちは必要なさそうだったね!」

 操園がそう言い残し、インターンの説明が終わったのだった。真田が三人を送り届けた後、生徒に向かって

 「インターンを検討する方は、改めて装備の見直しを行ってみてください。彼らも心待ちにしていると思います」

 そう言って、真田は去っていった。


 放課後、炎司は茂と鳶鷹に誘われ、工業科に向かった。

 「前も来たけど、治安悪化してないか……?」

 炎司がそう言うと、鳶鷹と茂が頷いた。

 「まあ、先生の恩寵も関わってるんだろうな。それよりも知ってるか?工業科の同級生に“冷酷な鬼才”がいるらしいぜ」

 「冷酷な鬼才?」

 鳶鷹の発言に炎司が反芻する。

 「そうなんだ。なんでも女の子だが、男には気がないらしい。最近は可愛くなったとか?名前はたしか……、たすく?って言うらしいぜ」

 炎司たちは工房に着くと、土木先生がいた。

 「ん?何の用だ?」

 「装備の確認を……」

 すると、土木は立ち上がった。

 「お前ら、公務鎧は初めてか?……いや、赤毛のお前は利用者か……。だったら、そこにいる……」

 そのとき、工房に爆音が響き渡る。

 「数手!作るのは良いが、もう少し落ち着いてやれや!」

 土木が叫ぶと、奥から煙と共に数手が現れた。

 「ああ!“冷酷な鬼才”!」

 鳶鷹がそう言うと、数手は大きく手を振った。つなぎの隙間から大きな胸が揺れている。今にも零れ落ちそうだった。

 「え?え!?」

 鳶鷹は訳も分からず手を大きく上げた。数手は鳶鷹を無視し、炎司の元へ駆け寄った。

 「ひ、久しぶりだな!……げ、元気か!?」

 数手は手を後ろに組み、もじもじしている。その様子に炎司以外が驚いている。

 (数手が!女子(おなご)してる!?)

 (ええ!?あの可愛い子ちゃんが炎司と知り合い!?てか、恥ずッ!)

 「ああ、何とかな。それより公務鎧の相談に来たんだ」

 炎司がそう言うと、数手は炎司の腕に抱き着いた。

 「え、炎司なら来ると思ってたぞ!丁度私も暇だったんだ!」

 「いや、全然作業してたじゃん……」

 炎司がそう言うと、数手は激しく首を横に振った。

 「い、いや、丁度休憩なんだ!さあ!」

 数手は炎司を半ば強引に引き入れた。その様子を見ていた土木は顎を地面に落としそうだった。

 「あ、あの……、俺たちの公務鎧は……?」

 茂がそう言うと、土木は顎を直して口を開いた。

 「あ、アア。俺ノ生徒ガ面倒見ル……」

 土木は機械のように動き、二人を案内した。各々が工房で対応をしてもらい、各自解散となった。


 数日後、炎司はインターンの希望届を出しに職員室に向かおうとしていた。

 「ま、待って炎司!」

 炎司が声のした方に振り向くと、数手がいた。

 「どうしたんだ?」

 「ちょっと寄って来てくれないか?前に言ってた公務鎧の改良が終ったんだ」

 炎司はそう言われ、工房へ向かう約束をした。

 「真田先生」

 炎司が職員室の扉から呼び掛けると、真田がやって来た。

 「……インターン希望ですか……」

 真田がそう言うと、炎司から希望届を受け取った。

 「ほほう。“煉獄(れんごく)大炎天隊(だいえんてんたい)”ですか。君の実力なら大丈夫でしょう。頑張りましょう」

 真田は炎司を見送ると、希望届を見直した。

 「太陽……。大道寺君を頼みましたよ」

 真田はそう囁いていた。


用事を終えて炎司が工房に入ると、数手は公務鎧を見せた。

 「もう改良できたのか?」

 「うん!炎司の何だっけ?“みかん”みたいな技に耐えれるように硬度を上げたうえに、軽量化もしといたよ!やっぱり時代はカーボンだねえ」

 「ありがとう」

 炎司がそう言うと、数手の顔がこれでもかと赤くなった。

 「ま、またいつでも来てくれ!も、勿論、公務鎧以外でも大丈夫だからな!」

 数手がそう言うと、炎司は手を振って応えた。

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