20 仮免取得試験 終幕
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
「おいおい、マジか!!あのナンバーナインの魁さんが高校生に負けた……?」
救助しながら、見ていたとある生徒がそう呟いた。
「これは本当にあるのではないか?トップレベルの公務員完封が……!」
悟空は鬼瓦の爪を避け続けていた。
「さっきの威勢はどうした!」
鬼瓦は、そう叫びながら攻撃を続けた。体躯が先程の数倍大きくなっていた。
「そりゃあ“完封する”って言いましたけど、良いんですか?本気出したら、無事じゃ済まされませんよ?」
悟空は不敵に微笑微笑みながら言った。
「お前のそんな貧弱な恩寵でか?國咲悟空!恩寵“怪力”!そんな恩寵で私に敵うのか?」
鬼瓦は、更にスピードを上げた。悟空は両腕に“玄武”を纏い、守りの態勢をとった。鬼瓦は爪に“玄武”を纏い、何度も斬りつける。しかし、悟空の“玄武”の方が、硬度が上だった。しかし、悟空は吹き飛んだ。吹き飛んだ悟空は、地面に落ちていた長めの木の棒を拾った。
「なんだ?それで武器のつもりか?」
悟空は木の棒に“玄武”を纏わせた。
「お前も、武器に“神域”を与えられているのか。素晴らしいな」
本来、“玄武”は自身の体にしか影響できない。しかし、練度を上げることで武器や自分以外に纏わせることも可能である。
悟空は棒を振り回す。更に華麗に舞っていく。
「お前、異国の武術を得ているのか?」
「いや、只の独学です。お気になさらず」
悟空は舞いながら、棒を地面に叩きつけていく。すると更に、スピードや攻撃が上がっている感覚に襲われた。
(どういうことだ?ただ舞っているだけなはずなのに、強くなっている気がする?)
悟空が棒を鬼瓦に振り下ろすと、地面にヒビが入るほどの威力になり、思わず鬼瓦は跪く。そして首で棒を回し、遠心力で振り回した棒を鬼瓦に当てて、吹き飛ばした。
(なんだ?遠心力で威力は増したとしても、この重量のある俺を吹き飛ばすのは不可能だろ?しかも先程よりもかなり威力が増しているぞ?)
「緩急ってわかりますか?」
悟空は唐突に話を始めた。
「例えば、緊張に強張ったバッターがバットを振っても打てないですが、柔軟なバッターなら良く飛ばします。これはバッターだけとは限りません。武術においても同じであり、しなやかであれば少しの威力でも大きな威力になりえます。俺の舞は、筋肉をしなやかにする踊りです。踊れば踊るほど、俺は強くなる」
悟空は舞い続ける。やがて彼の周りには風が起き始め、鬼瓦は思わず後退っていく。
「お前……、本当にただの高校生か?どんな生活送ったら、そんな技生まれるんだよ!」
「んー?弱冠五歳で、死闘してたら会得するんじゃないですか?」
悟空は棒を地面に刺し、鬼瓦に足蹴を喰らわした。しかし、鬼瓦は片手で受け止めていた。
「良い。良いぞお前。凄く良い。一介の警官ならここでくたばっていただろう。だが、俺はナンバーナイン!簡単に勝てると思うなよ!?」
「……“國崎の懐刀”……」
悟空はそう囁いた。鬼瓦はその瞬間、一気に青ざめていく。
「何だと……?」
「國咲悟空と聞いて、ピンとこないとは……。お前、本当に警官か?」
「まさか本物なのか……!?あの零課の化け物の……?」
「はあ……。お前。明日の朝日拝めると思うなよ?」
鬼瓦は思わず尻餅をついた。そのまま鬼瓦は後退っていく。その姿はまるで、狼に狩られている羊の様だった。
「……皮肉めいてるな」
悟空はそう言うと、悟空は棒を回転させながら投げつけた。棒は鬼瓦の急所に当たり、気絶した。
「……これじゃどっちが狼か分からないな」
そう言い残し、悟空は皆の元へ戻った。
茂と鳶鷹は、耳鼻の大声に悩まされていた。
「おい!アイツは俺らにとって天敵じゃないのか?」
鳶鷹が耳を塞ぎながら茂に向かって叫んでいた。
「たしかに、彼の攻撃を防ぐ術がない!」
茂が耳鼻を見ていると、終始口を大きく開いて、仁王立ちしていた。
「これじゃあ、俺らだけ失格になってしまうよ!!」
鳶鷹は羽をいくつか飛ばして、攻撃する。しかし、声に相殺され地面に落ちてしまう。
「あ?もう終わりか?」
耳鼻は指を曲げ挑発している。
「良いか?俺に一つ提案がある。彼の攻撃を無効化する方法が……」
茂がそう言うと、鳶鷹が口を開いた。
「分かった。茂、お前に賭ける。どうすれば良い?」
茂は耳鼻を指さした。
「彼の恩寵は空気があるから、通用するんだ。だから、彼の周りの空気を無くす。鳶鷹、お前ならできるよな?」
鳶鷹は頷いた。耳鼻は二人を見て首を傾げた。
(おいおい、こんなもんかよ。データだとトップクラスの強さだが、この調子だと俺が勝っちまうぞ)
そのとき、いくつもの羽が耳鼻を囲い回転した。大きな筒状になった羽たちは、徐々に勢いを増していった。耳鼻はそのとき異変を感じた。
(待て?空気が薄くなっていっている。まさか、空気を無くしているのか?)
そのとき、ドーム状に蔓が密閉し、囲んだ。耳鼻の周りに暗闇が訪れた。
(何も見えない。でもそれは逆も然り。だが、“白虎”で認識は可能だ)
そのとき、耳鼻の脇腹に鳶鷹の足蹴りが襲った。耳鼻が“白虎”を行ったにも関わらず、鳶鷹が速すぎて追いつけなかった。
(何だこいつ!?空気が無い上に暗闇なのに、何でこんなに動けるんだ!?……だが)
耳鼻は上に向かって口を大きく開いた。
「“地獄・死啖呵”!」
衝撃波が上空に何層もの層で蔓を襲った。蔓はズタズタに引き裂かれ、鳶鷹が吹き飛んだ。
「クソ!……こうなったら……!茂!プランBだ!」
鳶鷹がそう言うと、茂は頷き、蔓で鳶鷹を掴んだ。
数分前、
「もし、真空暗闇の攻撃が効かないときは、プランBだ」
鳶鷹がそう言うと、茂は首を傾げた。
「何をすればいいんだ?」
「茂が俺を投げ飛ばしてくれ。後は俺が何とかする」
鳶鷹の淡白な説明に茂は不安だったが、何も言わなかった。
茂は蔓を使って遠心力で鳶鷹を耳鼻に投げつけた。鳶鷹は翼を“玄武”で硬化させ、体の前でドリルのようにした。
(翼を全部硬化させたから、自由は効かないけど……、“朱雀”で何とかさせる!併用はキツいけど俺、頑張れ!)
「“合技 鳥の大惨事”」
鳶鷹が突っ込むと、耳鼻は大声で対応したが、凄まじい威力に耳鼻は吹き飛んだ。鳶鷹は逆さまに壁に激突した。茂は駆け寄っていく。鳶鷹は逆さまなまま親指を挙げた。
「佃煮、彼の恩寵を知っているか?」
炎司がそう言うと、佃煮は口を開いた。
「ああ、“無痛”だろ。それで自分自身を改造して、“装兵”として名を馳せているな」
二人が会話をしていると、天掛が口を開いた。
「君が、佃煮君と大道寺君だね。“影魔”に“妖炎”か。とても興味深い恩寵だ。私の実験台になって貰おうか!」
そのとき、天掛の肩から大量のミサイルが飛び出した。
「大道寺、俺の後ろに隠れろ!」
佃煮がそう言うと、炎司は佃煮の背後に隠れた。大量のミサイルが二人目掛けて、発射された。佃煮が地面に手を当てると、大きな黒い塊が現れた。そして、その塊がミサイルを喰いつくした。その死角から、飛び出した炎司は、一気に天掛に間合いを詰めた。しかし、天掛は炎司と目が合った。そして、にっこりとほほ笑んだ。天掛が口を開けると、口が眩く輝いた。その瞬間、炎司が宙に舞った。炎司は受け身をとったが、かなりの高さから落ちたため、体が痛い。
「大道寺君。君の速さは素晴らしいが、決定打に欠けるね。まさか、手加減しているのかい?」
天掛の発現に炎司は無言を貫いた。
「沈黙か……。まあ、今にわかるさ」
天掛の胸が機械的に開いた。そこから、大砲が姿を見せる。
「試作型音速弾道ミサイル、火叢……。着弾と同時に半径100メートルに炎が及ぶ焼夷弾……。自衛隊の最新兵器だ」
天掛の胸の砲台が不気味に光る。
「大道寺、これは流石にヤバい。一旦引いて体勢を立て直す……」
炎司は佃煮の助言を制止させた。
「いや、受ける。彼の発言がブラフだとしても、何らかの影響がこの会場に及ぶのが分かる。俺らが勝手に発破かけて行っているこの行為に、他人を巻き込むわけにはいかない。それに、俺の炎なら何とかできる。しかし、被害は想像できない。もし俺に賭けるなら、俺の後ろや周りを守ってくれ」
「大道寺、分かったよ。やはりお前の凄いよ」
「……?何のことだ」
佃煮は、それ以降何も言わず炎司の後ろに向かった。
「おい、起きろ、起きろって!」
とある男が波場を起こそうとする。目の前には、魁が仁王立ちで睨んでいた。
「餓鬼が……、プロを舐めてるからこうなるんだ」
波場は、血を吐きながら微かに声を出した。
「俺は、舐めてない……。笑う奴は強いんだ……!」
魁は鼻で笑いながら、長い鼻が大きく膨らんだ。
「もう終わりだよ、お前もお前の公務員人生も」
「俺が負けたと思うか?」
鬼瓦は、悟空の脚を掴み、持ち上げた。
「残念だったなあ。一時は警官だからビビっちまったが、今思えば今は人災者役だもんなァ?」
「クソが……!流石、トップレベルの警官ですね……」
鬼瓦は、口を大きく開けて笑った。
「俺らには、受験生を殺さないために、動きを制限するためのギプスを着用しているんだ。だから、必然的に本気を出せないんだがな、“事故”で外れて本気が出せるんだよなァ」
「なるほど……」
「まあ、殺されないだけマシだな……?ん?」
鬼瓦は天掛を見た。そこには慌てふためく天掛がいた。彼は何かを叫んでいた。
「逃げろぉぉぉ!!!」
しかし、その声が届く前に、鼓膜が破れる程の爆音が会場に響いた。会場の人間全員が地に伏せた。熱風が会場を襲う。ただ、会場を襲ったのは熱風だけだった。熱風の爆心地には一人、立ちすくむ炎司がいた。彼の両手は真っ黒に焦げていた。彼の肩は上下に動くほど息を荒げている。
数分前。
(向こうは、私の火叢をブラフだと思っているが、火叢自体は嘘ではない。発射するかしないかがブラフだ。こんなものをこんな場所で撃ったら停職処分じゃすまないからな。これで牽制しながら近寄れば……)
そう言って、徐々に炎司に向かって歩み寄っていく。しかし、そのときだった。天掛の体から警告音が発生した。火叢が発射されることを告げる警告音は会場に鳴り響いていた。勿論、天掛は何も操作していない。明らかに不具合だった。天掛は緊急停止を実行しようとしたが、時すでに遅し、焼夷弾は轟音をたて発射されたのだった。
「大道寺、これは本当にヤバい!!避けるぞ!!」
「いや、これは避けたところで無傷で済む話じゃないぞ!!!」
そう言うと、炎司は両手を構えた。
「……分かった。俺はどうすれば良い?」
「……俺とミサイルをその影で包み込めばいい!!そしたら、できるだけ俺から離れろ!」
佃煮は静かに頷き、自分の使命に集中しただった。
炎司は目が覚めると、視線の先に白い天井が見えた。起き上がると、そこには鳶鷹、茂、悟空、激昂、佃煮が寝ていた。どうやら仮免試験の施設に併設された病院らしい。
「目が覚めましたか、炎司君。調子はどう?」
炎司は自分の体を見た。両腕に包帯が何重にも巻かれているが、痛みはない。
「私が治療したもの。大丈夫に決まっているわ」
そこには、夫丈高校の堀田恵子が立っていた。
彼女の恩寵は、“治癒”であり、ほぼ無条件で治癒を行うことができる。
「あなたは、ほぼ全身骨折に加えて、両腕の火傷、他の生徒に比べてかなり重症だったのよ。天掛さんだから少しは手加減されていると思ったけども、珍しいわね」
堀田がそう言うと、丁度入ってきた制服を着た天掛が深々と頭を下げた。
「申し訳ない!普段はあんなヘマしないんだが……!いや、良い訳を言う前に、君には感謝している!」
「感謝……?どういう意味ですか」
炎司がそう言うと、天掛は話を続けた。
「火叢は、試作段階でそもそもあまり安定はしていなかったんだ。つまり本当は撃つつもりはなかった……。だが、何かの不具合で発射されてしまったんだ。想定範囲では、あの試験会場諸共吹き飛ばしてしまうほどの威力を有していた。まさか高校生一人に防がれるとは思っていなかったが……。兎に角!あそこで君が命を張らなければ、あそこにいた人たちは大火傷を負っていた。改めて礼を言おう……。ありがとう……!」
天掛は再び深く頭を下げた。
「良いんですよ……。あ待って。俺たち結果どうなりました?」
炎司がそう聞いたのとほぼ同時に真田が現れた。
「勿論、不合格です」
真田がそう言うと、炎司は納得したように俯いた。
「ですが……」
真田がそう言うと、天掛を見た。
「ええ……。本来、あの実技試験は、救助における三大要素を確かめていた。“迅速に”、“安全に”、“不安にさせない”が救助における大切なものです。それを阻害するために私たちは人災者役として赴きました。今回は特例でありますが……」
天掛がそう言うと、耳鼻、魁、鬼瓦が現れた。
「耳鼻大の名に於いて、夫丈高校1-B組草木茂、同じく大道寺鳶鷹……」
「鬼瓦勤の名に於いて、夫丈高校1-A組國咲悟空……」
「魁太の名に於いて、夫丈高校1-B組波場激昂……」
「天掛翔の名に於いて、夫丈高校1-B組大道寺炎司並びに、帝国大都学院一年壱組佃煮漆喰……。上記六名を、我々の名に於いて仮免試験を合格とする!」
天掛たちがそう言うと、深々と頭を下げた後、病室を後にした。
後日、炎司たちが退院すると、クラス全員が待っていた。夢の話では、全員が合格していたそうだ。
炎司は佃煮と握手を交わした。
「じゃあな。大道寺!なんかまた直ぐに再会しそうだ!」
佃煮がそう言うと、炎司は微笑んだ。
「じゃあ、またな」
佃煮は炎司たちに手を振って帝国大都学院の教員の元へ向かっていった。
「大道寺君」
真田が炎司たちを呼び止めると、分厚い書類を各自渡された。
「本来は合格の際に渡されてたものです。おめでとうございます。これで貴方たちも立派な公務員の卵です」
「ありがとうございます」
炎司たちがそう言うと、炎司たちは封筒を開けた。中には仮免の免許証が入っていた。炎司は早速その免許証の写真を撮った。次に電話を掛けた。
「あー、もしもし。俺、炎司だよ。写真見てくれた?ああ、無事受かりました。後でゆっくり話すよ。これから海人の受診だろ?……うん。じゃあまた」
炎司はそう言うと、携帯電話を切った。その様子を見ていた夢に茂は話しかけた。
「伝えたいことがある。次の日の学校の放課後屋上に来てくれないか?」
茂はそれだけ言って、去っていった。




